わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

大学生活で学んでほしいこと・追加

大学生活で学んでほしいこと - わさっきを書いたその日に,書き忘れに気づきました.「自他の区別」と「不確実性」です.

主観と客観(追加)

  • 自分は自分の「主観」を持ち,他の人は他の人の「主観」を持ちます.ということでまずは,自他の区別です.しかし「それぞれ違う」で終わってしまうと,コミュニケーションができません.何らかの議論に先立って,みな正しいと見なせることを「前提」といい,議論を通じて共有できたものを「コンセンサス」といいます*1.前提が不明確なときは,もっとも合理的に思える前提を相手や議論の場に示して,同意を得てから本題の主張をするといいでしょう.

不確実性

「リスク」は,不確実性の関連語ですが,類義語ではありません.「リスク」は「不確実性」に内包される,と思えばいいでしょう.リスク管理も興味深いのですが,これについてアドバイスできるものはないので,このとおり,用語を出すだけとします.

  • まずは,セールストークに騙されないようにしましょう.売り込みを図る営業の人だけでなく,企業のトップの人も,目を輝かせてバラ色の未来を語ります,「へえ,そうなのか」と,文字通りに受け取ってはいけません.それを買って使うときや,提案したことを実現する際の途中段階には,当初説明していなかったことが出てきて,そのために立ち行かなくなることがしばしばです.情報の受け手として,バラ色の未来に至るまでに何が必要なのか,そしてそれは達成できるものなのか,あるいはなぜ相手はそれを言ってくれないのかを,話者のいないところで考えるようにしましょう.セールスについて付け加えると,考える暇なく署名や捺印をさせようとするものがあったら,購入や契約をする理由を検討せず,即座に断るべきです*2
  • それでは,研究において,順を追って説明すれば相手に伝わるかというと,そうでもありません.まずは細かいところを捨てて全体像を説明し,相手が「本当にそれでいいのか?」を考え始めたときに,実現に当たって解決しないといけないことを挙げ,具体的な解決方法を言うという方法が,効果的です.
  • 不確実性を教養教育の中で探ると,まず,ハイゼンベルクの不確定性原理があります.対象の位置と運動量をともに誤差なく測定することができないのです.不確定性原理をどこかの科目で学ばなかったとしても,確率統計なら必修科目ですね.これらには共通点があって,概念としては数式なしで説明できるけれど,適切な文字を導入して数式で表現し,活用することができます.もし確率統計を数学や数値処理としてのみ学んだなら,平均・分散から始まって,その中で出てきた概念を数式なしで説明できるように練習してみましょう.
  • ではほんの少し数学を使って,全体と部分の関係を説明してみましょう.全体の作業が,いくつかの詳細化した作業からなるとき,全体の作業が当初予定通りに達成できる可能性(確率)は,詳細化した作業が達成できる確率の積になります.確率が1になることは経験上ないので,全体作業の成功確率は,各個別作業の成功確率のいずれよりも低いことになります.そこで,個別作業のうち,成功確率の低いところを早めに見つけて,たとえばそこだけ別の方法を使って成功確率を高めるか,より人的時間的コストをかけたりして成功までの時間を短縮するとかいった行動をとるのが合理的となります.なお,全体を確率で語らないほうがいいかというと決してそうでもなく,戦略として,全体作業が達成できたときのインパクトを十分に大きく,一方その成功確率を適度に小さく*3見せることは,関係者に,その作業の「やりがい」を提示することにつながります.

*1:コンセンサスは,結論となるだけでなく,次の議論の前提になることもあります.

*2:断ることのできない環境に追いやられないよう,流されない確固たる自分,そして注意深い振る舞いというのも欠かせません.

*3:「過度に小さく」すると,敬遠されてしまうかも.