わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

2007年5月18日

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「学会」というところで,研究者が何をしているかを,ちょっと言っておきましょう.
たいてい*1の「学会」というのは,そこでお互いの研究者が,各自の研究成果を持ち寄ります.
研究成果を「予稿」といった形の書類で読んでもらうとともに,口頭で「発表」して聞いてもらいます.発表後すぐに,読んで聞いていた人が質問をすることになり,そこに「討論」,すなわち意見を戦わせる場ができます.討論の結果は,発表者はもちろん,参加者全体にとっての「今後の課題」となり,このような「原稿提出と口頭発表・質疑」というプロセスを通じて,学会に新たな知見を提供することになります.
「討論」はしますが,その場で,どの研究成果が正しいとか間違っているとか,どれを採択するとかいったことはしません.他の研究者らは予稿の内容を持ち帰って検討し,その記載内容*2を踏まえて,新たな文章…新たなその人なりの研究成果を書くということになります.
健康用品の紹介で,学会名が添えられていることがありますが,たいていそれは,その学会で発表したというだけです.発表は無審査で自由に行えることが多いです.だからThat is why,「学会で認められた」という健康製品は,眉に唾をつけて見ておくのがいいですよ.

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前回と今回で,順番に発表してもらいましたが,これにはいろいろな意図があります.
一つめは,「輪講」という,知識の共有する一つのやり方を知ってもらうことです.当番で発表すれば,それぞれは1件のことを深く調査して話し,他の人のをしっかり聞くことで,結局,参加者の数だけの新しい知識が得られることになるわけです.
次は,文章を批判的に読む態度ですね.誤記…は今回読んでもらったものの中にはなかったですが,論理的に不自然なことや,タイトルと内容とのミスマッチなどもあります.まあ,あら捜しする必要はないですが,その逆に,書かれているのを漫然と受け止めるのもいけません.一つ一つの用語,あるいはストーリー展開が,近いところでは自分の発表で,それを離れて自分のこれからの立ち振る舞いに,どんな影響を及ぼすかを考えてみるよう心がけましょう.例えば「冠婚葬祭」の意味を尋ねたのは,そういうところにあるのです.
それから,プレゼンテーションの準備作業をしてもらいました.これからの多くの「プレゼンテーション」は,PowerPointなどのパソコンソフトで作ることになるでしょう.ですが,最初からそういったソフトウェアに頼るのは,よくないと私は考えています.まずは紙とペンを用意して,何を載せたい,書(描)きたいかを,フリーハンドで書いてみることです.そうすると書きすぎとか書き足りないとかが見えてきます.そのことを,発表者それぞれが確認するために,あらかじめノートに書いておいてねと指示しましたし,ゼミの参加者みなでチェックするために,ホワイトボードに書いてもらった*3わけです.

*1:研究発表ではなく,学会運営の委員会ということもあります.

*2:口頭での発表や討論をベースにすることは,滅多にありません.「書いてあるもの」のほうは,後々まで変わることなく残ります.ではなぜ口頭で発表や質疑をするのかというと,書かれている内容を理解しやすくするため,と思うといいでしょう.

*3:「ホワイトボードとペン」というツールの理解,という意味合いもあります.書くのを止めたら,ペンにフタをする習慣をつけましょう!