わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

包含除と等分除

当記事は古い内容となっています.わり算,包含除・等分除,トランプ配り (2016.05)が最新です.

  「しかし,何ですねえ」
「どないしたんや」
  「ちょっと,知り合いの子どものな,家庭教師をすることになったんよ」
「へえ.何年生や?」
  「3年生やねんけどな」
「受験かいな」
  「いや,小学校の3年やねん」
「中学受験も,そのころから勉強せなあかんて言うしな」
  「そういうわけやないねん.まあちょっとしたつてで,勉強を教えたってやと言われてな」
「それでちゃんと教えてるんかいな」
  「まあだいたいは教科書みてたら何とかなるねんけどな」
「よかったやないか」
  「けどな,厄介なんは算数や」
「お前,昔っから苦手にしてたもんな」
  「せや.小学校3年くらいやったら何とかなるやろ思てても,分からんことが多すぎてやな」
「どないすんねんな」
  「その子のおらんとこでな,本を買おて勉強や,ボクも」
「そっか.んでうまいこといってんのか」
  「読めば読むほど,どないして教えていったらええか,分からんようなってきた」
「なんやそれ」

例題

  「紙に書いてきてんけどな,こんな問題があんねん」
「どれどれ」

とい1『りんごが 15こ あります。1さらに りんごが 3こずつ のって います。さらは ぜんぶで 何まい あるでしょう。』

  「どないやって,答えを出す?」
「こんなん,わり算やないか.15÷3=5で,5枚や」
  「お前…賢いなあ」
「いやこんなん,できて当たり前やろ」
  「ほな,次な」

とい2『りんごが 15こ あります。5さらに おなじ かずの りんごが のって います。1さらに りんごは 何こ あるでしょう。』

  「これやったら,どないする?」
「これもわり算やないか.15÷5=3で,3個や」
  「へえ.ほんまか」
「それ以外にどんな答えがあんねん」
  「(問題集の解答を見て)正解や」
「せやからこんなんは,わり算の基本中の基本やろが」
  「ま,せやねんけどな」
「3年生やったら,こういうのを解けるように,ばしーっとたたき込んだらええやないかい」
  「けどな」
「何やねんな」
  「なんでこの問題,わり算にしたらええか,言えるか?」
「変なこと聞いてくるなあ」
  「いやな,子どもは,なんでなんで,なんでなんでって聞いてくるねん」
「そんなん適当に答えとけや」
  「それがでけへんねん」
「まあお前らしいな.それで,どないしたん」
  「もうちょっといろんな本を読んだらな,今の2つの問いいうのが,包含除と等分除て言うんやて」
「ホーガンとトーブンって,人がおるんかいな」
  「ホーガンは聞いたことあるけど,トーブンって言うのは,お前が初めてやな」
「そっか」
  「当分,笑いのネタにさしてもらうわ」
「あかんあかん.で,その,包含除と等分除って,どんなこと言うねん」
  「包含除が,さきに言うたほうや.15個のりんごを,ひと皿に3個ずつ分けるってのな」
「そうか」
  「そいで等分除は,あとのほう.15個のりんごを,5枚の皿に,同じ数になるよう分けるわけや」
「まあ,そう言うんやったら,教えなあかんわな」
  「別に教科書に書いてるわけやないで」
「ほなそんなん,教えんでもええがな」
  「けどな,これがわり算としてちゃうもんやっちゅうこっちゃねんて」
「ややこしなあ」

かけ算との関係

  「まあせやけどな」
「何や」
  「かけ算に戻したら,うまいこといくっちゅうふうに書いてる文章を見つけてな,考えてみたんよ」
「どないなんねん」
  「最初のほうの問いな,15÷3=5って言うたやないか」
「言うたよ」
  「これをな,かけ算にすんねん」
「わり算はわり算やないか.かけ算ってどういうこっちゃ」
  「3×5=15になんねん」
「まあ,そう言われたら,三五十五やな」
  「ほんでな,2番目のほうは,アンタさっき15÷5=3って言うたやん」
「言うたな」
  「これもかけ算にしたらな…3×5=15やねん」
「どっちも,三五十五かいな」
  「せや」
「…逆にしたら,あかんのか」
  「5×3=15,か?」
「せや.五三十五やろ」
  「そこやねんけどな,これも2年生のかけ算の本をなんぼか読んだところによるとやな」
「ご苦労さんやなあ」
  「かけ算で式にするときはな,一つ分の大きさってのを,左っかわに,それがいくつあるかってのを,右っかわに,書くっちゅうルールになってんねん」
「初めて聞いたわ」
  「せやけどな,このルールのおかげで,包含除と等分除の区別がつくねん」
「どないや」
  「その前に,かけ算の3×5=15ってのは,どういうことなんか,見とくで」
「せやな」
  「りんごとお皿で,3×5=15になる問題を作ったらな,こないなんねん」

