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来年度以降の前期ゼミ

前期に,研究室の学生には研究と別に,少々負荷のかかる課題に取り組んでもらっています.「前期ゼミ」と呼んでいます.達成することで,単位が出るというわけではありませんが,大学院の小ゼミの点数や,卒業研究の学生評価には,反映させています.
前期ゼミは,昨年度から始めました.昨年度は,4年生以上を2班に分けて,こちらは課題を一つ用意し,一つの班にその課題,もう一つの班はその課題を参考にしながら課題提案から始めるということで,それぞれWebアプリケーションを作ってもらいました.
今年度は,Webページの刷新です.当初予定では,先週金曜日のゼミでほぼ完成し,週末にこちらでセッティングして,本日リニューアル,だったのですが,私も学生もいろいろなところができておりませんので,少々先延ばしにします.ゼミ自体は,集まれる日時の都合もあって先週でおしまいです.前期にやってきた3年生4人も加え*1,4班作って班ごとに1人,3年生が入る形となりました.あるページのレイアウトについて,3年生と4年生が作り,こちらでは学年を意識せずに見比べて,最終的に3年生が作った方を選んだ,ということもありました.
それらの前期ゼミでは,チームワークを念頭に置いています.さらに言うと,当日記でときどき言及している「エンジニアリングデザイン」です.

[デザイン教育の観点]
1. デザイン能力に関して具体的な達成目標を設定しているか。
2. 学生がデザインあるいは問題解決策についての学習体験をしているか。
3. 学生に以下のような能力が育成される複合的で解が複数存在する課題を与えているか。
(1) 複数のアイデアを提案できる。
(2) 大学で学ぶ複数の知識を応用できる。
(3) コミュニケーション力ならびにチームワーク力。
(4) 創造性(既存の原理や知識を組み合わせて、新規の概念または物を創り出せる)。
(5) コスト等の制約条件や評価尺度について考察できる。
(6) 自然や社会への影響(公衆の健康・安全、文化、経済、環境、倫理等)について考察できる。
4. 以下のような内容を含む達成度評価を実施しているか。
(1) 解決すべき課題の内容を良く考えている。
(2) 制約条件を考慮したデザインあるいは解決策となっている。
(3) デザイン(あるいは解決策)の結果を分かりやすく提示している。
(4) その他、各プログラムのデザイン教育に関連する学習達成目標を満足している。(例えば、構想力/構想したものを図、文章、式、プログラム等で表現する能力/計画的に実施する能力など)
5. 上記2.〜4.についての裏付資料が存在するか。

JABEEにおけるエンジニアリング・デザイン教育への対応 基本方針

2年間実施してきた研究室独自の試みとしての,前期ゼミが,上記のエンジニアリング・デザインのための教育となっているのかというと,大きな問題が2点あります.
まずは,数人のグループに分けて以降,そこでどのようなコミュニケーションが取られ,チームワークが醸成・発揮されたのかが,まったくといっていいほど記録に残っていない点です.ゼミや面談で,おおよその状況はわかるものの,それでは不十分です.解決策は簡単で,記録に残す習慣をつけ,学生にも指示することなのですが,言うは易く行うは難しなのですよね….
もう一つは,そういったアプリケーション作りやコンテンツ整備が,エンジニアリング・デザインである,もしくはデザイン能力を向上させることだということを,学生に自覚させていない点です.思いとしては,前期ゼミはお遊びではなく,研究室のdutyというのではなく,教育の一環なのです.ただ,大学教育の一部とするためには,達成したら成績評価をし,単位認定をする…といいのですが,単位を出せる権限はないので*2,まあdutyとせざるを得ません.その代わり,このゼミが今後のために役に立つよう,2週間ごとの報告の合間の週には,こちらから,エンジニアリング・デザインとは何か,そのための学習方法や,身につけた能力がどのように役立つかについて,もっと情報提供をしていきたいと思います.
デザイン教育との適合性と別に,課題もあります.「ネタ切れ」です.少なくとも,Webページ刷新を来年度も行うわけにはいきません.実用的なWebアプリケーションというのでは,こちらもネタの限界があります.
機械系だと,条件を設けて橋を作らせ,総重量の最も小さいのが勝ちとして競わせる,というのを聞いたことがありますが,情報系で,毎年できて,創造性とチームワークを発揮できて,楽しめるってもの,ないですかね….
今思い浮かんでいるのは,ゲーム制作です.単に「ゲーム」では対象が広すぎて,学生も,指導する教員も難しいのですが,限定は可能でしょう.ブラウザでとか携帯端末でとか,対戦型とか収集型とか,お年を召した方でも楽しめるものとか.この路線なら,毎年できそうで,ネタ切れの心配がなくなりました*3
時間配分は,企画に4割,実装に6割.ただし企画の段階から,実装に必要な技術調査をするということにします.最終的に作るのは班ごとに一つですが,企画では一つに決めるまでの過程だけでなく,どれだけたくさんのボツ提案をしたかも重視したいところです.実装は,全員が全員,コードを書けということにはせず,きちんと役割分担をし,完成までのスケジュール管理を行い*4,欠席がちな学生に対しては教員が乗り出す前に修復を試み,などなどして完成にこぎつけてほしいものです.

*1:研究室のメンバリストには3年生も入っています.例年9月末から10月はじめにかけて行われる,3年の研究室配属で,別の研究室に決まれば,名前を外しますし,新たに来た学生は加えますし,引き続きうちの研究室となれば,残します.

*2:3年生と大学院生は,自主演習で単位が認定できるのですが,卒研生には適用できないのでした….

*3:私があらゆる種類のコンピュータゲームを理解しているわけではないし,今後は「わからないゲーム」が増えていくことでしょう.しかしその場合には,その企画が十分に面白く,実現する価値があるというのを,他の人にチェックしてもらって,その証明とともにゼミで報告してくれればいいのです.

*4:スケジュール管理というのは,デザイン活動に不可欠なパーツである同時に,それ自体がデザイン活動なのですよね.作ったら終わりではなく,達成まで常時点検して,不測の事態には変更しないといけませんし,そういった修正ができるよう,計画を立てておかないといけませんし.