わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

科学技術とカレーライス

最近読んだ2冊の本では,ともに,科学技術とは科学と技術の単純な並列でない,とあります.

科学と技術を分けたヨーロッパ,分けなかった日本
日本で科学と技術が同時に進歩していったことは,特筆すべき幸運でした.
科学は,自然や環境を理解する方法ですので,人間が生き延びるための手段としては,それだけでは不十分である場合がほとんどです.つまり,科学の理念を実現するには技術が必要で,科学と技術の間にはどちらが上でどちらが下という関係はありません.しかし,これは案外,日本人に特徴的な捉え方と言えるのです.
(略)
そもそも日本では,明治以降,ヨーロッパでScience & Technologyというところを,Science-technologyという意味に解釈して,「科学技術」という言葉を作りました.それでうまくやってきたわけです.つまり,科学も技術も同時に取り入れ,繊維や軽工業,それから社会のインフラなどの分野で,あっという間にヨーロッパに追い付く器用さがあった.その段階ではヨーロッパは依然として科学・技術,つまりScience & Technologyだったわけです.
(略)
サイエンスとテクノロジーを目的上分けることは可能です.しかし実際研究者にとってみるともうどちらも同時に必要な時代になっているのです.
(『日本人のための科学論 (PHPサイエンス・ワールド新書)』, pp.40-43)

科学技術は科学+技術ではない
科学に対応するものとして技術があるというのが普通の考え方である.それでは工学とは何なのだろうか.技術との関係は何なのだろうか.また今日,科学技術という言葉もよく使われるようになっている.科学と技術の関係についてはこれまでいろいろと論じられてきた.ここでは科学技術や工学といったものも含めてその概念の意味するところを少し考えてみたい.
科学が自然世界のできるだけ客観的な記述・認識を目指すものであるのに対し,技術とはある物を作り出すための知恵であると言ってもよかろう.技術は科学のように物事を分析的にとらえるのではなく,ある物を作り上げるための,人間のいわば総合化され,直感的全身的に体得されている何ものかであり,名人芸的な手法はその典型的なものといってよいだろう.これに対して今日科学技術と言われているものは,このような意味での技術とは違うと考えられている.科学技術は科学+技術ではなく既に一つの概念を形成している.昔の技術が科学と直接には関係していなかったのに対し,科学技術は科学に裏打ちされた技術であると言えよう.すなわち,分析的に考えられ理論を背景として持ち,誰もがそれを習得できるものである.その代わりに名人芸的な技術には勝てないという限界を持つ.
(『情報を読む力、学問する心 (シリーズ「自伝」my life my world)』, p.266)

「科学技術」という言葉については,1年ほど前に「・」をめぐる問題で書いています.ここ数か月の個人的経験をプラスするなら,算数・数学の個別の問題を検討する(類題をたくさん作って知見を引き出す)のは科学であるのに対し,そこから得られた知識や知恵を,どのように児童・生徒・学生に身につけさせるか,考え行動するのは技術に属します.
さて,2冊の本で共通する主張の存在に気づいたのが,生協の学食でレトロカレーを食べていたときだったということもあり,science and technologyとcurry and riceを結びつけて考えるようになりました.
まず有名なのは,curry and riceは単数扱いであるということです.

1. and で結ばれた主語が同一人物(物)を表すときは、動詞は単数形をとる。
Curry and rice is served. (カレーライスが提供される。)

主語と述語の対応関係

高校の英語,たしか文法の科目でもそのように学びました.「カレー」と「ライス」ではなく,「カレーライス」と一体化して考えるから単数扱い,ですね.
念のため英辞郎で「カレーライス」を確認すると,『curry and rice《料理》●curry rice〈日〉〔【英語】curry and rice ; curried rice〕』とあります.またGoogleで科学技術を立ち返って見ても,"science and technology is"すなわち単数扱いのほうが,"science and technology are"と複数(別個)扱いにするよりも,多いように思えます.
カレーライスについてはさらに面白い情報を知ることができました.Wikipediaの英語版では,wikipedia:en:Japanese_curryの中で,curry riceと表記しているのです.
辞書や,Wikipediaより前の解釈では,curry riceはよくないとされていて,代わりにcurry with riceという表現が可能とのこと.

自分にとっては子どものころから当たり前だった,科学技術も,カレーライスも,さまざまな解釈でもって今後も発展・普及していく,ということでしょうかね.