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ただ残念なのは,「第4則 はじめにコンセプトありき」を読むと,コンセプトとは目標のことだと,誤解されかねないこと.
理系の企画力! 〜 で,コンセプトとは?
自分なりに,コンセプトの意味を,言葉にしたことがあります.
(略)
話を戻して,このコンセプトは,「デザインコンセプト」と書くこともできます.また英辞郎で「設計思想」を引くと,design conceptと出てきます.
コンセプト(concept)は、本来「概念」を表す言葉です。しかしながら、日本語でコンセプトの語を用いる場合は、「全体を貫く基本的な概念」を表すことが多いようです。例えば「今度開店するレストランのコンセプトは“近未来”でいこう」と言った場合、レストランの店名・内外装・メニュー・広告などに、近未来的な演出を施そうという意味になります。
第8回 コンセプト | 10分でわかるカタカナ語(三省堂編修所) | 三省堂 ことばのコラム
○○コンセプト
開発コンセプト・商品コンセプト・広告コンセプト・デザインコンセプトなどの言い方をすることで、「何に関する基本思想か?」を表す事が出来ます。例えば「開発コンセプト」と表現した場合、開発の全体を通じて拠り所になるような、基本的な思想や方向性をさし示すことができます。
[同上]
言い換え語:基本概念
意味説明:事業や開発を進める際の,基本となる考え方
手引きコンセプト 「外来語」言い換え提案
- 単なる概念や考えではなく,事業や開発などの基本となる,これまでになかった概念を指して使われることが多い。基本となる理念や発想を指す場合は,「基本理念」「基本発想」などと言い換えることができる。
- 製品開発における基本理念を示す試作品を指す複合語例は,「試作」を含む複合語で言い換えることができる。
そのデザインの対象がインテリアであろうと、洋服であろうと、細かいデザインの積み重ねとなっています。例えばインテリアの場合、照明・壁・家具・床などの色や材質・形などの細かい選択を繰り返し、全体を作り上げていきます。洋服の場合も袖やえりの形やボタンの位置・材質などの細かい選択の積み重ねです。
コンセプトとは? -よくデザイナーが「アイデアやコンセプト」といいま- 日本語 | 教えて!goo
これら「部分」のデザインをするに当たり、「全体像」に対する「基本概念」がハッキリしていないと、パーツごとがバラバラになってしまい、全体が出来上がったときに統一感の無い作品になってしまいます。その「基本概念」こそがデザイナーの言う「コンセプト」です。
なので一言で訳せば「概念」とか「方針」になりますが、より説明的な訳をつければ「個々のデザインに統一感をもたららす為の、全体像の中軸となる基礎概念」となりますでしょうか。一例を挙げれば「この部屋は海のイメージをモチーフにしてデザインしました。」という場合、「海のイメージをモチーフにした」という点が「コンセプト」です。
[回答番号:No.1]
「コンセプト」に求めるものが変わった!
昔:概念→単なる機能説明.メリット.特長.アイディア.考え方.目的 他
今:
- 新しい視点.新しい概念
- オリジナルで,差異化がある
- 求心力があり,周りを巻き込む
- 戦略的で,全体を動かす力
- さらに展開し,持続する
1〜5が求められる「行動の中心的考え方」
(『コンセプトメイキング 変化の時代の発想法』, p.17)
「コンセプトメイキング」のためのチェックポイント
- 時代の求めに合っていますか
- 主張(志)がはっきりでていますか
- それは今までと違う新しい価値観ですか
- 激しい変化に対応していますか
- 生活の新しい提案になっていますか
- 喜びや感動の伴うものですか
- イメージアップにつながっていますか
- 他との差別化ができていますか
- 戦略的に組み立てていますか
- 長く展開が可能ですか
- 社内の共有化がしやすくなっていますか
- 世の中が評価し尊敬されるものですか
(前掲書, p.97)
自分の中をたどる
「コンセプト」という言葉を初めに知ったのは,ビッグコミックスピリッツの4コマ漫画,「気まぐれコンセプト」です.中学のころです.兄が雑誌を買っていたので見せてもらったり,買わなかった日は立ち読みしたりしていました.ビジネス的にも性的にも,大人のお話が満載の中で,コンセプトは,広告業界で必須のキーワードなんだと,位置づけるようになりました.
そこからだいぶ飛んで,大学3年の後期,なので大学院にはすでに合格しており,あとは必要な単位を取らななあというところで,4人でグループを作ってCPUを作るという実験科目(たしか必修)がありました.素案を作って,先生のところに持って行くと,言われました.「設計思想は,何ですか?」と.どうやら,モノ作りには,政治思想とは違った意味の思想が必要そうです.当時はGoogleなどでその意味や用例を知ることはできませんでした.なにやらテクニカルタームだなと思ったものの,素案の文章を少し増やすだけで,次の段階に進みました.
記憶はさらにまた飛んで,今の大学に着任したときのことになります.教授の下でさっそく,データベースシステムの研究開発に携わることになりました*1.市内の企業との会議にも,分からないままに参加しました.商品デザインに関するデータベースを設計する中で,「デザインコンセプト」と「デザインコンテキスト」を別々に持っておかないといけない,そんな細かい区別がいるんやねえ,とおっしゃるのを耳にしました.このころにはインターネットで少し調べれば情報が手に入る世の中になっていましたので,自習して,それぞれの違いを理解しました*2.
そして今
もともとの(今月2日に書評を書いたときの)疑問は,「コンセプトとは何か,そしてそれが広く理解されているか」でした.
今回,「コンセプトがどういう意味か」「コンセプトという言葉を使用するときは,どこに注意すればいいか」について,学生に対して説明できるだけの情報を,見つけることができました.
といっても,まあ,研究室の学生の発表や原稿で,この言葉が出ることはありません.前にも書きましたが,対外的な表現は「研究の目的」です.研究の目的を設定するときに,“研究コンセプト”をメイキングしてくれればいいのです.
そういえば,「名詞+コンセプト」がいろいろ出てきました.開発コンセプト,商品コンセプト,広告コンセプト,デザインコンセプト…は,上に引用したとおり.他にも,企業コンセプト,マーケティングコンセプト,施設コンセプト,製品コンセプト,などなど.
これらは「(名詞)を説明するためのコンセプト」と「(名詞)を行うにあたってのコンセプト」に区別できそうです.そしてこの仮説は,コンセプト乱立の状態を解きほぐすときに,役立ちそうです.
とはいうものの,疑問も残ります.
- 「コンセプト」と「キャッチフレーズ」の違いが分かりにくい*3.
- 一つのコンセプトを決めるまでに,たくさんの没コンセプトがあったのでは?
別の機会に,調査したいと思います.
*1:その成果は,自分がfirstで2件の国際会議発表と,社会人学生さんの修士論文になりました.
*2:「コンテキスト」については,大学生のときに学んだ形式言語理論で,context-freeやcontext-sensitiveといった言葉を知っていて,デザインにおけるそれと同じというわけではありませんが,理解の助けになりました.
*3:一応,wikipedia:キャッチコピーには目を通しました.コンセプトをソースファイル(Cなどのように,コンパイラが必要なものから,Rubyのように不要なものまで)に,コンセプトメイキングはプログラミングに,そしてキャッチフレーズを実行プログラムに対応づければ,Rubyスクリプトはソースファイルでありかつ実行プログラムなわけで,コンセプトにもキャッチフレーズにもなるものがあるのかな,と思ったりします.