わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

俺演算決定

1. 本日の主題を一言でいうと

個人的には演算決定の問題だと認識しています.

ツッコミばかりですんまへん

これ,間違いでした.

2. スタンダードな「演算決定」,その例題

「演算決定」とは何かだとか,「演算決定」がどのようなところで出てくるのかについては,http://www.shinko-keirin.co.jp/sansu/WebHelp/html/page/10/10_19.htmが,もっとも分かりやすいでしょう.
それで,「どのようなところで出てくるのか」ですが,次のように,分類と例題を挙げることができます.

1) 足し算か引き算かを判断する

あかぐみの ゆきだるまは 9こ,
おぐみの ゆきだるまは 7こ あります.
あわせて なんこ ありますか.
どちらが なんこ おおいですか

http://www.shinko-keirin.co.jp/sansu/WebHelp/html/page/10/10_19.htm
2) 足し算かかけ算かを判断する

東京都算数教育研究会が昭和44年1月に東京都の2年児童約2,000人について行った調査によると,次のように報告されている.
〔問題〕8×6のもんだいをつくりました.よいものに○をつけなさい.
(1)( )みかんが一つのおさらに8こ,もう一つのおさらに6このせてありますが,みかんはなんこありますか.
(2)( )えんぴつを6本かいました.このえんぴつは1本8えんです.いくらはらえばよいですか.
(3)( )1まい6えんのがようしを8まいかいました.いくらはらえばよいですか.
(花村郁雄: かけ算の意味と方法 -つまずき事例- , 整数の計算 (リーディングス 新しい算数研究), p.117.)

《さらとりんごの問い2》
百円きんいつのおみせにきています。
さらが5まいあります。
1さらにりんごが3こずつのっています。
ぜんぶでいくらでしょう。

《さらとりんごの問い3》
百円きんいつのおみせにきています。
さらが5まいあります。
1まいのさらにりんごが3このっています。
ぜんぶでいくらでしょう。

ボートで、かけ算

■の部分のまわりにロープをはります。■の部分のまわりにはるロープの長さは,どのような式で求められますか。
下の1から5までの中から2つ選んで,その番号を書きましょう。
(引用者注:図および選択肢は省略.「■」は原文では網掛けの長方形)

平成19年度全国学力・学習状況調査 算数B 大問1(1)
3) かけ算かわり算かを判断する

ひもを4等分した一つ分を測ったら9cmあった。はじめのひもの長さは何cmか。
(《算数解説》p.107)

  • 赤いテープの長さは6mです.青いテープの長さは,赤いテープの3倍です.青いテープの長さは,何mですか.
  • 赤いテープの長さは6mです.赤いテープの長さは,青いテープの3倍です.青いテープの長さは,何mですか.
二重数直線,比例数直線,数直線

「かけ算かわり算か」は,ここでは3年生が解ける問題を挙げましたが,小数や分数を含む式を立て,計算することになる,4年生以上でも,多彩な問題を目にすることができます.
それと,学年が上がるにつれ,加減乗除の演算を複数組み合わせて式にすることも問われます.
演算決定の意義について,新たに購入した本から抜き書きします.

演算は状況によって決定される.言葉は状況を取り出すための手がかりとなるだけであり,“あわせた”があればたし算,“のこりは”があればひき算などと,言葉その者が演算を決めるのではない.状況をもとにして演算決定を促す学習を続けることで,幅広い場面を演算場面として想定できるのである.だから,その状況自体も表現することができるようになる.
(『算数科・授業のすすめ 表現力はこうして育てる! 2年―子どもが動く算数的活動15』, p.62)

3. 俺演算決定

当雑記のこれまでの「演算決定」には,加減乗除の左と右に何を書くのかの判定・決定を含めていました.箇条書きにすると,こうです.

  • 被加数と加数を決定し,足し算の式であらわす
  • 被減数と減数を決定し,引き算の式であらわす
  • 被乗数と乗数を決定し,かけ算の式であらわす
  • 被除数と除数を決定し,わり算の式であらわす

