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学科学生に対して思うこと

自分の学科の学生に対して思うことを,先日とあるところに向けて文書化しました.雑記向けに書き直してみます.
まず学力低下の点ですが,個人的にはそう思っていません.教員からの問い方,働きかけによって,やる気の出方がずいぶんと違うというのは,強く感じています.簡単に言うと,手抜きはバレるということです.成功事例・失敗事例は,授業中(とくに演習時間中)に気がつくときもありますし,授業後のアンケートで分かるときもあります.どのような働きかけをすればいいかについては,気になるたびに『インストラクショナルデザイン―教師のためのルールブック』を読み直し,あれやこれやと考えて実践しています.
学生が,講義を受け演習でコードを書いていく中で,将来どんなプログラマになりたいか,どんな技術者を目指すのかといったことについてのイメージ,要は将来像を持っていないのではないか,と思うことはあります.とはいえ,素晴らしいプログラマ・技術者にお越しいただいて,学生の前で講演だとかプログラミング指導だとかいうのは,私の力量を超えています.
低コストでできる対応として,自分自身が,理想とするプログラマとして見てもらえるよう,行動しています.日々コードを書いて,学生が参照できる状態を作っています.著名人そのものを持ってくるかわりに,著書を読んで,自分の言葉で紹介しています.学生との情報交換も,欠かせません.情報交換といっても,そんな名称の会を実施しているわけではなく,授業なら,終了時に出してもらうメモが学生からの意見を吸い上げる手段になっています.学生室をふらっと訪れて,興味深い機器やソフトウェアを使っている学生から,使い方や入手方法を聞くこともよくあります.
なお,何ができる学生になってほしいかについて,1セメスターの持ち回り科目(情報通信システム入門セミナー)の担当の際に,次のことをスライドで掲示し,話しています.

  • 研究室配属までには,「入力」と「出力」が与えられたときに,それらを結びつける「プログラム」が書けるようになること
  • 卒業までには,「素材」が与えられたときに,「プログラム」を書いて,興味深い「結果」を引き出せるようになること

学生が当然学んでいるべき内容を身につけていないという,教員からの苦情を,よく耳にします.多くは「教わったけれど,忘れている/思い出せない」のでしょう*1.知識や技能を定着させるだけでなく,思い出しやすくさせることも,教える側の責務だと考えています.「○○のときにこの手法が有効」といった適用範囲の明確化や,「今はピンと来ないかもしれないけど,のちに○○というトピックで,活用することになるよ」といった有用性の示唆は,とくに低学年の科目において有用に思えます.
それでも学生の「身につかない」傾向が進んでいるというのであれば,荒療治も考えられます.講義を含む各科目で,何を身につけてもらうかを教員が選定・表明して,リスト化するのです.例えば今期に私が担当している1年生向け講義なら「配列・ポインタ」,2年生向け演習なら「クライアントサーバモデル」でしょうか.そして,後のセメスターや研究室配属後に,担当教員から見て身についていない学生がいたとき,リストをもとに責任教員を割り出し,その先生から指導を受けるよう指示するのです.指示書や指導報告書も様式化して,期間ごとに集計します.言ってみれば,指導内容の長期保証です.早いセメスターの担当教員に負荷が大きいことや,他学科・非常勤の先生の協力が得にくい点,教員の異動や授業内容の変更への対応など,課題も多くて,ただちに運用というわけにはいきませんが.

*1:まれに,「教員の使う言葉と,学生が教わっている用語が,一致していない(後になって考えれば,コレとコレは同じことを指しているのに,そのときには誰も気づかない)」「尋ね方が悪い」があります.最近実例を収集できていませんが,hindsightカテゴリーの各エントリも合わせてどうぞ.