わさっきhb

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ブログと歩む,論文掲載への道

電子情報通信学会の論文誌に,掲載されました.
http://search.ieice.org/bin/summary.php?id=e93-d_4_713&category=D&year=2010&lang=E&abst=
一言でいうと,「思考展開図をSQLに適用してみた」です.SQLは,データベースアクセスに使われる言語です.思考展開図については,3年以上前に,軽い気持ちで日記に書いたことがあります.

帰りのバスの中で読みながら,この思考展開図をプログラミングに適用できないかと考えていました.読み終えて少し検討…バスが終点に着く直前に,アイデアが固まりました.
もしプログラミングに適用するなら,JavaRubyなどの,オブジェクト指向言語が最適なようです.「構造」がクラスに,「機構要素」がメソッドに対応します.「機能要素」は,それぞれのメソッドの仕様であり,(メソッドに付随させる)コメントとして表現されます.「機能」はクラスの仕様,あるいはクラスに要請されるものです.「機能」を取りまとめるものが「要求機能」であり,クラスとメインルーチン(mainメソッド)の集まりとして構成されるプログラムファイルが「全体構造」です.
C言語では,「機構要素」は関数でしょう.「構造」に相当するのは,プログラムの中で定義される構造体であったり,配列であったり,読み書きされるファイルであったり…そうだ,データ構造と言えそうです.データ構造の集まりが「全体構造」と一見ならないのは,Cが手続き型言語だからでしょうか.
それから,この本では,「設計支援のツール」として,思考展開図が紹介されていますが,既存のシステムを詳細まで理解し,全体と部分を関連づける,いわば「分析支援のツール」としても活用できそうです.私自身も,プログラムコードの分析や,(自他の)研究報告の読解に適用して,経験を蓄積してから,またこの日記で取り上げたり,学生指導に採用したりしたいと思っています.

思考展開図をプログラミングに適用すると

その後,2007年度に,M2と4年生を一人ずつ呼んで研究班を作り,彼らには表現とか実装とか手がけてもらいながら,自分も理論(形式化)を検討しました.それぞれの修士論文卒業論文になったほか,2008年8月に,ギリシアで発表することができました.

上記までと別の流れとして,発想ツールの情報分野への応用について,研究テーマになりそうと感じ,2007年から検討を始めました.思考展開図にフォーカスを当て,人工知能学会の論文と,畑村洋太郎氏の著書をもとに,ソースコード読解への適用を検討し,2008年8月下旬にギリシアで開催された国際会議で報告しました.(略)
(略)この種の自己言及は,情報の分野ではしばしば試みられます.国際会議で発表した Clamshell Diagramについても,その予稿概要をClamshell Diagram自身で図示しています*4.自己言及については,たしか2006年の2月か3月の卒業研究発表会で,他の研究室の学生が,ビジネスライティングを支援するシステムを発表したときに,「そのシステムを援用して卒業論文を書きましたか?」と質問して苦笑させたこともあります.

メカニカル発想法を学んだ人にお願いしたい一つのこと

自分の発表の番になりました.(国際会議は,自分の研究を発表しにいくところです.)

汗かきでもタオルいらず

冒頭の論文は,このギリシアの発表と,その直後のFITでの院生の口頭発表の直後から,始まりました.前者ではボスから「CやJavaは大きすぎるので,もっと手ごろなのはないかなあ」,後者では座長から「左にプログラムコードを置いた方が読みやすそう」,というアドバイスをいただいたのでした.
ただ2008年度後期は,授業,学生指導のほか,別の論文投稿(これも苦労の末に掲載されました)に時間をとることになり,「思考展開図をSQLに適用してみた」を文章として書き始めたのは,2009年の3月ごろでした.学生がいなくなったから,というよりは,同年5月の情報知識学会の予稿を作るためでした.

先週土曜日に,東京工業大学へ行きまして,情報知識学会の研究報告会でしゃべってきました.
思うことあって本文は英語で書き,日本語で口頭発表しました.こういうのは学生のとき以来です.

英語で書くとfiが抜けた

「思うことあって」というのは,論文として投稿したかったからです.「ギリシアの発表」の国際会議(JCKBSE)は2年に一度開催されています.そしてその翌年に,その国際会議と同じ研究分野に関する論文の特集号のCFP (Call For Paper,論文募集)が出されまして,さらに翌年の4月に発行されるという運びになっています.そこに載せることを早いうちから意識し,議論や例を整備するとともに,論文の参考文献に「(in Japanese)」を多数のっけるのはみっともないなあという思いから,英語で予稿を書いたのでした.
しかし一番の苦労はその発表の直後で,きちんとした論文にまとめる作業でした.考察のところはほぼ完全に,ない状態から文章をひねり出しました.
関連研究のうち,思考展開図とライバルになりそうなもの,具体的にはKJ法マインドマップ,特性要因図,TRIZは,ギリシア発表のものを引き写しました.SQL文の解析という観点で新たに国際会議発表を何件か見つけ引用したところ,査読者のひとりから,Visual Explainというのがあるよと言われ,調査して違いを書き足しました.
論文には,ギリシアでの国際会議の予稿と同じく,「概略を思考展開図で表したもの」を,通常の論文なら1章の最後に「本論文の構成は以下のとおりである.2章では…」と文章で書かれるものの代わりに,入れています.ここに掲載しようか少し迷ったのですが,いったん出してそれを見せないとするわけにもいかないので,今のところ自重しています.どうかPDFファイルか誌面でご覧ください.
IEICE Trans. Inf. & Syst.での論文掲載は12年ぶりです.理論化・形式化という点では,あのころに立ち返ったように感じます.