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院内トリアージ,もう少し調査

災害・緊急時ではなく,病院の窓口(外来)において実施されるトリアージの概念があるはず…とGoogleを頼ってみると,「院内トリアージ」という言葉を見つけました.

さくさくトリアージ 〜 院内トリアージ - わさっき

「救急外来トリアージ」という表現も見かけました.この名称の違いですが,将来的には,救急でないところでも,外来でのトリアージがなされるようになるのを見越して「院内トリアージ」という名称にしたのかなと推測しました.ただし現時点では,第2章 特掲診療料|第1部 医学管理等|B001-2-2 地域連携小児夜間・休日診療料|医科点数表|診療報酬どっとこむ2010が「地域連携小児夜間・休日診療料」と対象とした記述になっているので,“小児救急に限定した診療報酬の加算”と限定した上で,院内トリアージ=救急外来トリアージ,と考えてよさそうです.

この1週間で知ったWebページを,読み直してみました.

救急センターを受診したお子さんに対して、まず看護師が病状を伺います。そこでお子さんの病状の緊急度を判断し、今すぐ医師の診察が必要かどうかを決定します。この過程を「トリアージ」と呼び、トリアージによって決定された緊急度に従って、診察の順番が決まります。従って、場合によっては後から受診したお子さんが先に診察を受けることがあります。また、このトリアージは、救急車で搬送されてきたお子さんにも等しく行いますので、救急車で受診した場合でも緊急度が低いと判断した場合には、待合室でお待ちいただくことがあります。平成18年には救急センターを受診した患者さんほぼ全員の38,500名がトリアージを受け、そのうち最も緊急度が高く直ちに蘇生処置が必要な患者さん(蘇生トリアージ)が約320人、緊急度が高く15分以内を目途に診察・治療が必要な患者さん(緊急トリアージ)が約3,600人でした。それ以外の約9割の患者さんはいったん待合室でご待機いただきました。救急車で来院された患者さんのうち、上記の蘇生トリアージ・緊急トリアージに該当された方は約3割で、それ以外の方法で来院された患者さん同様いったん待合室でご待機いただきました。
救急センターにとって最も重要なことは、「早急な診察・治療が必要な患者さんに、遅滞なく、精度の高い診察・治療を行うこと」だと考えております。そのためには、トリアージというシステムが必要不可欠です。皆様のご理解とご協力をお願い致します。

http://www.ncchd.go.jp/hospital/emergency/kyuukyuu.html

院内トリアージ加算よりも前から,小児救急のトリアージをしている病院があるとのこと.窓口を訪れる人(患者とその保護者)に向けた,安心感を与える表現で,実施方法や数値の情報がしっかり書かれています.『場合によっては後から受診したお子さんが先に診察を受けることがあります』と『このトリアージは、救急車で搬送されてきたお子さんにも等しく行います』が要所ですね.

小児救急医療での患者側からの求めは,「困ったらいつでも,誰でも駆け込んでよい場所」の存在でしょう。しかし医療側にも,そして社会にも,それを理想の形で実現するだけの資源がない時代であるとの認識が不足しています。現実に病児を抱えてしまった患者家族側にその理解を求めるのは酷ですが,一方目の前に押し寄せる患者を前にした医療側には,現在そうした理解を求めるゆとりすらありません。
現状の理解のままの小児救急医療は,医療従事者からみて,「患者側の身勝手」に翻弄されたうえに文句だけを言われるとの不満だけが蓄積し,積極的に取り組もうとの意欲を失わせ,結果として国民の不幸につながっています。理解しやすい尺度がないことから,本来根ざすべき患者の重症度や必要度ではなく,「先着優先の原理」だけが一人歩きしています。この日本の社会の風潮は,子どもの代弁者としての小児医療者は変えてゆかなければなりません。
P-CTASのような明確なトリアージシステムの導入は,社会と医療施設の接点として最も軋轢が生じやすい救急部門のかかえる多くの問題を解決する効率的な手法です。ここでは当然ながら先着優先ではなく,患者の重症度や必要度が優先されます。一般社会に対する説明責任を果たす役割も持つことになります。

http://www.kokuseido.co.jp/b10/0317-4.htm

本の序文より.窓口における「先着優先の原理」から抜け出して,患者の緊急度・重症度を優先しよう,ただしその優先度の判断は医師・看護師の恣意にもとづくのではなく,きちんとシステム化されたもとで行おう…といったことを目指した本と見ます.
窓口で,思い出しました.今週,2回,市内の中央郵便局に足を運ぶ用事があったのですが,番号札を取ったあと,窓口側ではなく我々と同じサイドにいた局員さんから,用件を聞かれました.答えると,書けばいい書面などについてアドバイスをもらいました.窓口へ行くのは,依然として,先着優先でしたが,自分自身の待ち時間が減ることにつながるのでありがたいことでした.
さて,銀行や郵便局か,お役所か,食事時に待つ客が多くなるレストランが手がけるのか,そのうち…“なになにトリアージ”と,何か命名して,先着優先の原理を廃した*1受付体制ができたりするのでしょうか.

Q. 地域連携小児夜間・休日診療料の届出医師や診療に当たる医師については、B001-2-4地域連携夜間・休日診療料における届出医師や診療に当たる医師と兼務可能とされている。兼務の場合にあっては、同一医師のもとに複数の小児患者と成人患者が同時に来ることも想定されるが、その場合であっても院内トリアージ加算の対象となるのは、小児患者だけなのか?あるいは、成人患者も含めてトリアージを行わなければならないのか?
A. 成人患者も含めてトリアージを実施したとしても、加算できるのは地域連携小児夜間・休日診療料を算定する小児患者のみである。
Q. 院内トリアージを行つた患者に加算するが、例えば同じ日でも午前は患者が多く、午後は少ないということから、午前中はトリアージが行われたが、午後は行われなかった。この場合、午前中のみ加算という理解でよいか?
A. そのとおり。

平成22年度診療報酬改定『Q&A』(その1)

院内トリアージ加算の適用対象が,より明確になっています.

病院に搬送されてきた救急患者が「今すぐ」医師の治療を必要としているのか、あるいは「少し待てるのか」、待合室にいる間に「容態は急変しないか」など、初期の迅速な判断を行って患者を振り分けることは、一人でも多くの命を救うためにも非常に重要です。
トリアージは「選別」を意味するフランス語ですが、医療の領域では、血圧や呼吸数、脈拍などを計測して、症状が深刻、あるいは状態が悪化する可能性の高い患者など、緊急性のある患者から順番に医師の診察を受ける流れを作る能力を備えた看護師のことを「トリアージナース」といいます。

救急外来で活躍するトリアージナース:看護師の新しい仕事

トリアージナースが増えることを願い,診察・治療をするお医者さんにも,診てもらう患者側にとっても,メリットをもたらすことを期待したいと思います.

*1:「事前予約優先」や「うるさい客を優先」は,トリアージではありませんね.