『教室の悪魔 見えない「いじめ」を解決するために』を読みました.一昨日に生協の購買で見かけて購入し,一気に読み通しました.
児童相談所の相談員intake workerの経験から,小中学校での「いじめ」の典型例*1が多数挙げられています.いじめる側・いじめられる側の心理もありありと描かれています.
保護者へ,学校へ,様々な提言をしています.それらは初めに読んだとき,「え,そうなのか?」と思ったのですが,そのそれぞれにしっかりした理由があり,なるほどと意識を変えるようになりました.いくつか拾っておきますと:
- いじめの解決に取り組むのと,責任を追及するのを同時に行うのは無理です.責任追及を始めると,ご両親と学校とは敵対関係になります.そうなれば,いじめの解決について建設的に話し合うことはできなくなると思いませんか? (p.29)
- 外傷を受けた子どもは,口を閉ざそうと決めている間は,何を聞いても話さないが,話してもよい,話そうと思った瞬間から,ダムが決壊したかのように話し始める.(略) そして話し尽くすと再び口を閉ざす.忘れようという時期に入るのだ. (p.33)
- いじめを「客観的に調査する」ことはナンセンスである.ひとりでいじめを受けてきた被害者の目に映る世界と,みんなで思いつくままにいじめをしてきた加害者の世界が同じであるはずがない.(略) 結局,いじめの本質は被害者にしかわからない.被害にあった子どもの言葉は,客観的事実と異なっていても,それこそがいじめの実態であり,彼にとっては真実なのである.だから,彼らのいちばんの味方であるべき親は,その言葉をまるごと受け止め,真実として扱わなくてはならない.(pp.107-108)
- だからこそ,子どもひとりひとりが具体的に何をやったかを聞いてはならない.それをしてしまえば,子どもはその言い訳に終始し,やらなかったと否定するか,やったことを認めて謝れば許されたと思ってしまうからである.(p.121)
主な読者対象は,小中学生の親御さんになると思います.学校には参考になるかもしれないし,ならないかもしれません.難しい漢字や表現が少ないので,中学生なら読んでも,得られるところがあるでしょうね*2.