わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

論文関連用語2

用語整理---研究者ブログなら,やってみたくてたまらないのではないかと思いつつ,積極的に行うのはnext49さんと私くらいですか*1.メディア力では,まったく勝てませんが,自分の過去の試みを並べておきます.

さて,コメントで何個か英単語を書きましたので,自分なりに見直してみました.

refereedとreviewed

refereeかreviewかというのは,「どっちでもええやん」な話です.
それでも少々書き残しておくなら,refereeは審査(査読)するという意味の動詞*2として,また審査員・査読者という意味の名詞としても使われますが,reviewの名詞での意味は審査・査読でしかなく,審査員・査読者というのはreviewerと書きます.
refereeはカタカナ書きで「レフェリー」または「レフリー」ですかね.reviewerも「レビューアー」「レビューア」「レビュアー」「レビュア」と多彩です.
refereeを使って,審査・査読という意味の表現は何になるんだろ,と英辞郎を見てみたら,referee readingで査読という意味になるそうです.

original

日本語に訳すと「原著」です.原著論文(original paper)と同じ意味です.
「original paper = 原著論文」という等式があって,「paper = 論文」というのを使って両辺で引き算すると,「original = 原著」になったのかな,と推測します.
しかしこの用法,要出典です(どこかの本で見かけたことはあります.originalではなく「オリジナル」とカタカナ書きだったかもしれません).論文の本文には,まず,この意味で出現しませんが,最初のページのヘッダに「ORIGINAL」*3と書かれたものが,あったかな,なかったかな.

article

直訳すると「記事」です.
D1のとき,電子情報通信学会の英語論文誌に投稿する*4にあたって読んだ,投稿の手引の文章では,paperとletterを合わせてarticleと定義していた…とぼんやり記憶を持っていて,投稿のページ|電子情報通信学会を起点に和英とも読み直してみましたが,そういう定義はしていませんでした.参ったな.ただ,6. Copyrightの最初の文に出てくるarticlesは,前後関係から,掲載されることになった記事を指し,paper, letter, survey paperを合わせたものだというのが読み取れます.
next49さんの『あと、articleは学生時代にはあまり書かないと思わないので今回ははずしました(依頼があって書くものだと思いますし)。』には,驚きを覚えました.

publication

見聞きする限り,2つの意味があります.

  • 出版物:別の言い方をすると,論文の集合体です.出版社や学会・会議の主催者が使えば,様々な著者による論文の集合を表しますし,publication listまたはlist of publicationsと書けば,特定の人物が著者・共著者となった論文のリストを意味します.
  • 出版:投稿(submission)したのが受領または受理*5され,予稿集または論文集として公刊された状態のことを言います.一つの論文に対して,submissionとpublicationには,媒体によって数週間あるいは数か月あるいは数年という,時間のギャップがあります.

Publish or perish.

これまたきっかけは英辞郎ですが,Publish or Perishというのは刑事コロンボにも出てきていて,刑事コロンボ 完全版 Vol.11 [DVD]のカスタマーレビューにも現れます.そのレビューを読む限りでは,出版の分野でpublish or perishという言い回しが確立していて,それをタイトルに使ったのでしょう.
英辞郎によると,publish or perishで「論文を書かない学者は消滅する」という訳がついています.こういう圧力がかかり,学生は自分のペースで卒業論文修士論文をまとめたいのだけれど,先生が論文にする都合で,無理なスケジュールで実験のお手伝いをしないといけないことがある,というのは,研究室の学生のみなさんは知っておくといいと思います.って何をエクスキューズしてるんだ俺は!?

contribution

「投稿・寄稿」「寄贈」「寄与・貢献」などの意味があります.状況に応じて,どんな意味か判断するしかありません.
英語で論文を書く際には,その研究がどういうところに貢献したかという意味で,使うことになるでしょう.
原稿は学会という団体(目に見えるところ)に「投稿」しますが,研究成果は学会とその周辺でもって維持される,知の集合体(必ずしも目に見えないもの)に「貢献」することになります.
そのうち死語になるかもしれませんし,プログラミングに関わる人限定ですが,contribという単語もあります*6オープンソース運動が起こるより前のフリーなソフトウェアには,しばしばcontribというディレクトリが含まれていたりしまして,そこには,ソフトウェア本体に使い勝手を提供するツールなどで,ソフトウェア本体の作者以外がcontribute=寄贈したソースコードが入っていたものでした*7

journalとtransaction

学生にきちんと調べてもらうことを意図したコメントではなかったので,自分なりの見解を書いておきます.

  • 通常の日本語訳としては,journalは定期刊行物になります.transactionは,goo辞書によると,複数形にして,『(学会などの)会報, 報告書, 紀要, 議事録』とあります.
  • 電子情報通信学会では,会誌の英語表記がJOURNAL,論文誌の英語表記がTRANSACTIONです.歴史的な理由だと推測します.研究業績としては,TRANSACTIONに論文を載せることを目指し,十分な実績を積めば,会誌の編集委員(または特集の取りまとめの方)から依頼を受けてJOURNALに解説記事を書く,ということになるのでしょう.
  • 情報処理学会では,月1回発行の論文誌を「論文誌ジャーナル」,テーマごとに編集・発行されているいくつかの論文誌を「論文誌(トランザクション)」と分けています.http://www.ipsj.or.jp/08editt/ronbun_toukou.htmlを起点に,詳しい情報を知ることができます.ジャーナルとトランザクションとで,レベルの高低はないと思います.

私は両学会の内部事情に詳しくないので,外から知る限りの情報です.間違っていたら訂正しますので,ご指摘ください.

*1:http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/next49/20101110/p1関連エントリーに出てこないのですよね.

*2:-eeで終わる動詞って,これと,guaranteeのほかに,何があったかな….

*3:数年前に共同で研究をし,紀要に載せるのでと依頼を受けて図を作って送ったことがあります.めでたく紀要に掲載され,別刷りを受け取ったときに,「原著」と書かれていました.彼らにはこれが我々のfull paper 1本分なのですね.こちらの業績としては「紀要」に一つとなりましたが.なお,この研究の労力は,full paperひとつ書くのに負けないものだったことを付け加えておきます.

*4:D2の夏休みに,不採択通知が来ましたが.

*5:アックとアクセプト - わさっき

*6:contrib.の意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書

*7:ソフトウェア本体の作者が作った便利ツールを格納するディレクトリはutils,だったかな.