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「広報会議」の特集にトリアージ

学内の生協で昼食をとり,購買の雑誌の棚を見ていると,「特集」「トリアージ」という文字が目に入りました.ちょっと考えてから,購入しました.
広報会議 2010年2月号
pp.52-54は北里研究所病院の医師・看護師による記事で,2段階の院内トリアージを含む救急体制が紹介されています.東京消防庁が行っている病院前トリアージや,災害医療現場のトリアージ,START法,トリアージタッグも,手短に説明されています.よく知られているトリアージレベルは4種類(赤黄緑黒)ですが,同病院では,この色分けを残したまま6つの分類にしていることが,p.52の図1で明瞭になっています.
その後は,広報に関する記事が並ぶのですが,「優先順位」はたびたび出現するものの,トリアージという言葉も,トリアージで連想できる諸概念も,一切出てきません.そして特集の最後,p.70で『トリアージの考え方を取り入れることで,「いま誰に何をするべきなのか」「次に何をするべきなのか」といった手法や手順もおのずと見えてくることだろう』と結んでいます.
トリアージの考え方を広報の業務に適用しようという,この特集に対して,カジュアル条件のチェックをしてみました.

  • 緊急性(分類を極めて短時間に行う必要性)がなく,人的・物的資源に限定を置く必然性がない.
  • 分類基準に客観性が見られない.
  • 黒タッグに相当する分類がない.
  • 実際の分類事例が見られない.

緊急性・限定の必然性がない点は,人次第かもしれませんがかなり該当するような.2番目以降はまったくもって該当します.ということで,カジュアルトリアージ認定です.
あともう一つ,医師らの執筆の中のエピソードにも,引っかかりを覚えます.

先日,こんな症例を経験しました.患者は85歳男性で,老人施設で生活をしていた方です.ある朝,施設のスタッフが血圧を測定したところ80mmHgと,いつもの血圧(130mmHg程度)より極端に低かったのです.患者自身は特に症状は訴えていなかったのですが,どうもおかしいということで当院に救急車で搬送されました.来院後のレントゲン検査で心拡大と肺水腫を認め,心電図の変化からも急性心筋梗塞による心不全という診断となり,すぐに集中治療室で治療を開始することになりました.そばにいる方が早期にトリアージを行って異常に気が付くことで,重症の患者さんを適切に医療機関に搬送することが可能となるのです.
(p.54)

この「施設のスタッフが血圧を測定〜救急車で搬送」を,「そばにいる方が早期にトリアージ」に結びつけるのには,違和感があります.
あれもこれも,トリアージ.そういう世の中を,私は望みません.「カジュアルトリアージ」という造語を引っ提げて,これからもトリアージネタを探訪していくことにします.