先に用語についてですが,「被加数」「加数」「被減数」「減数」「被乗数」「乗数」「被除数」「除数」のうち,《算数解説》では「被減数」のみ見つけることができず,それ以外の7つはPDFの検索で発見することができました.とはいえ「被減数」も,辞書や用語集などで容易に知ることができます.
これまで関心を持ってきたのは,「被乗数と乗数を決定し,かけ算であらわす」です.りんごでもミカンでも,他のものでもいいのですが,《BA型》がその代表例です*1.なお,細かいステップとしては,かけ算であらわせばよいと判断した上で,被乗数と乗数を決定し,かけ算であらわすことになります.
他には,平成19年度全国学力・学習状況調査 算数B 大問5(3)が挙げられます.情報過多の状況において底辺と高さを見つけて平行四辺形の面積を求め,長方形の面積と大小比較をするという出題意図ですが,正答率は18.2%と,非常に低いです*2.これについては,15こあればいい,じゃあないんだよね「×」から学んだことの中で取り上げています.
さて上に書いた4項目が,「俺演算決定」すなわち俺ローカルな考え方であるのに気づいたきっかけは,http://ten.tokyo-shoseki.co.jp/material/52826.htm&TB_iframe=true&width=800&height=500から取得できるPDFファイルです.2年の学習において,かけ算(乗法)がまったく現れないことから,「被乗数と乗数を決定し,かけ算であらわす」という行動が,演算決定に含まれないと解釈できます.
他にも,書店で見かけた本の中で,演算決定をしたあとで,被乗数と乗数の決定をすると書かれたものがありました.
ということで今後の書き方ですが,

  • 「演算決定」と書くときは,加減乗除の演算のみを決めること
  • 演算決定と合わせて,その演算子の左右にどんな数を書くべきか判断することは,「ルールの選択」

といったところかなと思っています.ルールは必要に応じて,定義,公式,定理,などなどに置き換えます*3.この意味のルールについて,どの段階で何を学び,先生・児童・校外の人との間で共有していけばいいのかについてのは,校外の人の一人である私も,書き散らかすことができそうです.

4. 東京書籍に見る《BA型》

3点どうもありがとうございました.私自身は,《BA型》は乗法の意味理解を確認するため,事前的評価(ただし乗法ではなく除法の導入として),形成的評価,総括的評価,外在的評価のいずれにおいても出題され得るものと認識しています.また実態として,《BA型》は現行そして一つ前の学習指導要領解説に入っていますし,自治体の学力調査でも出題されていることを伝聞しています.次回エントリで,もう少し詳しく説明したいと思います.

ツッコミばかりですんまへん コメント

んで解説です.
平成27年度用 小学校教科書のご紹介|東京書籍の右カラムに,「学力調査結果に見るつまずきへの取り組み」というリンクがあります.クリックすると,『ボートが 3そう あります』から始まる問題があります.そして教科書内外の,当雑記で《BA型》と呼んでいる事例とその意図を,見ることができます.「B県学力調査」というのが捏造とは考えにくく,外在的評価の手段としてそれなりに出題されていることがうかがえます.
「現行そして一つ前の学習指導要領解説」については,以下のとおり取り上げています.

第3学年です.「じゃあ,2年生のうちは,それを教える必要がないのでは?」というと,必要はないのですが,問題集や指導例で多く見かけます.そしてよく知られているように,学習指導要領で書かれているのはmaxではなくminなので,その規定だとか教科書の記述を超えた出題・指導は,行って差し支えないはずです.
ところで,「事前的評価」は,今日では「診断的評価」と呼ばれます.「事前的」としたのは,『教育評価 (有斐閣双書)』によります.「外在的評価」という言葉も,この本からです.

5. パターンブロック

  • pp.53-54(6の段の九九を構成する):三角形の1ダル,菱形の2ダル,台形の3ダル(初出はp.34)の意味が,ここで明かされます.
ツッコミばかりですんまへん

これ,「パターンブロック」と呼ばれているのですね.

パターンブロック ファーストステップボックス

パターンブロック ファーストステップボックス

答えが6平方センチメートルになる問題,図形だけ見て---詰将棋を解くかのごとく---理由を考えるのに時間をとってしまいました.一つのパーツが菱形であることを確認したら,底辺が1cm,高さが2分の1cmの平行四辺形とみなしてその面積が出せる,ということですか.

6. 割合を百分率にするためのかけ算

いきなりですが問題です.

0.4は,何%ですか.式と答えを書いてください.

さっそくですが元ネタです.『算数好きにする教科書プラス坪田算数ワークブック5年生 (TEXT BOOK PLUS)』p.65でして,解答はp.163にあり,0.4×100=40 答え40%です.
この本を読む限り,「割合×100=百分率」であり,「100×割合=百分率」や「100%×割合=百分率%」ではなさそうです.
同様に「100倍する」ことを使った式は,百分率とは,どのような割合のことなのなぜなに学習相談 算数|学研キッズネットより)や,MSN Japan - ニュース, 天気, メール (Outlook, Hotmail), Bing検索, Skypeでも見ることができます.
百分率から割合を求めるのも,「百分率÷100=割合」であり,「百分率%÷100%=割合」としているものは,見当たりませんでした.
百分率と割合の相互変換に,乗除算を使わないというポリシーもあります.