とい3『さらが 5まい あります。1さらに りんごが 3こずつ のって います。りんごは ぜんぶで 何こ あるでしょう。』

「これやったら,5×3=15やろ」
  「いやさっきも言うたように」
「ああ,分かった分かった,こんなとこで言い争いしててもしゃあない.この問いで,3×5=15っちゅうかけ算の式が立った.ほいでどないすんねんな」
  「ここでな,?×5=15と,ハテナで隠して,このハテナに入る数はなんですか,って考えんねん」
三五十五で,3しかないやろ」
  「せや,ここは3やねんけど,これを,15÷5=3って書くことにしたら…,『りんごが 15こ あります。1さらに りんごが 3こずつ のって います。さらは ぜんぶで 何まい あるでしょう。』の答えのな,5枚になんねん」
「へえ」
  「次はな,3×?=15ってしてみんで」
「そこも三五十五で,ハテナは5やな」
  「ご名答」
「分かるわ!」
  「わり算にしたら,15÷3=5や.そないしたらな…,『りんごが 15こ あります。5さらに おなじ かずの りんごが のって います。1さらに りんごは 何こ あるでしょう。』の答えで,3個になるやろ」
「なあ」
  「何かおかしいか」
「その2種類のわり算を,別の記号で書くっちゅうのはでけへんのか?」
  「そんなん,聞いたことないなあ」
「あかんのか」
  「たし算とひき算を考えてみ.3+5=8とすんで」
「3+5=8な」
  「それで,?+5=8とあったときのハテナは,8−5=3やろ,3+?=8とあったときのハテナは,8−3=5やんか」
「せやな」
  「この2種類のひき算を,別の記号にせえって言われたら,どないする?」
「….小学校で教える算数が,変わってまいそうやなあ」
  「たし算とひき算の関係とおんなじように,かけ算とわり算もなってんねん」
「まあええやろ」

一つトピックがあるけど諸事情により省略:そのうち追記します.

余りの扱い

  「けどな,そんなんやったら,包含除とか等分除とか考えんでもええような気ぃ,するやんか」
「まあなあ」
  「これもまた本を読んでんけど,余りのあるわり算にしたら,話が変わってくんねんて」
「そうなんか」
  「見てや」

とい4『りんごが 14こ あります。1さらに りんごを 3こずつ のせます。さらは ぜんぶで 何まい いるでしょう。』

  「どうする?」
「まあわり算やな,14÷3は…4で,あまりが2か」
  「せやな.答えは?」
「『さらは ぜんぶで 何まい いるでしょう。』か…ちょっと教えてくれるか?」
  「何や」
「2個しかりんごが乗ってへん皿は,1枚に勘定してええんか?」
  「意味わからん」
「あのな,この問題な,答え方に2通りあるんちゃうかなって思うねん」
  「2通りかいな」
「一つはな,『1さらに りんごを 3こずつ』乗せた皿っちゅうのは4つできて,2個はあまり,な.答えは4枚」
  「へえ.もう一つは?」
「もう一つはやな…『1さらに りんごを 3こずつ』乗せた皿は4つできて,あまった2個も,別の皿に乗せとくねん.そないしたら,答えは5枚や」
  「皿は5枚やなあ」
「どっちが正解なん?」
  「どっちも正解にさしてもらうわ」
「何やそれ」
  「いや実は考え中やってん.ていうのもな,包含除であまりのある場合を考えててやな」
「ほな,等分序でもあまりのある問題が,作れんねんな」
  「せや.これや」

