わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

論争の先には

かけ算の順序を巡る,インターネット上で見かける論争や情報整理を踏まえて,今後何をすれば楽しいか,「書籍化」と「出前授業」の2点に分けて,検討してみました.

書籍化

じゅうぶんな成果が蓄積されたのなら,書籍にして書店に並べてもらい,インターネット以外の人にも理解を広げたいというのは,当然思いつきます.
かつてhttp://d.hatena.ne.jp/takehikom/20070719/1184795303の末尾に,『ネットワークのソフィストたち―「数学は語りうるか」を語る電子討論』という本を挙げました.ここまで行き着くといいのですが.ただしこの本は「議論」をまとめたものであり,編集にあたって,ある人の記事がすべて活字化されなかったことが書かれていたと記憶します*1
議論ではなくて,ある切り口で取りまとめるというのは,どうでしょうか.例えば1冊の本の半分は賛成派,残り半分は反対派が,緻密な論理,豊富な図解と例題でもって,それぞれ,読める文章にするわけです.この路線だと,執筆者が納得のできる見識をお持ちの監修者が必須でしょう.インターネットの議論を読んで,監修してくださる,数学教育の専門家は現れますかね….
自分かどなたかが出版社に持ち込む場合は,得られそうな反響よりも,どれだけ売れるかの見積もりが不可欠ですが,こちらはさっぱり想像できません.

出前授業

「出前授業って,何?」「出張授業のこと?」という方は,http://panasonic.co.jp/cca/demae/encyclopedia/index.htmlをどうぞ.と思ったけど,出前授業と出張授業の区別は見当たらなかったので,個人的な見解を書いておきますと,基本的には同じもので,受ける側(学校)からすると「出前授業」,行く側(企業など)からすると「出張授業」と考えるのがよさそうです*2.以下「出前授業」で統一します.
書籍化と並んで,思いつくのは,それだけ成果があるのだったら,そしてすぐに日本全体の小学校教育を変えられないのだったら,どこか学校とタイアップしてやってみたらいいじゃないのということです.
もちろん,課題もあります.順序派*3をベースとする場合,「面白くない」「押しつけ」という危惧があります.むしろ障壁は非順序派*4のほうが大きく,その指導方法に同意する学校を見つけるのが難関に思えます.同意できる先生が現れ,計画がとんとん拍子に進んでも,学校外の人や人でないところから圧力がかかって*5,突然中止になる,ということも,避けないといけません.
それから,1回の授業で算数の面白さを伝えるには,十分な検討と,(クラスなら)学級担任の先生,(学年・学校なら)より多くの児童を把握されている方と情報交換し,準備することになるでしょう.
書籍にあたっては監修者を挙げましたが,もしかけ算を巡る論争を踏まえて出前授業を行い,社会にインパクトを与えようとするなら,テレビ番組かなと思います.対決形式です.準備期間も,カメラを回してもらいます.やらせ歓迎,ブログなんかで「TVであんな風に流れたけど実は…」なんてのも歓迎です.なんて書いたら,実現から遠のくかな.
出張授業を積み重ねれば,指導の副次的効果,悪く言えば副作用も,見えてくることでしょう.もちろん軌道修正を図ればいいのです.出版への道も,開けてきそうです.
しかし学外の者がそんなふうに出前授業を検討するとして,気になる点もあります.その授業の教育的な効果を,何で測るかです.「面白かったか」だけならその場限りですが,「今後の学習に役立ったか」「点数が上がったか」あたりまで考慮に入れると,すぐには測れないし,仮に順序派の出前授業を受けたクラスと,非順序派の出前授業を受けたクラスで共通のテストを実施し,点数の違いが現れたとしても,もともと学力に違いがあったんだとか,出前授業後の(出前授業に依存しない)学習内容に違いがあったんだ*6といったクレームもつけられそうです.
ちなみに誰が学校現場に行き,実際に授業をするかについては,楽観視しています.インターネットで情報交換・情報整理をしている人はブレーン役となり,パフォーマーとして,クラスの子や学校の先生方の気持ちの変化を察知し,良い方向にクラスを持って行く人を立てればいいのです.テレビ番組なら,可能でしょう.
それでも,もし私が何か順序派として何かすることになるのなら,いくつも答えの可能性が考えられる中で一つに決めることの大切さを言えればなとは思います.ハッセ図などを入れた「もののつながり」を主軸とし,その一例として,かけ算の文章題に関するいくつかの解き方を取り上げる,というのは,当雑記ではコアの一つですが,児童らの前では変化球になるのかもしれません.

なにこれ

以下のある意味発展形です.

この件のディベート実施に,関心があります.
私が立ち会うなら,来年3月の中下旬まで時間をください.それと,私は否定側(『「5×3=15」と書いた式は,マルにしなければならない』),あなたは肯定側(『「5×3=15」と書いた式を,バツにしてよい』)でお願いします.

「×」から学んだこと

ディベートする気はありませんし,自分が対面の議論に向いていないことは承知しています.幸いにも挑戦状をつきつけてくる人はいませんし,私もこのFAQのあと,問題意識を書いてはケリをつける形で,それなりに満足のいくエントリを立てていくことができました.

*1:印税の扱いは,この本に書いてあったか? もしくは『fjの歩き方―インターネットニュースグループの世界』だったか?

*2:私自身,出張授業の経験はありませんが,大学の紀南サテライトキャンパスで,経済学研究科の授業として,自分より年上の方数名に対して,情報セキュリティのさわりを教えたことがあり,学科内の業務としてはこれが出張授業と同じ扱いになっています.

*3:ここは笑うところ.

*4:ここも笑うところ.

*5:ここも妄想しつつ笑うところ.

*6:SSLは,そのときの通信を暗号化するけど,それ以前やそれ以後,というかそれ以外の情報は暗号化してくれない,というのは『暗号技術入門-秘密の国のアリス』に書かれていたこともあり,情報セキュリティの授業で取り上げています.