わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

大人の私たちの考えは,教育現場に届かない

したがって、こういうふうに、たし算・ひき算を、すでに(半)抽象的な数の計算として教わり、考えていた子どもが、「子供が5人います。お菓子を2個ずつ配ると、お菓子は全部で何個になりますか?」という問題を見たら、先ず、抽象的な5の「かたまり」が思い浮かび、お菓子が1個ずつなら、これをこのまま5個と考えればいいけれど、2個ずつだからもう1つ5の「かたまり」があって、5×2=10と考えても不思議ではない。というか、大人の私はこう考える。

小1のときから抽象的な数で考えている。 | メタメタの日

もし,「この考えを,学校現場でも認めてほしいな」という願望で書かれたのなら,これにきわめて似た要素を持つ,公開授業がなされています.(簡潔な)学習指導案が『誰もができる子どもに活用力をつけるワクワク授業づくり―第2回RISE授業実践セミナーの報告』のp.69で読めます.
ただしその中に「深入りすると心配を招く」と書いてありますし,このページの前後は,ご期待に沿う内容になっていないように思いますが.

「子どもが5人います。お菓子は2個あります。1人に1個ずつあげるにはお菓子は何個足りないでしょうか。」

この問題を,第1学年で考えさせるには,気になるところが2つあります.「ずつ」の使用と,「足りないでしょうか」と問うところです.
「ずつ」の使用については,小学校学習指導要領解説 算数編の第1学年で「ずつ」がどのように出現しているのかと見比べれば,「1人に1個ずつあげる」という使い方とそぐわないことが確認できます.
別の言い方をすると,「1人に1個ずつあげる」という言葉は,乗法の概念を先取りしたものであるように見えます.
「足りないでしょうか」について,上記解説のp.67に,「減法が用いられる場合」が3つ挙げられていますが,不足分を求める場合というのは,そこに入っていません.
なので,教科書によって,入っていたり入っていなかったりする可能性が考えられます.
手元の本を見ると,次のようになっていました.

  • 整数の計算 (リーディングス 新しい算数研究)』では,ある人の論説として減法の求められる場合を6つ挙げており,「不足」は4番目です.文章題には「40円持っている.60円の買い物をするには,あといくらお金があったらよいか」(p.23)とあります.
  • 算数教育指導用語辞典』では,ひき算が使われる場合として4項目を挙げており,「必要とする数量に不足な数量を求める」(p.202)は3番目です.そして「上の(1)から(4)までの中で,特に重点的に指導されるのは(1)と(2)である」となっています.
  • 新教育課程対応算数科の宿題ファックス教材集 低学年』では,「残りはいくつ(求残のひきざん)」と「どれだけおおい(求差・比較のひきざん)」はありますが,「どれだけたりない(不足)」のような教材はありませんでした.なお,助数詞の異なる2つの数のひき算が期待される出題として「おさらが7枚,コップが5個あります。かずのちがいはいくつですか」(p.30)があります.
  • 活用力・思考力・表現力を育てる!365日の算数学習指導案 1・2年編』では,p.58に教師の発問として「13枚−8人のままでは計算できないけれど,どう考えたら13−8と計算できますか」があります.問題文は「のりもののけんが13まいあります。8人のこどもに1まいずつわたすと,なんまいのこりますか。」であり,求残です.

結局のところ,「不足」の減法で,かつ異なる単位(助数詞)という問題・指導事例は,こちらの範囲内では見つかりませんでした.もし,すべてとまではいかなくても,多くの教科書で書かれているのなら,ご指摘いただけるとありがたいのですが,個人的には高度なものを2つ入れた出題に取り組む経験は,1年生の子どもたちにとって,その後の学習に役立ちにくいように思えます.

このタイプの問題を、小1の教科書は、子どもやお菓子を、半抽象的なブロックやおはじきなどに置き換えて教えています。つまり、子どもの人数もお菓子の個数も、抽象化された数にして、たし算やひき算の計算をして、答を書くときに単位を付けるということです。

誤解はされないと思いたいのですが,「計算をするときは単位を書かず,答を書くときに単位を付ける」として指導をする場合,のちに

  • 「おなじ おおきさの がようしが 8まい あります.1まいの がようしから 4まいの カードを つくります.ぜんぶで 何まいの カードを つくることが できますか」に対して,同じ単位だからと8+1+4=13もしくは8+4=12と書く子が出るかもしれない
  • 「1本136円で,280mL入りのジュースを4本買います。代金はいくらですか」に対して,136×280×4と立式して計算をがんばり,「いくらですか」だから152320円と解答する子がいるかもしれない

といった危険性についての配慮が必要であるように感じます.


発言小町の件,トピ主のみで見てみると,

  • トランプ配りは等分除として利用している模様
  • 「5人→5個」の変換を伴う,お嬢さんの思考過程を知ることができるのは,2011年12月15日 14:42の先のほう

あたりを知ることができました.
「トランプ配りで5×2とする子がいたじゃないか」については,小話集の「1. おやつの じかん」を挙げておきたいと思います.算数の学習という面では,「ひもを4等分した一つ分を測ったら9cmあった。はじめのひもの長さは何cmか」のたぐいの問題を解くときにどう考えるのかが,気になります.