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歌集にトリアージ

久しぶりにトリアージを取り上げます.なのですが今回は「カジュアルトリアージ」というものを見ていきます.コンピュータの世界の「カジュアルハック(カジュアルハッキング)」にヒントを得ました.
災害医療におけるトリアージの手法を他の分野に適用するものを指し,以下の条件をより多く満たすと,カジュアル度が高くなります(カジュアル条件と呼ぶことにします).

  • 緊急性(分類を極めて短時間に行う必要性)がなく,人的・物的資源に限定を置く必然性がない.
  • 分類基準に客観性が見られない.
  • 黒タッグに相当する分類がない.
  • 実際の分類事例が見られない.

そんなカジュアルトリアージの実例ですが…

トリアージ―黒岩剛仁歌集

トリアージ―黒岩剛仁歌集

Amazonマーケットプレイスより購入しました.
トリアージを直接取り入れた短歌は見当たらなかったものの,なぜトリアージという書名にしたのかが,あとがきで触れられています.

歌集名は,『トリアージ』とした.「トリアージ」とは,災害時に,多数の傷病者をその重症度と緊急性によって分別し,治療の優先順位をつけることである.短歌を作る場合にも,日々接する様々な事柄の中から,何を選び,どう歌ってゆくかが作品の生死を分けるのだと考えてきた.その意味でも,本歌集に収めた作品たちが,<死に体>でなく,その時々の空気を存分に吸収した,生き生きとした作品として読者の皆様の目に映ることを願っている.
(pp.180-181)

といったわけで,カジュアル条件をすべて満たしていました.
ところで,カジュアル条件に「生死にかかわる判断がない」というのは入れていません.上の引用のように,歌人が何気ない言葉や日常の出来事の中から「歌って(=救って)ほしいもの」を見つけ出そうとする視点を尊重したいですし,ソフトウェア開発案件でトリアージの手法を入れないことによってプロジェクトが破たんし,会社もつぶれて従業員が路頭に迷い以下略というシナリオも想像できるからです.
もう一度,短歌を読み直し,トリアージに関係しそうなものがないかを探してみました.それで見つかったのがこの歌:

局員のメンタルケアを重視せよ下命のあれば我も従う
(p.158)

「局員の」というのは,郵政改革関連でしょうか.この3文字を変えれば…それが歌の添削において簡単なものではないことは承知の上で…トリアージに関する歌あるいは標語ができそうなものですが.