初めにお断り。ここでは百分率を小数倍としてあつかってますので、%の計算をたとえば「×0.25」のように統一して記します。「÷100×25」とか「×25/100」とはいたしません。後の、分数計算は約分できる場合がありますので便利だとは思いますが。

http://www.rakugakukobo.com/sansuu/sandojyo/sando_5/sd5_01_h3_16.htm

百分率を求める問題は,どうやって解けばいいのには,「0.75=75%」といった等式があります.『坪田算数ワークブック5年生』p.164では,「140%→1.4」と書かれています.
学習指導要領では…《算数解説》p.189です.乗除算の式は,一切出てきません.
「100%×割合=百分率%」ではなく「割合×100=百分率」というルールを入れるとなると,俺量の形式化のところで苦しくなりそうです.まあどうでもいいことなんだけど.

7. 徳保的算数

さてコメントをいただいたことだし,備忘録2011年6月/趣味のWebデザインを読み直してみようかと,開いた瞬間,平成23年6月30日の記事が目につきました.俺馬鹿の引用で,びっくりしました.発言者の付与は,お手数をおかけしました.

平成23年6月30日)

  • 子どもが、「毎日、楽しいな」と思える環境で育つこと。
  • 親が、「この子を育てていると楽しいな」と思えること。

出て行きなさいもそうですが,親馬鹿・親馬鹿2カテゴリーの記事の大部分は,書かれた2点に見事に収まっています*4.ただ細かいことを言うと,「この子を育てていると」は「この子と接していると」としたいところ.手垢のついた言い方ですが,育てられているのは,子どもだけでなく親もです.
はい? 叱られた“うえの子”,楽しいですかって? それは

 「(勝手口のドアを開けて入り込み)ママ〜〜」

出て行きなさい

を発したときの表情から,お察しください.
さて…

平成23年6月17日 1.)
それはtakehikomさんの前提に賛成した場合の話だと思う。takehikomさんが仰っているのは、ようするに、「教師側の土俵に乗れ」ということ。3×5≠5×3問題で燃えた側は、元生徒として怒っているんだ。「バカ教師が、くだらない指導をしやがって!」と、生徒の目線で怒っている。私はそう思う。

教師ではなく,教育システムでしょうね.この種の出題が1人の教員によるものではないことは,上の「B県学力調査」が示唆しています.
さてそのお怒りですが,連想するものがあります.トリアージです.数年前にトリアージ論争というのがありましたが,あっちよりは,病院の外来窓口におけるトリアージ(院内トリアージ)を,イメージしてください.「バカ教師が、くだらない指導をしやがって!」は,「なんでうちの子よりも先に,後から来てぴんぴんしているあの子が診察されるんだ!」という感情に似ているように感じます.

平成23年6月17日 2.)
他の会社の雑誌もいろいろ読んだが(雑誌はひとつの記事が短いから講義の合間の空き時間に読むのには都合がよかった)、少なくとも一般の教員向けの雑誌に載っている記事は、どれも実証的ではなかった。絵画などならともかく、計算問題や漢字の読み書きの指導くらい、きちんと実験を組み立てて授業の成果を収集し統計処理を行うことが可能なはずだ。「指導法Aが指導法Bや指導法Cより優れている」ことを教師の感覚や思考ではなく客観的なデータから明らかにする実証研究が、あまりにも少ない。呆れた話だと思う。
このたびtakehikomさんに触発されて近所の市立図書館で算数の授業の組み立て方に関する本で掛け算の初歩を扱っているものを何冊か探して読んだが(というか市立図書館には数冊しかそのような本がなかった……)、やはりロクに参考文献の記載がない。まともな実証論文に基づいて「このような指導法がいい」と解説するのではなく、筆者の個人的な体験から書かれている。10年経っても状況に変化なし。こんなものを何千ページ読まされたって全然、説得力を感じない。

とりあえず「参考文献が入っている」「統計処理がなされている」の条件に合うものを1件挙げると,次の文献があります.

  • 金田茂裕: 小学2年生の乗法場面に関する理解, 東洋大学文学部紀要, No.62, pp.39-47 (2008).

