わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

『かけ算には順序があるのか』を読んだ

「前におことわり」の前におことわり(9月19日追加)

その後に書いたエントリにリンクしましたので,合わせてどうぞ.

「まずは」の前におことわり(6月7日追加)

当雑記では,書籍『かけ算には順序があるのか』を批判する記述を多く入れています.
可能な限りそれぞれに根拠を入れるよう努めていますが,いくつかの関連する書籍を読んだ上での判断というのが,背景にあります(書籍から学んだ,かけ算の順序をご覧ください).
加えて,この本の著者と思われる方が,かつて,当雑記のエントリにコメントを書かれたこと,またその内容も,一因となっています.
これらをご了承の上で,ご覧いただけると幸いです.

まずは新刊

かけ算には順序があるのか (岩波科学ライブラリー)

かけ算には順序があるのか (岩波科学ライブラリー)

著者ブログのコメントに,「勉強になりました」と書きました.
なのですが,1回読み,2回目は第1章で気になったところをマークしながら読み終えてみると,どうも釈然としません.
理由の一つは分かっていて,著者は,数学の専門家でも,数学教育の専門家でもないことが,本書のいろいろなところでうかがい知ることができる点です.そのことを端的に示しているのが,次の箇所です.

「数の交換法則」とは別に,「量の交換法則」というものをきちんと議論しなければいけないようですが,数と量の区別は,大人でもあいまいですし,社会生活は,それでいっこうに差し支えありません.交換法則についても,数だろうが量だろうが関係なく,縦×横=横×縦,単価×個数=個数×単価,速さ×時間=時間×速さ,円周率×直径=直径×円周率,食塩水の量×濃度=濃度×食塩水の量,と思っています.
つまり,「1あたり量×いくら分」という量のかけ算について,次のように理解していることになります.
  (A)1あたり量a×いくら分b=いくら分b×1あたり量a
(p.37)

小学校で,算数を専門とする*1先生が,上の各等式を「それはそうだ」と思う可能性は低そうです.一方,数学的に対象を記述しそこから知見(定理など)を得ようとする者にとって,等式はいずれも証明されておらず,論証がおおざっぱ,というかそもそも数学的な検討でないように映ります.
念のため,私のバックグラウンドを書いておきますと,小学校の先生と直接話をしたわけではないのですが,解説書や問題集を目にしている限りで,上記の等式の「使いどころ」が見当たらず,無用な関係式に見えます.また,私自身,数学者ではありませんが,数学的枠組みによる対象の記述(形式化)については苦にしておらず,情報分野で査読付きの論文も書いています.関心のある方は "Security Verification of Real-Time Cryptographic Protocols Using a Rewriting Approach" (IEICE Transactions on Information and Systems, Vol.E81-D, No.4, pp.355-363, April 1998.)をご覧ください.
(小学校教育において,「a×bは良いがb×aは不可とはどういうことか」を考える際に,比(または割合)の3用法,その中でも第2用法の検討が不可欠です.第2用法をどうぞ.)

「1あたり量×いくら分」は認めるが,逆は認めない

(形式化の試みについては,俺数教協(4. 『かけ算には順序があるのか』に適用すると)をどうぞ.)
本書の土俵に乗ってみると,小学校の算数においては,数学教育協議会のスタイルで1あたり量(例えば「6個/回」といった形で値を記述すること)を認めるとしても,「6人×4個/人」という,1あたり量が乗数に来るような式をwell-formedとしない,要は“認めない”という慣習があると考えられます.
もう少し詳しく書くことにします.といっても,厳密な形式化ではありませんので,そこんとこはご容赦ください.まず,「1あたり量」の集合と,「いくら分」を表す量の集合を定めておきます.そのときに,a×b,ただしaは「1あたり量」の集合に属し,bは「いくら分」の集合に属する,という式が許されるものとします.この式の表す値(a×b=cと表せる量c)のほか,面積や体積,単位の換算に関する乗法は,別途定めることとします.そして,量どうしを乗法であらわせるのは,その定義に当てはまるときに限るとします.この形式化は,以下の見解に合致します.

6×4という式は,6個/回×4回というトランプ式配り方で解釈できるということであり,6人×4個/人,と「いくつ分」を先に「1あたり分」を後にした式とは解さない見解です.
(p.16)

pp.17-18に書かれている,7の5乗を求める計算について,試してみましょう.

