わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

学校・家庭・地域,計算機・授業・経験

文旦に話を戻すと,苗木は,三本の竹で支えるということをしてやるそうだ.竹を同じ長さに切り,それらをバランスよく組み,その間を苗木が通るようにするのである.もし三本の竹のバランスが崩れていれば,苗木はまっすぐに伸びず,根づきも悪くなる.文旦の苗木がしっかりとした根を持つまでには,通常一,二年かかるようである.
氏は,「子どもの成長を考えると,「家庭」と「学校」と「地域」とが,まさに三本の竹となるべきだ」と主張した.その話を聞いたとき,私は思わずひざを打った.このような卓抜な比喩があるだろうか.
(学力を育てる (岩波新書 新赤版 (978)), p.49)

さて,今日のカテゴリは「本」でも「教育」でもなく,「情報教育」一本にしました.
というのも,上のエピソードを,情報教育に当てはめられるか,とりわけ当学科の学生に,プログラミング能力を向上させたいときに,何に注意すればいいかを,考えてみたくなったからです.
家庭・学校・地域の3要素を,次のように置き換えてみました.

  • 家庭は,「計算機」に対応します.
    • 画面に向き合う時間を十分に持つsecuring sufficient time for facing the screenことで,計算機を使っての問題発見・解決の能力が向上するものです.
    • しかし,計算機だけが与えられた状態では,遊びに走ってしまうおそれもあります.教育において家庭が重要といっても,家庭に丸投げではまずいものですね.
  • 学校は,「授業」に対応します.
    • 講義だけでなく,実験・演習・ゼミも含みます.
    • あらゆる「学んだこと」を計算機上で目に見える形にできたら,学んだことについても,計算機の利用についても,能力が一歩向上したということです.
  • 地域は,「経験」に対応すると考えます.
    • 授業以外で学ぶこと,と言い換えることもできます.典型的には,学外経験です.ただし,大学での人間関係も,この中に含めていいと思います.計算機を使うものでなくてもかまいません.
    • 「学ぶこと」は手段であって目的ではありません.教育を通じて能力を身につけ,社会人になって仕事をしたり,家庭を持ったり*1,地域などに貢献する人になったりしていきます.「プログラミング能力を身につけること」も,手段であって目的ではないはずです.となると,この能力をどのように,日常生活や,大学を離れてからの段階で,活用できるのかをガイドするのが,情報教育に携わる教員の責務になるでしょう.

*1:「ワシは学がないから,子供はしっかり勉強してほしい」という親心は,「プログラマの仕事を監視する上司(プログラミング能力は部下ほどないかもしれない)」に対応しそうです.