わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

ゼミ発表心得・2009年度後期の一発目

takehikom小ゼミ後期初回終了。2人とも自分の受け持ちだったので緊張しつつも、時には母モードになって子(発表者)を守り、時には叱る。ゼミ終了後、同じ研究班の学生が発表した学生に近寄った。課題は多いが先は明るい。 ( 2009-10-13 18:12:04 )
by Twitterログまとめ (どんジレ版 - 時刻表示版)

研究グループ全体で,4年生と修士学生が当番制で自分の研究を報告して質疑を受ける,「小ゼミ」が始まりました.昨日は,研究室の2人の4年生が(年度を通じて2回目の)発表をしました.
発表にあたり,メールと面談で,あれこれ指導をしました.

  • 新規性,有用性,信頼性,明快性
  • 誰に対して,どのような目的で発表するか
  • 前回発表の質問・コメントと回答も
  • アピールには,コントラスト
  • 図と写真
  • その他

新規性,有用性,信頼性,明快性

良い研究とされる指標には,「新規性」と「有用性」があります.例えば査読(さどく.要は審査のこと)のある学術論文を投稿する際には,このどちらかが十分なレベルにあり,かつ論文内容を下支えする「信頼性」と「明快性」が要求されています.

  • 「新規性」は,何らかの点で学術的に新しい内容を含んでいることです.
  • 「有用性」は,研究を通じて作ったもの(ソフトウェアなどの無体物でもかまいません)もしくは解決したことが,学術的な他の課題に応用可能であることです.
  • 「信頼性」は,論理的に適切な内容・構成であること,それぞれの主張に対して,適切な根拠を提示していることです.
  • 「明快性」*1は,適切な語句(その分野で暗黙の了解となっている専門用語や言い回しを含みます)を使用して,誤解の余地がない論述となっていることです.

口頭発表では,高いレベルを求めていませんが,ないよりはある方が,低いよりは高い方がもちろんいいので,良い研究になるよう,絶えず点検し,改善を試みましょう.
信頼性と明快性は,4年生の段階では,いろいろ悩んで書いてみて,指導教員に見せてアドバイスをもらいながら,向上させてください.
新規性と有用性は,先生に見てもらうほかに,自分でしっかり考えてアピールする方法があります.あとで項目を設けて,説明します.

誰に対して,どのような目的で発表するか

誰に対して,どのような目的や観点で発表をするのかというと,次の3つが考えられます.

  • 研究グループのメンバ全体(教員から学部3年生まで)に,自分が卒業研究としてどんなことを実施しているのかを,知ってもらう.
  • 研究グループのメンバのうち,特に教員に対して,1年間の卒業研究をどのように実施しているか,例えば,何を解決すべき課題として設定し,どんな手段で(複数ある手段の中からどのような根拠で一つ以上の手段を選択して)解決を試み,活動しているかなどを,報告する.
  • 前回の自分の発表に質問やコメントをした教員,学生に対して,その後どのような方針で研究を進め(あるいは方針を転換し),疑問や不審な点を解消しているかを,知ってもらう.

上から一つを選ぶというものではなく,いずれも必要です.スライドごとに,上のどれにどのくらい関係するのか(ウエイト)が異なる,と思えばいいでしょう.
発表時間が限られているので,どこをきちんと説明し,どこを省くかの選定が,重要になります.例えば「インデックス」や「ビュー」の説明は(データエンジニアリンググループなので,データベースの基礎知識はみな持っているということで)不要でしょう.しかし「転置インデックス」や「インラインビュー」になると,おそらく授業の範囲を超えていますから,前期の小ゼミで言ったとしても,3年生向けに説明をし直すのは,良いことだと思います.

以上のことを含めて,アドバイスとしては,

  • 発表の前半は,聞き手が「これは面白い!」「自分もこんな研究をしたい!」「この研究を応援したい!」と思ってくれる内容になるよう,背景,目的,採用する技術などについて,説明を工夫してください.先生よりも,後輩が聞いて分かってくれるのを,目指したいものです.
  • 発表の後半は,技術的な内容が多くなりますので,主な聞き手は教員や大学院生とし,個々の実施内容とその組み合わせを理解してもらうよう心がけるといいでしょう.十分な枚数をかけて進捗を報告して,最後のスライドは「今後の課題」としますが,その直前に「前回の発表で出た質問などについて」というスライドを作って,振り返りましょう.

前回発表の質問・コメントと回答も

「前回の発表で出た質問などについて」というスライドを作ることは,教員間で要請・同意しているものではありません*2し,卒業研究ではそんなスライドを作らないので,無用(せいぜい自分でチェックするだけでいいじゃないか)と思う人もいるかもしれませんが,私は2人の学生に,作るよう指示しました.
そのメリットは,次の2点です.
1. 「いただいたアドバイスをもとに,改善した」とアピールできます.これは話し手・聞き手の信頼関係の維持にもつながります
逆を考えます.前回質問したことが,解決されていなかったことに気づいた教員は,同じ質問をしてくれるでしょうか.嫌みの一つも言いたくなるものです.感情を抑えて「前回も質問したんだけど…」と言ってみても,言葉にならない重苦しい空気が,そこから部屋に充満するのです.
2. 先生の発言を,自分の土俵に持ち込むことができます.答えにくい質問やコメントも,それを自分の言葉に,そして自分の解ける範囲の課題に変換するのです.
「質問の意味が違うんですけど」と突っ込まれたら,そのときによく言葉を交わしましょう.小ゼミ議事録を持ち込んで,前回の質疑はどうだったかなと,一字一句見直す人は,幸いにもいません.
とはいっても,「前回の発表で出た質問などについて」に多くの分量や時間をとるわけにもいきません.1枚のスライドで,3〜4項目を並べ「主要な質問として,ここに挙げたものがありました.順に説明しますと,まず,……ですが,これは……」と話すのが,一つのやり方です.

