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等分除・包含除の逆としての乗法

(3)除法の逆としての乗法が用いられること
例えば「お菓子を4人で分けて1人分が3個の時、全部でお菓子は何個か」といった□÷4=3のような問題場面で、□を3×4のように乗法で解決する。
(『講座 算数授業の新展開〈3〉第3学年』, p.94)

2例目です.もちろん1例目は

さらに,除法の逆としての乗法の問題,例えば「ひもを4等分した一つ分を測ったら9cmあった。はじめのひもの長さは何cmか。」のような場合にも,乗法が用いられることを理解できるようにする。
(《算数解説》, p.107)

で,これまで折り込みチラシに書籍にWebに(またも訂正,というか撤回)や出題例から学ぶ,乗法の意味理解 コメント(takehikom, 2011/07/31 05:40)で言及しています.
この2つの問題の共通点は,「分けて」や「4等分」とあるので,わり算で式を立てるのかというと実際にはそうでないこと,かけ算で式を立てる際には,乗数(幾つ分,何倍)に当たる数が被乗数(一つ分の大きさ)よりも先に現れること(すなわち《BA型》であること),の2つ…と思いきや,もう一つあります.
除法としてはともに,等分除に基づいている点です.
お菓子の問題について,□を使った式は□÷4=3となりますが,数教協スタイルで単位を付けて書くと,□個÷4人=3個/人です.等分除です.
ひもの問題は,問題文にない単位「本」を入れて,□cm÷4本=9cm/本とも書けますが,倍概念をベースとして□cm÷4=9cmとする解釈も考えられます.
言ってみればいずれも,「等分除の逆としての乗法」の問題に見えるのです.
では,「包含除の逆としての乗法」の問題は,作ることができるのでしょうか.
お菓子の問題だと,「お菓子を1人に3個ずつ配っていくと,4人に配ったところでなくなった.全部でお菓子は何個か」と書けます.これは《AB型》なので,《BA型》にしてみるなら,「お菓子を1人に同じ数だけ配っていくと,4人に配ったところでなくなった.1人に配った数は3個である.全部でお菓子は何個か」とできますが,ずいぶんとひねくれた出題のように見えます.さらに言うと,いずれも問題文を見ると,わり算は考慮することなく,かけ算で式にできるように思えます.「同じ数だけ配る」タイプの出題は,2年生で学習している可能性が高いからです.
ひもの問題については,「ひもを9cmごとに切ったら,4本に分けることができ,あまりはなかった.はじめのひもの長さは何cmか」とし,ここでも《BA型》に変換して,「ひもを同じ長さで切っていくと,4本に分けることができ,あまりはなかった.1本の長さは9cmである.はじめのひもの長さは何cmか」は…実際の切り方を想像すると,現実離れしています*1.そしてこちらも,わり算の色が薄れてしまいます.

関連

□×4=20から,答えを見つける式の20÷4=□が導かれるならば,20÷4の式は「かけ算の逆のわり算」であり,□÷4=20から答えを見つける式の20×4=□が導かれるならば,この式は「わり算の逆のかけ算」となるのである。
(『算数教育指導用語辞典』, p.264)

除法は,乗法の逆算ともみられる。そこで,乗法と関連させて,被乗数,乗数のいずれを求める場合に当たっているかを明確にすることも大切である。包含除は3×□=12の□を求める場合であり,等分除は,□×3=12の□を求める場合である。(略)
(《算数解説》, p.110)

わり算の意味:わり算は,かけ算の逆算,すなわち□×b=aやb×□=aの□にあたる数を求めることとして定義され,これらの計算は,いずれもa÷b(ただし,b≠0)と表される。
わり算を適用する具体的な場面を考えてみると,「6個を同じ数ずつ二つに分ける」「6個を2個ずつ分ける」の二つが考えられる。
等分除:□×b=aの□にあたる数(被乗数)を求める場合が等分除で,上の例では,「6個を二つに分ける」場合である。名数式で表すと,6個÷2=3個 となる。
包含除:b×□=aの□にあたる数(乗数)を求める場合を包含除といい,上の例では「6個を2個ずつ分ける」場合である。名数式で表すと,6個÷2個=3 となる。
(『算数教育指導用語辞典』, p.205.引用にあたりレイアウトなどを変更した)

*1:切る側は,全体が36cmのひもを,9cmごとに切って4本に分けるということを知っていて,それを見る側すなわち全体の長さを求める側は,それらのことが分かっていない,という解釈を入れれば,一応は話になりそうです.えらい手間です.