本日発売のSUPER JUMP,「Dr. DMAT〜瓦礫の下のヒポクラテス〜」で,トリアージを巡った2人の医師の発言や考えが対照的でした.核心部のセリフを抜き出してみます(2011年1月26日発行 1月12日発売 第24巻第3号・通巻502号,pp.108-110).
ミキ「症例 その3 切れた 高圧電流に 接触」
村上(電撃傷――!! 見た目は小傷でも 体内にどんな 損傷を負っているか わからない―― 時間とともに 急激に 悪化する こともある)
ミキ「右手掌 右足底に損傷 面積は1% 歩行可能.バイタルは 意識清明 橈骨動脈検知可 呼吸20――」
村上「あ…赤だっ」
八雲「緑です」
(間)
ミキ「ピンポン ピンポン.ひびき先生 せいかーーい」
村上「バカな――!!」
八雲「…….確かに 救急医療では 赤と判断する かもしれません」
八雲「でも 災害現場は 一刻も早い治療が 必要な人たちが 溢れているはずです」
八雲「現場での スタートトリアージでは すぐ死に直結する 意識・呼吸・脈拍を 最優先で評価すべきで その点 この患者は 現況 歩行することもできます」
八雲「もちろん 症状が急変する 可能性があることを 申し送りした上で 注意深い 経時的観測が 必須となるかと」
その後は,いい格好を見せようとして泥を塗られた村上が「暴れ」ています.
さて,病院の中での会話ということもあり,最初に読んだときは,災害時と救急窓口のトリアージの違いを言っているのかなと思ったのですが,読み直してみると,医師の八雲(主人公.「ひびき先生」も同じ)と村上は,夜勤でDMAT兼務となっているので,災害時のトリアージのことなんだと理解するのがよさそうです.
昔書いたこと:
(略)今年,自分の認識を変える出来事がありました.トリアージについては,小児救急における院内トリアージ加算が導入されました.これは災害医療時のトリアージと運用方法が異なります.具体的には,緊急時だけでなく,小児救急における院内トリアージは日常行われます.それと,院内=外来でのトリアージには,黒タグ相当のものがありません.少なくともこれらの違いから,緊急時,災害などの際の「トリアージ」の知識だけで,院内「トリアージ」の是非を議論をするわけにはいかないと言えます.(略)
書きながら学び,書いてからも学ぶ
(略)ただし,「でもそうは言ったって」「実際のところは」から始まる批判も,十分に考えられます.
トリアージは「切り捨て」か 〜 専門家の考え
ただ,これを著者(医師)の傲慢ととるのではなく,災害医療の専門家集団における経験・実績をもとに,上記の説明がなされているのだと考えたいものです.
もし批判したければ,専門家の書いた複数の書籍を読んで輪郭と外れ値を把握し,専門家集団の門を叩いて教えを乞うた上ででも,遅くないように思えます.