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基礎から積み上げる学び,基礎に降りてくる学び

学力問題,教師への支援,学校選択制教育委員会のあり方について,文献調査や当事者(教員,教育委員会職員)へのヒアリングを通じて,現状の問題点を浮かび上がらせるとともに,対案を提示しています.政策として採用される可能性はほとんどないだろうなあと思いながらも,関東の複数の大学の学生が執筆し(教育学の修士学生もオブザーバとして参加しています),「大学生のレポート集」を超えた完成度の本書を,興味深く読みました.
…という歯の浮く論評はさておき,私が関心を持ったのは,ここです:

教育心理学者の市川伸一氏は,学びには「基礎から積み上げる学び」と「基礎に降りてくる学び」があることを指摘しています.伝統的な学習・教育法は「基礎から積み上げる学び」にあたります.学問の体系に沿って,基礎から系統的に小学校・中学校・高校と積み上げて学んでいくものです.(略)
一方,「基礎に降りていく学び」とは,学習者に「こういうことがやりたい」という目的があって,その過程で必要性を持って基礎を学ぶという学習のことです.(略)
「新しい学力観」のもとでは子供たちの関心・意欲をスタートにして「基礎に降りていく学び」が奨励されました.市川氏は「基礎から積み上げる学び」はこれからも重要であることを確認した上で,「基礎に降りていく学び」の有効性と実践例を熱心に模索し広めようとしています.
(学生による教育再生会議 (平凡社新書), pp.53-54)

対象も期間も異なりますが,学科の1年後期向けのCのプログラミング授業も,2種類の学び方を模索しています.2つの科目があり,私の担当はどちらかというと「基礎から積み上げる学び」です.Cプログラミング指導に「体系」があるわけではありませんが,自分なりに論理的整合性logical consistencyをとって授業をしています.一例を挙げると,配列,ポインタ,関数の順に説明しています*1.関数の引数に配列を渡す方法を説明するには,ポインタが不可欠だからです.
「基礎から積み上げる学び」は,退屈になりがちなので,応用例を織り交ぜています.もう一つの科目のほうが,「基礎に降りてくる学び」に近いように思えます.
学科学生のプログラミングスキルを上げるために,私はCの入門書や脱入門書をあれこれ読んで,いい方策がないかと考え,授業で試してきました.しかしこれからは,教育学の書籍にも目を通し,自分の分野に活用していきたいですね.

追記1

学力に関して,『学力を育てる (岩波新書 新赤版 (978))』が引用されていました.岩波新書ということで,昨日書店で1分で見つけ,購入しました.これから読んでいきます.

追記2

市川伸一氏…というと,fjの議論を本にされたという記憶があり,調べてみると,『ネットワークのソフィストたち-「数学は語りうるか」を語る電子討論』でした.研究室を探せば,見つかるかもしれません.

*1:といっても,main関数やprintf関数は初回から使っています.中盤の授業で,掘り下げてそれぞれの意味を説明しています.