  • ネコ: 7匹/人×7人=49匹
  • ネズミ: 7匹/匹×49匹=343匹
  • 穂: 7本/匹×343匹=2401本
  • ムギ: 7合/本×2401本=16807合

このように分けて計算することで,上の枠組みの中で式を立て,答えが得られます*2.とはいえ面倒なので,累加から乗法を導入するのと同じように,中学では,累乗からべき乗を導入することになるのでしょう.
ここまでの検討において,b×a,ただしaは「1あたり量」の集合に属し,bは「いくら分」の集合に属する,というのは,式として認められません.そして,そういうものを含む記述であるa×b=b×aは,真偽判定の対象となりません.というのも,等式の真偽を検討するには,=を同値関係と見なしたとき,左辺と右辺がともに(認められる)式でないといけないからです*3
このようにして,量に関する乗法の交換法則が成り立たないけれど,それでも式を立て,計算するのに困らない環境を作ることができます.
もう一例,あったなあ…

しかし,欧米の書式をもとにした日本の領収書の書式は,「分量×単価=価格」の順序になっていますし
(p.39)

この場面では,分量の集合と単価の集合(と価格の集合)を用意した上で,a×b,ただしaは分量の集合に属し,bは単価の集合に属する,という書き方だけを,×を用いた式として有効と定めればいいのです.言わば,domain-specificな乗法の定義です*4.取り扱う対象を小さくすることによって,おかしな量を含む式(式でなかったりして)を検出しやすくできます.あともう一言書いておくと,この引用の事例は,「分量×単価=価格」という順序があることを主張する根拠,もしくは,「1あたり量×いくら分=全体」とは限らないという根拠とするにはいいのですが,どちらでもいい(順序がない)ことを主張する根拠として持ち出すには不適切です.
数学は自由だ,なんでそんな制約をかけないといけないのだ,と思われた人のために,補足をしておくと,まずはラッセルのパラドックスを思い起こしたいところです.小学校で教わる,加減乗除くらいでは,そんな問題にならないだろう,というのでしたら,まずそもそも,per (/)を使った1あたり量表記が現在の小学校の算数においてメジャーとは言えないこと,また,5×3をめぐるお話 第1話で書いたような誘導に引っかかる,子どものような存在にあなたなっちゃっていいのですか*5,という点を挙げるとします.

数学教育協議会しかないのか

冒頭の本の残念な点は,数学教育について研究したり実践したりしている団体として,数学教育協議会(数教協)しかその名前を出していない点です.
ざっと調べた限り,以下の団体が全国レベルで活動し,研究会や書籍などを通じて影響力を持っているものと思われます.なお,順番順序には意味がありません.

  • 日本数学教育学会(日数教)
  • 数学教育協議会(数教協)
  • 新算数教育研究会(新算研)
  • TOSS(教育技術法則化運動,法則化,向山型算数)
  • 全国算数授業研究会(全国算数授業研究大会を実施)
  • 数学教育学会

小学校の算数教育の現状を知るには,それらがかけ算をどのように位置付けており,また教材や問題を作成しているかを,見ていきたいものです.

その他

「本に書かれていない点」を指摘しておきます.
サンドイッチへの言及がありません.著者ブログでは数教協こそ「式の順番」の犯人?? | メタメタの日で書かれています.
ボートが 3そう ありますの件も,著者ブログにあって,本には一切記述がありません.
現場指導に関する推測はできるだけ書かないようにし,出題のナンセンスさを取り上げたのでしょうか.もし,検索エンジンか何かでたまたま当エントリをご覧になり,出題に対する私の見解が気になりましたら,http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20110517/1305565907の最初の図と説明,http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20110427/1303851494をご覧ください.
それと,http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20101229/1293569316の件,ブログでは『時速1kmで3km歩く道のりの時速4km分の道のり』(量のかけ算でも交換法則は成り立つのか(3の3) | メタメタの日)なのに対し,p.43では『時速1kmあたりで3km歩く道のり(1あたり量)の時速4km分(いくら分)』です.3km/(km/時)=3時すなわち3時間を1あたり量と見なして被乗数に書いたとこちらは推測したのですが,著者見解は依然として,3km/(km/時)×4km/時の1あたり量は「道のり」のようです.
『かけ算には順序があるのか』のfirst impressionは,こんなところです.また取り上げるかもしれません.

修正版:独習・かけ算の順序

『かけ算には順序があるのか』を読んだ方へのガイドが最新版となっておりますのでどうぞ.)

