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心の理論

ミス・コミュニケーション―なぜ生ずるか どう防ぐか

ミス・コミュニケーション―なぜ生ずるか どう防ぐか

まだ読み終えていませんが,「あ,これ!」という話が入っていました.

標準的な誤信念課題のひとつに「物の予期せぬ移動」課題というのがある。これには,子どもの目の前で,まず登場人物Aが現れ,箱にビー玉を入れてから退場し,続いて登場人物Bが現れそのビー玉を近くにあった籠に移して退場,そこへ再び登場人物Aが戻ってくるという決まったシナリオがある。Aがビー玉を取りに戻ってきたところで,実験者は子どもに次の質問をする。「Aはまずどこにビー玉を取りに行くと思う?」4歳から5歳の間に,幼児はこれに正しく答えられるようになるのだが,3歳児はほぼ例外なく現在ビー玉がある籠のほうに取りに行くと誤答する。ここ数年,3歳児がまちがった答えをしてしまう原因のひとつが,「知識の呪縛(curse of knowledge)」ではないかと考えられてきた。つまり,3歳児は自分が現在のビー玉のありかを知っているため,Aがその知識をもっていないということが理解できず,誤答してしまうという説明だ。
(p.47)

去年,別の本で,同じ問題を見たことがあります.
それにしても,大学の自分の授業で,余談としてこの実験をすると,籠と答えるのが何割か出てきそうで,こわいです*1.まあ,この1問でもって,籠と答えた人に,あなたも知識の呪縛にかかっているだとか,お前の頭は3歳児かとか自閉症ちゃうかとか,言うわけにはいきませんが.
ちなみに去年も,今回もそうなのですが,この話を読むと,すっと頭に入ってきません.その前後は,スムーズに読めます.他の本や論文,学生の原稿も,抵抗ありません.読み直すこともありますが,漫然と目を通していたので見直すか,特定の言葉の使われ方を確認するためです.なので,上に引用した課題に,引っかかりを覚えるのは,自分の理解の仕方に何かあるのでしょうか.
箱だの籠だの,2人の登場人物だのについては,同書p.46に「誤信念課題」の説明があります.「この課題は,アニメーションや人形劇を通して子どもにあるストーリーを見せて,そこに出てくる登場人物のひとりが信じていることを,子どもが理解できたかどうかを調べるものだ。」とのこと.
「心の理論」は,その章のはじめのところで書かれています.

今日,推論的な意図理解の研究法としてまず頭に浮かぶのは,「心の理論(theory of mind)」に代表される,他者の心理を理解するメカニズムの心理学的哲学的探求であろう。スペルベルとウィルソンが関連性理論を世に出して間もなく,心の理論の発達研究の最初の本格的な成果がまとまった形で発表された(略)。1980年代後半からの研究によって,どの国の子どもでも,健常児であれば4歳から5歳までの間に他者の信念を理解することができること,自閉症の子どもには同様の発達は見られないということが明らかにされた。(略)
(pp.42-43)

*1:文章題で与えたら,「たけかんむりの,この字,何て言うの」で戸惑う学生もいたりして.