わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

結果を検証する能力

電子情報通信学会総合大会の総合受付の部屋のボードに,JABEEの2008年度改訂の骨子が掲示されていました.
おそらく一番大きなのは,JABEEの認証期間が1年増えて6年になり,中間審査も3年目になったことでしょう.と言っても,2008年度以降に(新規に)審査を受けるものに限られますが.
個人的に驚いたのは,デザイン能力への追加です.その場で書き取りましたが,Webでも読めます.2008年度適用版でリンクされている『「認定基準」の解説』のPDFファイル,p.5です.

実際のデザインにおいては,構想力/課題設定力/種々の学問,技術の総合応用能力/創造力/公衆の健康・安全,文化,経済,環境,倫理等の観点から問題点を認識する能力,およびこれらの問題点等から生じる制約条件下で解を見出す能力/結果を検証する能力/構想したものを図,文章,式,プログラム等で表現する能力/コミュニケーション能力/チームワーク力/継続的に計画し実施する能力などを総合的に発揮することが要求されるが,このようなデザインのための能力は内容・程度の範囲が広い.このことを踏まえ(以下略)

赤字は,PDFファイルでは前後と同じフォントですが,学会のボードで見たときは,赤で強調表示されていました.
「結果を検証する能力」以外は,何らかの解あるいは結果を求めるまでの行動に主眼を置いた能力であるのに対し,「結果を検証する能力」は,解の候補や暫定的な結果を得たあとで,デザイン活動における目標に照らし合わせて妥当であることを確認し明らかにするための能力です.この意味で,この能力は他のと質的に異なるものと言えそうです.
とはいえ,デザインは図やモノを作ったら終わりではないわけで,作りっぱなしでない,意味のあるものであることを,デザインする人自身がチェックしてアピールすることで,解や結果をより盤石なものにするという効果があります.
見た瞬間は,「ただでさえもデザイン能力の教育は難しい*1のに,また大変なものを追加したなあ…」と思ったのですが,こうして考えてみると,この項目追加は歓迎したいものであり,また自分の範囲の学生指導でも,この観点を欠かさないようにしたいと思うようになりました.
「結果を検証」については,昨朝に読み終えた本の終盤でも言及されていました.これはいわゆる文系の論文作法ですが,論文であっても,あるいは何らかのプレゼンを行う際にも,公表前に自分の主張が妥当かを自ら検討することが求められている,ということですね.

すべての段階で,自分の出しかかった結論に待ったをかけて,前提と論理の進め方が正しいかどうかをもう一度検証してください.そして,その検証のあとで議論を進めなおすことが大事です.そうしないと,前提という土台がしっかりせず,ぐらぐらの前提に乗った結論は,すぐにゆれたり崩れたりします.
(勝つための論文の書き方 (文春新書), p.190)