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玉は下段に落とせ

昨日の4年ゼミ発表の3人目は,事前指導をしているということもあり,数式の書き方に関する短いコメントをしてすぐ退室し,大学院のゼミに移動したのですが,補足を.
掛け算ゲームを,等価な割り算ゲームに変換することで,より小さい値での結論を活用できます.
掛け算ゲームのままでも,うまく数直線上の値や区間を定め,数式や論理を駆使すれば,おそらく証明はできるでしょう.しかしそれでは,値をどう変えていけばいいかの戦略を説明するのが難しいものです.「とらえどころがない」のです.
割り算ゲーム,つまり減らすゲームとして考えれば,目指すものが分かりやすくなります.証明においては,整数集合ではなく有理数集合を対象にしないといけないなど,注意を要する点もありますが,ゾーン分けをして,

  • 先手必勝を証明したいゾーンに数値があれば,適切な(∃)手で,後手必勝であることを既に証明しているゾーンに入る数値に変えて,相手に手番を渡すことができる
  • 後手必勝を証明したいゾーンに数値があれば,どんな(∀)手でも,先手必勝を既に証明しているゾーンに入る数値に変えて,相手に手番を渡すことになる

の2点を説明すればいいということです*1
値を小さくしていくという考え方は,整列集合*2を連想するのですが,ロジックとして,整列集合を使用しているものでもありません.
むしろ将棋の「玉は下段に落とせ」という格言がふさわしそうです.
攻め駒・持ち駒が豊富で,相手の守り駒・持ち駒が少ないなら,なんとかして詰ませることはできるでしょう.しかし中段玉は逃げ道が多く,逃げ方の紛れや,思いもよらない駒のため,詰みに失敗することもあり得ます.
玉を下段に落とせば,移動できるところを少なくできます.依然として遠くの大駒には注意を払わないといけませんが,ともあれ多くの場合は隅に近いところで,2〜3枚の駒が効いて「詰み」となるものです.上で書いた「より小さい値での結論」には,将棋の初心者のころに必ず教わる「詰みの形」が対応します.
ちなみにwikipedia:将棋の格言では「王は下段に落とせ【おうはげだんにおとせ】」となっています.「下段玉」の反対は「上段玉」ではなく「中段玉」といい,«ŠûŠiŒ¾Wを参照したのですが,ここの最初の「玉は包むように寄せよ」は,研究に使えそうな格言です.

*1:昨日発表した学生がこの日記をもし読んでいるなら,個人的に整理して書いてみると,問題文に登場する人物名や,「自分」「相手」よりも,あなたが最初に書いていた「先手必勝」「後手必勝」のほうが説明しやすいことに気づきました.すまんの.

*2:wikipedia:順序集合