夕食前の居間で.
「あれ,この子,こめかみのところが赤いなあ」
「せやねん.蚊にさされてなあ.にっくき蚊め!!」
「まあまあ,蚊も生きとし生けるものや」
「けどこの子の白い肌に襲いかかるのは,許されへんわ」
「それはそうやが…おっと,今,蚊が飛んでたぞ」
「どこどこ…おった! あなた,動かんといてや」
「え…」
妻がぴしゃりと,夫のほっぺたを叩く.
「何や何や,痛いがな.しかも逃げられたし」
「ごめんやで」
「もしやで,この子のほっぺたを蚊が吸うてたら,こんなふうにぴしゃっとやってたか?」
「うん,今日の昼にやってん.軽くやし,そのときは見事に落ちてんけどな」