かけ算の順序(被乗数と乗数)を手早く再確認したい人向けに,おすすめの本を並べることにします.

折り込みチラシに書籍にWebに

1冊,本が入りましたので,修正版を作りました.

  1. まず「乗法,被乗数と乗数の意味を重視する人々」も「順序派の人々」も『かけ算には順序があるのか』を買って通読しましょう.タイムリーな本であり,順序派の知識の集大成とも言えます.乗法,被乗数と乗数の意味を重視する人々は,2度読みして,不審に思った箇所に印をつけましょう.
  2. 次に買って読むべき本は,『田中博史の算数授業のつくり方』です.pp.62-67に,「被乗数と乗数の区別をするのが当然」を前提とした指導法が書かれています.全体を読み,今度は順序派の人々があら探しをするフェーズです.どちらのグループの人も,「あなたは,この著者のように,小学校で児童の行動を見,発言を聞き,答案を読んでリアクションし,児童に良い影響を与えられるように授業計画などを立て実施してきたか?」「この著者のように,学校の先生方に影響を与えられるか?」を自問してください.ここが,小学校の教育を理解するための,あなたのスタート地点です.
  3. 現在の指導はどうなっているかを,知りたくなってくるでしょう.学習指導要領? 専門書? ネットの議論? 教科書や教師用指導書を読み比べる? いえ,書店で問題集を買ってください.おすすめは『算数好きにする教科書プラス坪田算数ワークブック2年生』です.かけ算の意味に関するpp.56-71*6, pp.88-95は,「乗法,被乗数と乗数の意味を重視する人々」も「順序派の人々」も,全問解けるようになるまで,習熟を図ってください*7順序派の人々は気分が悪くなることがあるかもしれませんが,これをしないと,「乗法,被乗数と乗数の意味を重視する」指導が現在,どうなされている*8が分からないまま認識・発言などすることになります.
  4. 素地ができたところで,「乗法,被乗数と乗数の意味を重視する」という観点での,専門家の検討を読みましょう.『整数の計算 (リーディングス 新しい算数研究)』の第3章が「乗法の意味」です.初出は1978年〜1980年ですが,現在の算数指導から大きく変わっているところはありません.複数の著者の論説を通じ,乗法の意味に関する「共通点」と「差違」を把握してみてください.
  5. ここで順序派に近い本を1冊,読み直します.『算数・数学教育つれづれ草』です.pp.46-47が該当します.これまで読んだ本と,論拠を比較してみてください.
  6. そろそろ,『小学校学習指導要領解説 算数編』を読むのがいいでしょう.冊子はページ数の割に安いですし,PDFでも読めます.第2学年だけでなく全体を読み,かけ算(乗法,積)に関係する記述を抜き出し,分析しましょう.
  7. かけ算の順序をめぐる論争を知る際,遠山啓という人物,そして数学教育協議会という団体を外すわけにはいきません.『かけ算とわり算 (算数の本質がわかる授業)』(2008年発行のもの)は,そこのかけ算のスタンスを知ることができます.それと,この本の考え方やそこで見られる式の表記を,それまでに読んだ本や問題集などと比較してみてください.
  8. かけ算から離れて,「マルかバツか=評価」という視点で,教育の理論や現状はどうなっているのかを,知っておくのがいいでしょう.『教育評価 (有斐閣双書)』がおすすめです.診断的評価・形成的評価・総括的評価についても知ることができます.
  9. 振り返りましょう.
    • 乗法,被乗数と乗数の意味を重視するみなさんへ:『かけ算には順序があるのか』で印をつけた箇所の疑問は,解消しましたか?
    • 順序派のみなさんへ:学校の先生に相談されれば,教壇に立って,かけ算に順序がないことの素晴らしさを児童や先生に伝えることができる,というくらいにまで知識を深められましたか?
  10. 私がガイドできるのはここまでです.あとはご自身の関心で,多くの本やWeb上の情報に接し,取り上げてください.

前の学習指導要領解説との比較

学習指導要領を読むも合わせてどうぞ.)

