わさっきhb

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メカニカル発想法を学んだ人にお願いしたい一つのこと

メカニカル発想法? - わさっきのコメント欄のやりとりについて,メカニカル発想法を駆使して,解決法をご提案ください.

背景

昨日(2009年1月8日),仕事中に,電話がありました.『創造力育成の方法―JABEE対応の創成型教育』の著者様です.
電話の内容は明かせないのですが,上の記事に関するもので,物別れに終わりました.
コメントを書いたとき(2008年12月4日)には,「この著者さまとコミュニケーションをとりながら,何が自分に欠けているかがありありと分かることができたらいいなあ」などと,淡い期待を抱いていました.
発想ツールというのは,工学的なモノづくりに役立つのはもちろんですが,工学を離れたシーンでも,当事者は何を持って(知って,できて)いて何をしたいのかが整理でき,適切な提示方法を通じて問題解決を図ることができる…気配りのできる人になる…ことにだって寄与するはずです.

私と本件との関わり

以下,当方の分析の参考になりましたら幸いです.

  1. 私の所属する学科はJABEE認定を受けたコースを設けており,教育内容の維持・改善に関わっています.
  2. デザイン能力という概念は,JABEE研修会に参加したときに知り,衝撃を受けました.学生にその能力の重要性を認識させ,身につけさせるためにどうすればよいか,研究室で学生を指導したり,本やWebの情報を読んだりしながら,当日記で考察を試みています.
  3. 現在,デザイン能力を育成する授業というのは担当していませんが,データベースの講義や,その設計・構築に関する演習については1999年度から関わっていました.また,単独担当の講義科目「情報セキュリティ」について,シラバスに「設計」を入れていることもあり,安全なシステムを設計する際に*1,よく知られた発想ツールに基づいて整理・分析をしてもらえるようにしたいなあと思案しています.
  4. デザイン(能力)を,JABEEの資料等に頼らず自分で定義すると,「工学における問題解決(能力)」です.工学の各分野で問題解決の考え方やツールは異なるのは当然としても,JABEEで規定されているわけですから,工学に共通する考え方はあるべきはずで,他分野のデザイン観もまた,関心のあるところです.
  5. そんなわけで,『創造力育成の方法』は,副題に「JABEE対応の創成型教育」とあり,参考になりそうと思い購入しました.書名を知るきっかけになったのは,学部(学科かも)各教員のメールボックスに入っていたチラシでした.
  6. 上記までと別の流れとして,発想ツールの情報分野への応用について,研究テーマになりそうと感じ,2007年から検討を始めました.思考展開図にフォーカスを当て,人工知能学会の論文と,畑村洋太郎氏の著書をもとに,ソースコード読解への適用を検討し,2008年8月下旬にギリシアで開催された国際会議で報告しました.google:clamshell diagramで「ウェブ全体から検索」とすると上位に出現し*2,いくつかのページを見ることができます.
  7. 国際会議原稿を書いたのは,同年2〜3月のことで,先行事例として,よく知られた発想ツールについて調査し,KJ法マインドマップ,魚骨図,TRIZについて説明を入れました.『創造力育成の方法』を入手したのは,8月上旬で,国際会議にカメラレディ原稿を提出した後のことです.もし同書で唱えられている「メカニカル発想法」が世界的に有名なものであれば,もしくは(参加者が決して多いとは言えないですが)国際会議で取り上げる価値があるものであれば,言及したいとも考えながら読み進みました.日記で『授業をされている大学の外で普及しているとは思えません』『転換プロセスとして挙げられている分類は,TRIZを連想します』と書いたのは,こういった事情によるものでした.
  8. 本エントリ冒頭のお願いは,「メカニカル発想法に関する課題に対して,メカニカル発想法で解決を図る」というものです.この種の自己言及は,情報の分野ではしばしば試みられます*3.国際会議で発表したClamshell Diagramについても,その予稿概要をClamshell Diagram自身で図示しています*4.自己言及については,たしか2006年の2月か3月の卒業研究発表会で,他の研究室の学生が,ビジネスライティングを支援するシステムを発表したときに,「そのシステムを援用して卒業論文を書きましたか?」と質問して苦笑させたこともあります.
  9. なお,研究としては思考展開図ベースの表記法を検討してきたものの,その図解表現や発想法にほれ込んでいるというわけではありません.メカニカル発想法にせよ思考展開図にせよ,十分に習得したとは思っていません.何らかの課題について,手がけたい,図示したいと思ったときに,そのときに最適と思うツールを使って図や文章にし,いくつかは授業や研究室で学生に提示して検討してもらい,いくつかは当日記で公開してきましたし,今後もそのつもりです.
  10. で,本件(エントリ冒頭のお願い)については,自身で解決しようとする気分になれないのです.自分がどんなに深く検討しても,結論はおそらく,自分びいきになってしまうことが,今の時点で考えられます.そこで「メカニカル発想法」を実践して,その威力・意義を確認したく,呼びかけるエントリを起こした次第です.

*1:暗号プリミティブというよりは,空港や学校など,多人数がアクセスする環境でのセキュリティを念頭に置いています.

*2:http://books.google.co.jp/books?id=H6nHbx8u_dEC&pg=PA474&lpg=PA474&dq=clamshell+diagram&source=bl&ots=y8xqy1UYRy&sig=lyUunEh-sLDqVcDhic25e9uEqXA&hl=ja&sa=X&oi=book_result&resnum=5&ct=result

*3:wikipedia:再帰的頭字語

*4:幸いにも,すぐ上の脚注で記載したWebページから読むことができます.