ただし指導法の提案ではなく,小学生・大学生を対象とした文章題解答の比較です.書き方についても,自分が学会向けに予稿や論文を書くのと,似ているところも違うところもあるなあと,感じたものでした.
あとまあ「授業の組み立て方に関する本」は,先生方は,レシピ集のように思っているのかもしれません.児童がきちんと理解してくれるかどうかは,まずは先生の指導力,力量にかかっています.しかし用語だとか筋道だとかに不安があれば*5,出版されている本が,頼りになります.自分の指導案や経験を文章化して残すことも,自主的なものかノルマなのか,また公開されるのか学内で閉じたものなのかはさておき,日常なされているわけです.
私自身は「何千ページ」も読むのは,そこからベストな指導法を発見するためではなく,その分野における指導法の輪郭を知るためであるべきだと,考えます.その輪郭=スタンダードにそって指導するか,あえて外して指導してみるかは,先生の自由そして責任となります.

平成23年6月17日 3.)
私が考えを改めたのは、学生時代に小中学生を教える機会を持ったことによる。私は数ヶ月で学級崩壊を起こし、アルバイトをクビになった。これが悔しくて、教育学部の講義を聴講し、ひとつの科目では特別に単位もいただいた。大学図書館へ通い詰め、教育関連の本を山積みにして読んだ。体系的に身についたものは何もないが、学んだことの一端は、別の補習塾での再挑戦において、多少は活かされたと思う。

「小中学生を教える機会」が学校なのか塾なのか,読み取れなかったのですが,いずれであってもこの段落,そして平成23年6月17日の内容全体から,「指導は教員1人で行う」ことを暗黙の仮定としているように思われます.違っていたら,すみませんが補足をお願いします.
大学教育はもちろん,小中学生向けの教育においても,それを前提としてはいけないと私は考えます.まずは指導を受け,理解し,よりレベルの高い問題に取り組んでいこうとする,児童生徒の存在---教師側からすると,児童生徒の理解---が不可欠です.そして,その子らに期待を寄せる保護者もいますし,情報交換・切磋琢磨する教員間のネットワークもあるわけです.遠山啓でも田中博史でも,本を通して先人の知恵に触れることだって,「1人じゃない」と言えます.

平成23年6月17日 5.)
しかしその思いは、大抵つまらない授業によって裏切られた。とくに算数だ。毎度毎度、教師の誘導に「おつきあい」して、教師の望む式を書く。その繰り返し。年度が替わって担当教師が交代しても(注:私の出身校では小学校から中学校と同様の教科担任制だった)、授業の進め方は変わらなかった。苦行である。そのうち、悟りが開けたりしないか。だが、何もないまま、6年間は無情に過ぎ去った。

数学ガール』で先生が生徒に渡すような問題の,小学生向けがあれば面白そう,と感じました.
問題を出すのも,学校の先生に限らず,家の人か,塾その他でもよさそうです.

平成23年6月17日 追記2)

これまでに読まれた本のなかに,『田中博史の算数授業のつくり方』は入っていますか.もし読んだ経験があるなら,私はこの本から「子どもをよく観察すること」「教える者どうしのネットワーク」「水道方式への対応」を知ったのですが,徳保さんは何を得ましたか.

『田中博史の算数授業のつくり方 (プレミアム講座ライブ)』を書店で買って読みました。全体として有益な本だと思いますが、著者の主張を裏付ける客観的な証拠がゼロなので、「その指導はおかしいよ」と思う人をねじ伏せる力は乏しいですね。

まああの本を読んで,すんなりいくかどうかは,読み手次第です.私も,最初に当雑記で取り上げた際には,批判的な書き方をしました.

P64「船が5艘あります。1艘に4人乗ります」なら5×4でいい。小2算数において掛け算の基本形は「基準量のいくら分」だとしても、「5艘」が基準量となりえない理由がない。例えば5艘の船の持ち主が、船を改装して定員を何人にするか思案している状況を想起すれば、5艘を「基準量」、定員を「いくら分」と考えて最大輸送人数を求めるのが自然。P64の写真のように正確な図を描ける子が5×4と立式するなら、田中さんがそれを4×5と訂正するのは無益だと私は思う。
P67下図について、私なら「ケーキとプリンは2×3とも3×2とも考えられる」「ボールペンとドーナツは3×5とも5×3とも考えられる」と指導したい。箱の数、ケースの数、皿の数だって基準量とみなせるからです。「それでは底辺層の子が混乱する」というのが、ケーキの例では2×3だけを正解とする考え方。だからそれに対して私は、「本当にそうなんですか? 上位層の子の憎しみを買うに足る成果があったんですか?」という疑問を持っているわけです。