アピールには,コントラスト

「新規性」「有用性」を示すとき,有効なのがコントラスト(対比)です.

  • 新規性に関するコントラストとは,
    • 「従来は,(技術的,学術的な観点で)何は行えるけれども何ができなかったか」を明確にしてから,
    • 「自分の研究ではそれができるようになる(なった)」のを示すことです.
  • 有用性に関するコントラストとは,
    • 「従来は,(人間を中心とした活動において)何ができなくて不便を強いられていたか」を指摘してから,
    • 「自分の研究ではそれができるようになり,そのおかげで活動が効果的または効率的になる(なった)」のを示すことです.

ただし,「できなかったこと」「不便を強いられていたこと」が,実は大した問題じゃないんじゃないかと思われると失敗ですので,よく検討し,やっぱり発表前に指導教員に見てもらいましょう.

図と写真

システムの構成図や,何らかの作業手順は,箇条書きではなく,図として見せるべきです.
ただし,「見せ方」と「作り方」は別です.最初はラフスケッチとして,箇条書きで文字にします.別にスライドを作って図を作り,何度も見比べます.図の内容で分かってくれるなとなったら,箇条書きスライドを削除します.比較や後戻りができるよう,PowerPointファイルも,Subversionなどでバージョン管理することを,強く推奨します.
図を作るのは苦労しますが,作ってしまえば,修正は容易ですし,卒業論文に貼り込むことも可能です.小ゼミはプレゼンの練習だけでなく,論文に(「アピール」と「分かりやすさ」という点で)必要な情報の整備も行うのだと思って,時間をとって作成してください.
写真や画像について,自分で撮れるならそれに越したことはありませんが,Webでふさわしいものを見つけるのも,いいでしょう.出典となるURLを保存しておけば,OKです.出典そのものは,スライドに明示しなくてかまいませんが,聞かれたら答えられるようにします.また卒論の中には,その種の写真や画像は入れません*3

その他

  • beforeとafterを意識しましょう.発表全体として,また各スライドについて,発表者の話を聞く前は,聞き手がどんな知識や情報を持っていて,聞き終わった時点でどのような新たな知識や情報が積み足されてほしいのかということに注意して,語句の配置を調整してください.
  • 定義は1行で書きます.例や補足説明は,すぐ下の行に書いて,定義そのものと分離します*4
  • 緊張しっぱなしはいけません.どこかに余裕を見せたいものです.例えば,一つの言葉に吹き出しオブジェクトを3つ以上突き刺すときは,横一直線ではなく,円弧状に並べると,ゆったりした見栄えになります.
  • 発表資料はslidument*5,すなわちslideでありdocumentです.読み直せるよう,配慮しましょう.例えば,発表中で何度も使用する重要な専門用語・固有名詞で,読み間違えられやすそうなものには,読み仮名をつけることです.PowerPointではルビが使えないので,語句の直後にカッコ書きで「猛彦(たけひこ)」のように書きます.
  • “だから何? (so what?)”を作らないように.「〜とは」で終わっていて,「〜(をそこで言うこと)が聞き手にどんなメリットをもたらすか」の欠けているスライドのことです.
  • 一つ一つの文や言葉がその表現でいいのか,チェックを怠りなく.辞書やWeb上の情報も参照しながら,完成度を高めましょう.漢字表記と送り仮名,英字ならスペリングや大文字小文字も要注意です.
  • 当研究グループでは,データ管理が命です.データをDBMS以外の方法で管理するなら,なぜそうするか説明しましょう.
  • 利用しにくいことを「敷居が高い」と書いてはいけません.それは日本語だけでなく,世の中の情報にも鈍感だと言っているようなものです.「え!?」と思った学生は,http://journal.mycom.co.jp/news/2009/09/07/006/index.htmlhttp://piza.2ch.net/log2/book/kako/943/943165088.htmlに目を通してください.

*1:「明快」という言葉は,「単純明快」として使われることが多いかもしれませんが,自分が研究や学生指導において読み書き聞き話す範囲では,「単純かつ明快」ではなく「明快にするために,単純にする」です.別の言い方をすると,「単純だけど明快さに欠ける」よりも「字数を多くしても誤解されないようにする(単純さよりも明快さを選ぶ)」を重視します.

*2:そういえば今年度の大ゼミ修論中間発表から,slidumentが要請されたなあ….

*3:どうしても入れる場合には,出典を付けます.

*4:例や下位概念について,字数が少なければ,吹き出しオブジェクトに入れるのもいいでしょう.

*5:Kei's Presentation Blog : Presentation Landscape