わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

テレビゲームの周辺にあるものを気づかせてくれる2冊(2)

昨日の続きです.

簡単に「ゲームニクスは,次の4つの大きな原則で構成されている」と思っていただければいいわけです.
第一原則 直感的なユーザー・インターフェイス (=使いやすさの追求)
第二原則 マニュアルなしでルールを理解してもらう (=何をすればいいのか迷わない仕組み)
第三原則 はまる演出と段階的な学習効果 (=熱中させる工夫)
第四原則 ゲームの外部化 (=現実とリンクさせて,リアルに感じさせる)
(ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則 (幻冬舎新書), p.52)

なるほどです.著者がいろいろなところで発表し,洗練させていった四つの原則なのでしょう.

ドラクエI」は,中世ヨーロッパ風のファンタジー世界を題材にしており,プレイヤーは様々な呪文を使うことができます.
この時,プレイヤーが覚えやすいように,呪文の名前が体系づけられています.弱い回復呪文は「ホイミ」,中くらいの回復呪文は「べホイミ」,強力な回復呪文は「ベホマ」という具合です.
(前掲書,pp.60-61)

重箱の隅ですがalthough it is nit-pickingドラクエIではベホマは使えません.

ゲーム展開においても,優れた配慮がなされています.
(略)
さらに冒険を開始すると,すぐにフィールド上で最終目的地である「竜王の城」が表示されるのです.
しかし,実際には竜王の城とは海峡で阻まれ,世界をぐるっと一周しなければたどり着くことができません.
このように,ゲームを始めるとすぐにゴールが明確にされるのです.
(略)
実は,この「中目標」がうまくできているのです.「大目標と小目標」は「○○をしろ」という具合に,一方的に提供される情報です.ところが「中目標」に関しては,プレイヤーが自分で設定するように仕組むのです.「次はこれをしよう」と自発的に考えてもらうのがミソです.これによって,何をしたらいいか迷うことなく,いかにもすべて自分で立てた目標に向かって進んでいるかのような感覚を持ってもらうのです.
(前掲書,pp.61-62)

大目標・中目標・小目標の配置は,授業にも使えそうです.
感激しながら読み進めていると,pp.156-157で「理想の授業は,典型的なRPGのストーリー展開?」として取り上げられていますね.
ところで,さあ? 松下は全開発社員に買って読ませるべき。ゲームデザイン本のタッチジェネレーション 『ニンテンドーDSが売れる理由』も興味深いです.こちらの本のamazonページを見たら,2冊が同時期に発売されたのですね.

続きの続き(2007年8月7日追記)

最近では,トロイの木馬といえばコンピュータウイルスの名前として覚えている方も多いかもしれませんが,ここでは,《ある機械を普及させておき,ある程度インフラとして浸透したところで異なるサービスを展開して,当初とはまったく異なる価値を生み出すというビジネス戦略》のことを「トロイの木馬」と呼んでいます.
特にゲーム機は,成功すれば,国内だけでも1000万台以上の普及台数が見込めるため,しばしば「トロイの木馬」戦略の格好のネタになったのです.
(前掲書,p.102)

トロイの木馬」は,「コンピュータウィルス」や「ワーム」と同列の“脅威”だと思いますが.
Googleで検索して,上位を見る限り,上の意味での「トロイの木馬」は見当たらないですね….
あと,サブマリン特許を連想しました.

つまりコントローラーのデザインはゲームの基本デザインを決めてしまうのです.
そのため同じコントローラーでゲームをデザインしていくと,次第にゲームの内容が似通ってきてしまい,ユーザーに飽きられる可能性が高くなります.
これを解決する方法は3つあります.
第1にコントローラーのボタンを増やすこと.
第2にゲーム機の処理速度を向上させて,より派手な演出や,複雑なシステムを盛り込むこと.
第3にまったく新しいコントローラーをデザインすることです.
このうちソニー・コンピュータエンタテインメントが選択したのは「1」と「2」でした.そして任天堂が選択したのは「3」だったのです.
もっといえば,SCEは「テクノロジーを最優先」として,それを「次世代機」としたのに対し,任天堂は「新しい操作感」を提示し,それを「次世代機」としたのです.
(前掲書,pp.112-113)

ソニー任天堂の戦略の比較として,そしてゲームニクスを論じるにあたって,ここが一番大切なところ,ですね.

「ブルー・オーシャン戦略」とは,(略)2004年に提唱された理論です.
これは,同業他社の競争とは無縁の「ブルー・オーシャン」という市場を創出し,ユーザーに高い付加価値を持つ製品やサービスを低コストで提供して,最大利潤を実現する戦略のことです.逆に同業他社との激しい競争にさらされる市場が「レッド・オーシャン」です.
自分で新しい市場を創出するのですから,その市場を独占できるのは当然です.先行者メリットも充分に受けられるでしょう.もちろん同業他社の参入で徐々に優位性は失われていきますが,その時は新たなブルー・オーシャンを創出する時期だというわけです.
(前掲書,p.188)

マーケティング用語らしい.
なのですがもちろん,研究者として「ホットな分野に行くのではなく,だれも手をつけていないところを選ぶ」という戦略はあります.