- 作者: 志水 宏吉
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
- 発売日: 2010/11/25
- メディア: 単行本
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本文の中で一つ,面白かったのが,「東京と大阪の違い」です.
大阪に戻ってきて強く感じたのは、「学風」の違いであった。東京と大阪の違いといったら、言い過ぎかもしれない。あくまでも東京大学の教育学・社会学と大阪大学のそれらとの違いというべきかもしれない。ともかく、私が感じたのは、「空中戦の東京」と「地上戦の大阪」とでも呼ぶべき、対照的な学問風土であった。東京では、どれだけ多くの最新の知識をいかに軽やかに扱えるかが競われていたように思う。それに対して大阪では、特定の理論に対して、どれだけ的確なデータを足で集めることができるかが問われていたように感じられる。
それと関連して、研究者の態度についても、対照的なものがあると感じた。ある時私はそれを、「知ったかぶり」と「知らんふり」という言葉で表現したことがある。東京では、「知らない」ことは恥である。そのために、特に若い院生たちは「知ったかぶり」をして、ボロを出さないことに懸命になる。それに対して大阪では、特に一家を成した研究者は、「知らんふり」をすることがある。わかっていても、知らないふりをするのである。「へえー、よくご存知ですな」ととぼけて、相手の実力を値踏みするのである。大阪では、「知ったかぶり」をすることの方が恥という感覚すらあるように思われる。大きな違いである。
(pp.100-101)
「教育学・社会学」の,おそらく論文の取りまとめ方や研究者間のコミュニケーションの違いであり,「特に若い院生たちは」「特に一家を成した研究者は」といった限定がなされていること,またそもそも著者の印象・主観であって,論理的あるいは統計的に,これらのことが言えるというわけではない点には,注意しないといけません.
とはいえこの並べ方のおかげで,大阪式の「足で集める」「知らんふりをする」に惹かれてしまいました.前者は研究をする上で*1,後者は学生と*2対話をする上で,必要となるからです.