わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

学び合い支えあう教室

寝ようかなと思ったときに,テレビに,算数の問題を解く児童らの姿というのがあって,結局,最後まで観ました.

クラスの様子のVTRと,スタジオでのトークが折り重なる構成でした.VTRの中で見かけた出題を,思い出して並べてみると,こんな感じです.

  • 同じ大きさの円を半分ずつずらして並べ,端から端までの長さを求める.
  • 円を半分ずつずらして描く三角形*1の周の長さを求める.
  • 円とは何か,説明文を作る.
  • 36×24の筆算
  • 72÷3

同一学級で2学年にわたる撮影に,驚かされます.筋書き通りには進められなかったでしょうね.とはいえ,2位数同士のかけ算で答えだけを聞いて書いた真(しん)くんを,先生が叱ったシーンのところは,子どもらのやりとりを聞いて,叱る心づもりをなさっていたのかなとも思います.
さてこの番組を観て,「学び合い」の良さは理解できました.では,「一斉授業は旧態依然で話にならない.問題解決学習も,分かる人しか答えられないからダメだ.これからは学び合いでなければ」となるのか…そんなわけにはいきません.
教師の力量も,児童たち・先生間の信頼関係も十分でないのに,「学び合い」授業を実施して,すんなりいくとは思えません.実際,途中で,長野の先生が教室に訪れ,授業の状況を録画しノートにとり,学校に持ち帰って討議し,簡単に実行できないことを先生の間で共有するというシーンもありました.
教師の培ってきた知識や経験は,手段が変わっても,活用されるべきだろうと感じました.まず,問題のストックは重要です.それをいつ子どもたちに見せるかというのも,大事な要素となります.児童一人ひとりへの理解,授業での目配りも,欠かせません.誰を当てる(黒板に書かせる)かは,従来型の授業の方法がきっと使えるのでしょう.


内容はなるほどなあなのですが,いくつか疑問も沸きました.
まずは,疑問というより懸念ですが,すべての授業でこの「学び合い」スタイルをやっていたら,学年で学習すべき内容が終わらないのかもしれません.
疑問文として書けるのは2つあって,まず,「なぜ算数なのか?」です.他の科目では,できないのでしょうか…これは,算数が「学び合い」に適した科目である点が大きそうです.すなわち,「一つの問題に一つの答え」を前提として,その答えに至るまで,様々なアイデア・考え・解き方が出せるのです.それらは必ずしも,答えに至るとは限りません.そして児童らの検証を通じて,淘汰あるいは整理をしていくわけです.
もう一つの疑問は,「この学習方法で本当に,未来を切り拓けるのか?」です.中学高校になれば,学習方法が劇的に変わり,古屋先生から学んだことは上書きされるのではないか,とも言えます.
連想するのは『分数ができない大学生―21世紀の日本が危ない』であり,2007年に調査しています.活路を見出すとすれば,これまた2008年に取り上げた本でしょうか.


古屋和久氏は算数を専門とする先生なのかな,と人物で探すと,http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/yamanashi/feature/kofu1198639630643_02/news/20080611-OYT8T00946.htmというのが見つかりました.内容は,社会科です.現時点では,算数専門説は否定せざるを得ません.
そういえばスタジオゲストの一人,佐藤学東京大学教授が,古屋氏が東大で内地留学をしていたと,番組中で明かしていました.
東大で教育でというと,市川伸一氏を思い浮かべます.再び調査…2009-02-08 - おもう・・歌の日記・・ - 『学び合い』の中に,市川氏の名前と「学び合い」が入っていましたが,TVの内容と違いました.そして本も見つかりました.

新版 学び合いで育つ未来への学力―中高一貫教育のチャレンジ―

新版 学び合いで育つ未来への学力―中高一貫教育のチャレンジ―

中等教育を対象としているようです.「第5章 双生児研究最前線」も,気になります.


この番組の内容を,自分の仕事(大学教育)の中で取り入れるなら,まずはゼミでしょうか.ぽんっとキーワードを与え,後輩に答えさせます.先輩に解説してもらいます.それでも納得がいかなければ書籍やWebの情報に当たりましょう.そのとき私は,知識の供給源というより,議論の交通整理役です*2
授業だと,どうでしょうか…これまで30分おきに「余談」としていたのを,小テストに切り替えますか.2分程度で,各学生に共通の1問を,解答してもらいます.直ちに隣の学生と交換し,丸*3だとかクエスチョンマークだとかをつけさせて返却.もうちょっと工夫が必要にも思えますが,こんなやり方で,学習者間のコミュニケーションを図ることはできないものでしょうか.

*1:正三角形であることは,断らなくても,子どもたちが発見します.

*2:事例を思い出しました:「遊び」を確認する

*3:良い解答には何重にも.あるいは花丸で.