『「5艘」が基準量となりえない理由がない』と考えるとして,出題状況,それまでに学んだこと,そして5×4という立式からは,思考プロセスがまったく伝わりません.
そういった問題を出すのがいけないという主張なら,上に書いたように現状は存在するわけですから,取るべきアクションは違ってくるはずです.
船の改装を持ち出すのは,作為的であり,不自然です*6.またケーキほかの問題については,過去の誤記に目を閉ざす者はの最初の図で,有向辺ではなく自由に行き来できるという考えを採ると理解しました.
あと字面の話で申し訳ないのですが,平成23年6月17日という1日の中で,あるところでは「3個/皿」とper付きの単位を書き,また別のところで上のように「5艘」と書いているのは,読んでいて落ち着きません.ついでに『5艘を「基準量」』として5×4と書くと,「じゃあ答えは20艘ですか」というのは,ありがちなツッコミです*7

平成23年6月17日)
「現状、これがスタンダード」なんて話には、説得力を感じません。田中さんの本を買うついでに30冊ほどパラパラと眺めてみましたが、著者が自分の主張する指導法の正しさを科学的に証明しようと試みる本は皆無。教育の世界は科学的な手続きと無縁なんだな、と思いましたね。偶然いま口のうまい人が、個人の狭い体験に基づいて「これは素晴らしい」と思っている指導法が、教育の客観的な実績とは無関係に広がっていく。
教育学者って、いったい何をやっているのだろう。工学の世界では学者さんの数百年に及ぶ探求の蓄積のおかげで一般の技術者は迷いなく悪手を捨てることができて、良い手の中で妙手を探すことに集中できるというのに、教育の世界は口先の議論ばかり重ねて客観的事実の積み重ねが乏しいから、教育技術が本当に進歩しているのかどうか、サッパリわからない。

本や文献の読み方への違いは,すでに書いているので省略するとして,もう一つ,徳保さんと私との違いを確認しておくと,次の点を挙げるのがよさそうです.

「私はここでバツがつくことに,納得がいきません.ですが本人が理解していて,今後この種の出題があったときに,どう考えてどう答えにすればいいかを分かっていれば,それが現在の学校教育なのであり,かつてそうは学ばなかった,私としても,学びたいと思います.できればその前後関係といいますか,どのように学習していて,この学習がこれから,どのように役立つか,ご教示いただけませんか」でしょうか*4.
*4:これはずいぶんと慇懃だなあ.もうちょっとフランクにすると,「つけ間違い,ってことはないんですよね?」と聞いて,そうでないことを確認してから「家庭で,我が子(もちろん下の名前に変換)のテストの結果とかやっている宿題を見たりするときは,どんな風に考えたらいいんでしょうか?」と投げて,先生の指導方針を聞くことになるのかな.

トランプ配りは教育上有害

*1:定期的にリフレッシュしておかないと自分の認識が弱くなりそうなので,《BA型》に対してA×B=Pと,問題文に現れる順に取り出してかけ算にするのが,不正解になる理由を確認しておくと,「一つ分の大きさ」と「いくつ分」を問題文から読み取るのに失敗していると採点者が判断できるからです.トランプ配りや,繁分数的単位の使用は,問題文にない単位(を採点者に思い浮かばせること)を必要とし,単位を書かないA×B=Pではまず伝わりません.

*2:正答・誤答の詳細は,http://www.nier.go.jp/tyousakekka/gaiyou_shou/19shou_houkoku4_2.pdf p.175.

*3:「選択」に対しても,「当てはめ」「適用」「具体化」といった類義語が考えられます.

*4:他の例:トイレの攻防

*5:私自身,講義(Cプログラミング,情報セキュリティ)の組み立て方は,毎年試行錯誤しています.プログラミングは今年度後期から,教科書を使う比率を高くすることにしましたし.

*6:授業において,船の改装を持ち出し,一つ分の大きさを気づかせたり,また「一つの数をほかの数の積としてみること」を指導するのは,おそらく可能と思われます.《BA型》への適用は,それと別の話です.関連:もう少し,書きむしるか-8. お菓子でかけ算

*7:実のところ,このツッコミは好きではありません.言った側・聞いた(書いた)側とで,笑いをとれる保証がないから.