とい5『りんごが 14こ あります。5さらに おなじに なるよう りんごを のせます。1さらに りんごは 何こ あるでしょう。』

「わり算したら,14÷5になって…2で,あまりが4やな」
  「数字,変わってくるやろ」
「せやな.そら,わる数が3から5に変わったからなあ」
  「まあせやねんけど,それで,答えはどうなる」
「『1さらに りんごは 何こ あるでしょう。』やな.『5さらに おなじに なるよう りんごを』乗せんねんから,2個ずつ乗せて,あまりは4個でええか」
  「ええか?」
「いや,ええかって聞いたんはこっちのほうやねんけど」
  「いやあのな,さっき包含序であまりのある問題にやな,答えが2通りあったやんか.こっちも,別の答え方でけへんかなあって」
「アンタ,答えを考えてへんのんか!?」
  「教えてほしいんよ」
「変なこと言う奴っちゃなあ…せやな,ほなら『おなじに なるよう』ってのを,1個くらいやったら差があってもええかなってことにするで」
  「へえ」
「まあ聞けや.そないしたら,りんごが3個乗った皿が4枚,2個だけの皿が1枚になるな」
  「なるわな」
「これが答えや.4枚は,3個ずつで,1枚だけ2個」
  「おもしろいなあ.まだあんで」
「….お前,ワシを試してんのか」
  「ご明察」
「ええ加減にせえよ!」
  「ほなボクのほうから答えを言うわな」
「はいはいどうぞ!」
  「この問題,あまり出さんと,わり切ることできるねん」
「どういうこっちゃ」
  「14÷5=2.8ってな」
「いやまあそうやが…小学校の算数で,小数って,4年生くらいで習うんやなかったか?」
  「今は大人のトークや」
「さよか…まあ,もうちょっと聞こやないか」
  「答えは簡単で,2.8個やねん」
「何やそれ.『.8』って,どうすんの?」
  「りんごを切るねん」
「…切るんかいな」
  「14÷5=2あまり4で,あまりの4個のりんごをな,みな,0.8個と0.2個に切るねん」
「食えるとこだけな」
  「まあ切り方は業者さんに任せよやないか」
「業者がおるんかいな,4対1にりんごを切り分けるような?」
  「おらんねんけどな」
「ええ加減にせえよ」
  「それはともかくとしてやな…あらかじめ,5枚の皿に2個ずつ,切られてへんりんごを乗せといてやな」
「ああ」
  「4枚の皿には,0.8個にしたりんごを乗せてって…」
「最後は?」
  「最後の1枚の皿には,0.2個にしたりんごを4つ,乗せんねん」
「それで,0.2×4=0.8ってことか」
  「せや」
「よかったな」
  「めでたしめでたしや.ここまでのことをまとめんで」
「用意してたんかいな」

  • とい4(あまりのある包含除)
    • 答え1:14÷3=4あまり2なので,りんごを3個乗せた皿は4枚
    • 答え2:14÷3=4あまり2なので,りんごを3個乗せた皿は4枚,2個乗せた皿は1枚となり,合わせて5枚
  • とい5(あまりのある等分除)
    • 答え1:14÷5=2あまり4なので,1皿にりんごは2個
    • 答え2:14÷5=2あまり4なので,りんごを3個乗せた皿は4枚,2個乗せた皿は1枚
    • 答え3:14÷5=2.8なので,1皿にりんごは2.8個

「そないなるねんな」
  「それでな,包含除の問題も,3番目の答えが出たら,おもろいと思わへんか?」
「小数にしてええんやったら,14÷3は,4.6666…になるな」
  「せや」
「それで答えは『4.6666…枚』にするか?」
  「あかんやろ」
「なんでや」
  「りんごは切って分けられるけど,お皿を切るわけにはいかんから」

補足1

「かけ算との関係」の元ネタは以下のとおり.

除法は,乗法の逆算ともみられる。そこで,乗法と関連させて,被乗数,乗数のいずれを求める場合に当たっているかを明確にすることも大切である。包含除は3×□=12の□を求める場合であり,等分除は,□×3=12の□を求める場合である。また,実際に分ける場合でも,包含除も等分除と同じ仕方で分けることができることなどにも着目できるようにしていくことが大切である。そのようにして,どちらも同じ式で表すことができることが分かるようにする。
(小学校学習指導要領解説 算数(2) p.110)

なお,このページには,包含除・等分除の(指導における)比較や,余りがある場合の包含除・等分除の例題も書かれています.
小学校学習指導要領解説をすべて肯定するわけではなく,例えば上記引用の『同じ仕方で分けることができる』については要注意かなとも思います.

補足2

あまり4個のりんごを,0.8×4+(0.2×4)=4と分けてりんごを分ける方法を書きましたが,一般に,任意に分割・結合できる対象がm個あるとき,それをnのグループ(ただし0<m<n)に等分することができます.m個の1個1個をn分割し,mn個の小片を作ってから,各グループにm個の小片(m/n個の対象)を配分するのです.

補足3

今月,当雑記に書いたエントリの中で,「包含序」と書いていたものは「包含除」に修正しました.