はじめに,今回のエントリは「いわゆるゆとり教育を受けてきた大学生になじめない」という意図ではないことを強調しておきます.それと,ゆとり世代とは何か,ゆとり世代以外に時系列的にどんな世代があるかについては,ゆとり世代 - Wikipediaがよくまとまっています.
先日,学内にて,現在の大学2年生からがゆとり世代で,アレができないだの,以前の学生なら当然知っていたことが分かっていないだのというぼやきを耳にしました.
このぼやきを,裏づけのある正当な主張にするには,統計的なアプローチかなあと思い,自分の授業の過去問を調査してみました.
残念ながら,自分の科目では,ゆとり世代の前と後とで違いを知ることができる情報を残していないことが分かりました.以下,「ゆとり」から脱線します.
昨年度の小テストから,正解率の低い問題をふたつ,見つけることができたのでした.
Xは,宣言文を実行するたびにオブジェクトが生成され,ブロックを終えると破棄される.Xに入るものは何か.
- static変数
- auto変数
- グローバル変数
- ローカル変数
int型が32ビットならば,とり得る最大値はYである.Yに入るものは,以下のいずれか.
前者は,4択というのと,明らかに紛らわしい選択肢があったのとで,正答率は20%ほど.後者は,正答率14%でした.
それぞれ解説を加えておきます.一つ目は,auto変数とstatic変数の違いを理解し,かつ「ローカルなstatic変数を作れること」を知っていれば,ローカル変数は間違いと分かります.二つ目は,単にintと書けばsigned intすなわち符号有りの整数型になるのがポイントです.あとは,2の補数に基づいて*1,負の数は個,0を表現するのは1個あり,32ビットでとり得る個数であるから引けば,答えが出てきます.
正答率については,出題日によってさまざまで,2択で悪いときは70%くらい,よければ90%以上.3択以上になれば下がります.
これらの問題は,授業の開始時に実施し,ノートを参照していいことにしています.また,3分で3問解くという時間の制約もあります.
昨年度後期から,小テストの多肢選択問題で正答率を求めてきました.それより前から,期末試験の大問で取り入れていて,初年度のものから見直してみました.ざっと見て,
- 単一の知識を問うものは,正答率が高い.
- 複数の知識を組み合わせて解くものは,低い.
- 複数の授業の知識を組み合わせて解くとなると,もっと低い.*2
と言えそうです.小テストと期末試験を同じに見ていいかという疑義はありますが,ともあれ,この傾向は,実施年度に変化がありませんでした.
それと,問題文は毎年変えているので*3,私の文章力や知識の変化も,正答率に影響していそうです.
「ゆとり世代」と言いますが,まず見直さないといけないのは,教育する側の態度です.学力低下を確認するだけの手法と人数は適切か,学力低下を念頭に置いて授業や成績評価にどう組み入れるか,といったことへの見通しのないまま,「分数のできない大学生」とぼやいても,空疎なものです.