小学校学習指導要領解説 算数編

小学校学習指導要領解説 算数編

大学図書館で読みました.以下,この冊子のページ番号を示す際には,{ }でくくって表記します.現行と何が同じで何が変わったかをみることにしました.
第2学年は{pp.73-86}です.{p.75}に「d. 一つの数をほかの数の積としてみること」として,現行のp.81にある,「2×6 または 6×2」と「3×4 または 4×3」のアレイ図がまったく同じ形で掲載されていました.
ちょっと第3学年に飛びますが,p.107にある『1mのねだんが85円のリボンを25m買うと代金はいくらか』『ひもを4等分した一つ分を測ったら9cmあった。はじめのひもの長さは何cmか』はともに{p.91},現行では同じページの,的当てによる0×3と3×0の違いは,少し離れて{p.104}に記述がありました.
しかし古い本の第2学年を見直してみると,「×」を使った式があるのは{p.75}のみなのに気づきます.ほかには{p.85}で,用語・記号として,枠組みの中に「×」の記号が見られます.
現行では,p.99に『例えば,3×4の式から,「プリンが3個ずつ入ったパックが4パックあります。プリンは全部で幾つありますか。」というような問題をつくることができる』とあります.これは「算数的活動」の一部であり,学習指導要領改訂*9で加わったものと思われます.またp.88には『12程度までの2位数と1位数との乗法』として,被乗数,乗数のそれぞれが10〜12のものについての積と計算方法が例示されています.これらのことについては,先日も引用しましたが立式の論理と計算の便宜 (3×5≠5×3問題)でより詳しく分析されています.
ということで,新旧の学習指導要領解説を見比べると,新しくなって被乗数と乗数の意味をより明確にさせていると言えます.もちろん授業・発問やドリルなどを通して児童が乗法の活用に習熟しようという環境は,学習指導要領が改訂されたくらいでは大きく変わりません.

電話のまずさ

電話で問い合わることも合わせてどうぞ.)
冒頭の本でも複数回書かれていますが,ある順序派と目される方が文部科学省などへ電話をかけ,回答や対応を引き出しています.
その情報を断片的に見ている限りですが,その行為には信頼性が欠けています.
理由は3つありまして,

  • 電話をする側は十分に準備できるのに対し,受ける側は,そうではありません.
  • 電話を通じて,十分な意思疎通ができたのかどうか,疑問があります.というのも,「かけ算の順序」という表現で,その意図が相手(文部科学省の人,数学教育の専門家,算数を専門とする小学校の先生ほか)に通じるだろうか,ということに対する想像・配慮が見られないのです.
  • 電話をかけた側にとって都合のいい情報・解釈だけを結果として公開している可能性が,拭いきれません.

問い合わせの信頼性を上げるためには文書(郵送)でしょうが,もちろん,返答が得られる可能性が100%でないという難点があります.
まあ,様々な手法が考えられる中,より確実に情報が得られることを重視し,信頼性を犠牲にして,電話照会を選択した,ということなのでしょう.読み手としては,鵜呑みにしないことです.

順序にこだわった指導が有効であるというデータを出せ

対象を,広げる,狭める(5. エビデンスがないのか)も合わせてどうぞ.)
とあるところで,まあ少々ぼかして書きますと,「順序にこだわった指導が有効であるというデータを出せ」という主張を見かけました.
これに対して,文献を示したり,愚直に実施したりしたところで,相手さんはケチをつけるだけでしょう.
そんな主張をする人は,そもそも,教育において指導が効果的であるというのがどういう意味なのか,またそれをどのように評価すれば認められるのかを開示していないので,たちが悪いものです.
現実には,乗法が使用できる場面をよく理解し,被乗数と乗数の意味に注意して式を作り,計算することが主流となっているので,「どちらでもいい」と主張する側が,その有効性を実証し,データを示さないといけません.
水からの伝言」を,思い出しました.引用します.

もし、「水からの伝言」に「科学の世界のルール」を使っていいのなら、話はずっとずっと簡単になります。「気相成長でできる雪の結晶の形態」という長い歴史と多くの知識のある分野での研究なわけですから、これまでの知識をふまえた上で、説得力のある実験をすることが要求されます。どんなに最低でも、温度と過飽和度を一定に保って実験をする必要があります。また、当然ですが、五十個のサンプルの中から、一個、二個を取りだして撮影するのではなく、すべてのサンプルについて、決まった方法で形を測定し、それを解析し、ていねいに統計をとらなくてはなりません。そういう実験データを積み上げて、それで、本当に何らかの傾向が見えてきたら、ようやく科学の研究の出発点ということになります。

「水からの伝言」が事実でないというためには、実験で確かめなくてはいけないのでは?

もちろん,教育における有効性評価というのは,こんなふうにできるわけではないのですが.

交換法則を学べばどちらでもよい

(出題例・指導例に関して,出題例から学ぶ,乗法の意味理解も合わせてどうぞ.)
交換法則を学習すれば,被乗数と乗数はどちらでもよいという主張も,見かけます.
ではそれを主張する人々は,交換法則を学習していない段階の出題,具体的には

1972年1月26日の『朝日新聞』に小学校のテストをめぐる論争がのった.それによると,昨年の秋,大阪府松原市・松原南小学校の2年生のテストに,つぎのような問題があったという.
「6人のこどもに,1人4こずつみかんをあたえたい.みかんはいくつあればよいでしょうか」
これに対して何人かの子どもは,
6×4=24
と書いたが,その答案は,答えの24こにはマルがつけられ,式の6×4にはバツがつけられ,4×6と訂正されたという.

テストは教育の目的か手段か

東京都算数教育研究会が昭和44年1月に東京都の2年児童約2,000人について行った調査によると,次のように報告されている.
〔問題〕8×6のもんだいをつくりました.よいものに○をつけなさい.
(1)( )みかんが一つのおさらに8こ,もう一つのおさらに6このせてありますが,みかんはなんこありますか.
(2)( )えんぴつを6本かいました.このえんぴつは1本8えんです.いくらはらえばよいですか.
(3)( )1まい6えんのがようしを8まいかいました.いくらはらえばよいですか.
(花村郁雄: かけ算の意味と方法 -つまずき事例- , 整数の計算 (リーディングス 新しい算数研究), p.117.)

で(3)の横に○をつけることや

文章題b おかしの はこが 3つあります 1つの はこには、おかしが 5こずつ はいっています みんなで なんこに なりますか
(金田茂裕 2009 小学2年生の乗法情報場面に関する理解 東洋大学文学部紀要 62, p.41.)

に対して「3×5=15」と書くこと*10

については,バツでよいということで,よろしいでしょうか.
次に,「交換法則を学べばどちらでもよい」ということを,いつ学ばせ,またどのような出題や場面を通じて習熟させるのでしょうか.
「どちらでもよい」は,大人にすれば簡単なように見えますが,子どもには自明ではありません.また試験問題によっては*11自分で一つを選ばなければならないのですが,どのように(問題解決の1ステップとして)行動すべきなのでしょうか.

*1:小学校教師には専門教科がある!? - 小学校 解決済み| 【OKWAVE】

*2:p.19 l.1の『7人×7匹/人×7匹/匹×7本/匹×7合/匹=16807合』は,「7人×7匹/人×7匹/匹×7本/匹×7合/本=16807合」の誤記と思われます.

*3:もちろん,a×b≠b×a(a×b=b×aの否定)でもありません.

*4:元ネタは,wikipedia:ドメイン固有言語

*5:同日追記:第1話での積は,数教協スタイルで単位を付けると「5個/人×3人=5個/回×3回=15個」であり,『「1あたり量×いくら分」の順序を守った』(pp.41-42)式でした.ここは第2話を持ち出すべきでした.こちらだと「5枚×3個/枚=15個」「5枚/箱×3箱=15枚」ができて,前者(の左辺)が,小学校の算数および上述の形式化において,認められない式となるのでした.

*6:某ページに誤記発見.2011(平成23)年2月17日 初版第1刷です.

*7:『私は新入生として,「数II・B」部会に所属したが,私達(見習い)7人の仕事は,最初の2ケ月間,ひたすら問題を解くことであった』, http://www.ee.em-net.ne.jp/~takeji/kousiki/sakumon1.htm

*8:例えば山梨のケース,新潟のケースの後半.

*9:現行学習指導要領の基本的な考え方:文部科学省経由で,改訂の基本的な考え方:文部科学省

*10:『さらに,次の基準A,Bを設定した.基準Aでは,被乗数と乗数の位置を問わず正答とした.例えば,「5×6」の話を作ることが要求されている作問課題に対して「6×5」の話が作られたときも正答とした.同様に,文章題では「5×3」の式を作るべきところ「3×5」の式でも正答とした.これに対して,基準Bでは,そういった場合を正答として認めなかった.算数の正答基準として適切なのは,基準Bであると考えられる』, p.42.

*11:実のところ,この段落の問いは,いわゆる順序派のみに向けられたものではありません.例えば,平成19年度全国学力・学習状況調査の小学校算数Bの中に,その種の選択をしながら解答をする設問が含まれています.5×3のカテゴリーか,教育のカテゴリーか分かりませんが,そのうち取り上げます.