わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

0.2×0.3から

ここ数日は,意識が高揚していました.
8月に,2年に一度の国際会議.顔を合わすのが楽しみです.そこで発表できるよう,原稿を書いていました.ここに1段落加えて,こっちに図を入れて,文献はこの辺から探したらいいな,などと算段しながら,英文を自分なりに磨き上げていきました.
締切は12日でしたが,当日朝,メールをチェックすると,主催者さんから,期限を4月5日に延期しましたと,連絡が入っていました.なんとも脱力です.まあ,まだまだ磨き上げていって,今回はフルペーパーでの採択を目指すとしましょう.
補足1:延期は毎度のことです.一応は期待しながらも,もし「延期しない」となっても何とか投稿できるよう,準備していました.8日は,1年近くぶりに,大学泊をしました.12日にも泊まる予定で,着替えなどを持って行っていましたが,延期の連絡を受け,家に「今日は帰る」の連絡をしました.
補足2:もう1件,例年5月の学会発表も,応募期限が12日なもんで,共著者の了承を得た上で申し込みました.こちらの原稿提出期限は4月20日だったかな.春休みは幸いにも,この2件の原稿執筆となります.そしてこの活動が,本論文への足がかり,次年度の卒業研究・修士研究のタネになるわけです….
帰宅していくつかブログを見て,またもげんなりしました.以下思うところを書きますが,全般に毒気味なのをご理解の上でご覧ください.

そして今度は、「0.2×0.3」という式になる文章題を作ってみようということになりました。これは、0.2こずつのものが0.3こ分ということだけれど、0.2こずつの0.3こ分ってなによ?

きのう娘と「0.2×0.3」について考えてみた | TETRA'S MATH

うーん,例えば,

  • 1mの重さが3kgの鉄の棒があります.この鉄の棒12mの重さは何kgでしょう.

というのをアレンジするのはどうでしょうか.

  • 10cmの重さが20gの針金があります.この針金30cmの重さは何gでしょう.

を経て,

  • 1mの重さが0.2kgの針金があります.この針金0.3mの重さは何kgでしょう.

という文章題が思い浮かびます.なお,「3kg・12m」の問題は,『小学校算数 これでバッチリ!計算指導 (指導のこつシリーズ)』p.125ほかにあり,3年生向けの出題(3年までの内容をすべて学んでいれば,解ける問題)とされています.
類題として,かける数が「0.なんとかリットル」になるような文章題で,いったん「なんとかデシリットル」に変換すれば整数のかけ算になるけれど,これからは小数のままで式で表し,計算できるようになりましょう,というのを読んだことがあります.

「かけ算の順序」問題について、「小数、分数」を含む計算、および「単位量あたりの大きさ、割合」という「小学校高学年」の学習内容を念頭においた議論が(膨大な議論のなかの)どこかにないか、いずれさがしたいです(きっとあるでしょう)。探しつつ、自分でも考えていきたいです。

きのう娘と「0.2×0.3」について考えてみた | TETRA'S MATH

「かけ算の順序」の論争で,乗法の意味の拡張や,割合の3用法まで意識のある人が少ないような.ちょっと見れば,「割り算のときにどちらを除数にしてもよいのはどうしてか」という状況ですから(関連:2012年2月15日).

一つ,連想しました.a×b=xという式の見方として,次の2種類があります.

  • スカラー倍:aのb倍がx
  • 比例関係:aは比例定数で,bからxに至るという関係に作用

スカラー倍は,aとxとの関係であり,bは無次元量です.一方,比例関係に基づく場合,bとxの単位(あるいはそれぞれの属する量の集合)が異なっており,その帳尻を合わせるためにaの値そして単位(次元;例えば次元解析による)が定まります.詳しくは,2011年11月2日(Vergnaudと銀林氏の「かけ算の意味」)に書いたVergnaudの文献をご覧ください.
ここからは私見ですが,bとxのあいだに比例関係があるけれども,どちらも単位が同じ(同一の量の集合の要素である)とき,a×b=xだけでなく,スカラー倍に基づきb×a=xと表すこともできます.これが,「どちらでもいい」とできる事例の一つです.言い換えると,この考え方により「どちらでもいい」とするには,比例を学習してからとなります.

補足4:いくつか読ませていただきました.「針金」も「比例」も検討済みでしたか,すみませんでした.あと思いつくのは「形式不易の原理」(0.2×3が計算できるようになったときに,3×0.2や0.2×0.3も同様に計算していいのか)あたりです.お子さんとの対話を通じて,成功を祈ることにします.

あ、去年、めずらしく1枚だけ請求書を書きましたっけ。そういえば、数量が左、単価が右でした。がしかし、そこに記号「×」はないので、表の欄の左右関係ではなく、実際に記号「×」が使われている伝票の画像がみたくて「数量×単価」で検索してみたのですが・・・↓

http://math.artet.net/?eid=1421750

私は,科学研究費補助金(科研)の申請書を見直して,「お?」と思いました.

ここから,かけ算の順序に意味がないと主張する人々にとっては,「左が一つ分の大きさ,右がその何倍という式の立て方は,大人の世界では通用しないんだよ」と言いたくなるでしょう.片や,かけ算の順序に意味を持たせるべきと主張する人々にとっては,「かけ算の順序が必要なまさにその例になっているじゃないか」となります.
科研申請に限定すると,こう指示されているのだから,「(数量×単価)」で表記しないといけません.計算機クラスタを作ろうとして,500千円のを16個購入したいのなら,「(16×500)」と書く必要があり,逆に「(500×16)」と記せば,16千円のが500個という,単価も数量も中途半端な数字を意味します.

科研申請の乗算

「こう指示されているのだから」は,プログラミングの話になりますが2012年2月19日(calloc)の補足その3も同様です.

こっちはこっちで、何をそんなに必死にかけ算の順序を教え込もうとしているのだろう??と首を傾げました。学校の先生ってものすごく忙しいと思うのですが、タコ2本足の「花まる先生」の実践例などを見てみても、こと授業に関しては「学校の先生ってヒマなの!?」と思ってみたり。

http://math.artet.net/?eid=1421750

「かけ算の順序」という言葉で私が危惧していることについては,つい先日(リリースは10日),文章にしました.
タコ2本足の件は,先行事例があります.2011年12月15日(「2×8ならタコ2本足」を振り返る)の終わりのところです.その本は,2年のかけ算指導の流れ,言わば「線」を見せてくれます.そして,いろいろな本や文献を読み,自分でも問題を作っていったりしていると,小学校の教育から,「面」や「空間」に相当するものも,イメージできてきました*1.それに対し,ある種の出題に噛みついて「かけ算の順序」を論じているのは,これまで見てきた限り大部分が「点」の議論です.

(略)そしてもう1つは、何度も書いているように私は系統学習に疑問をもっているのですが、「かけ算の順序」問題に関わろうとすると、ひとまず系統学習は(ある程度)よくできている(うまくやっている)ことを示すところから始めなければならず、その作業に時間をかけることに、「なんだかなーー」と自分で思ってしまうからなのでした。

http://math.artet.net/?eid=1421750

学習の仕方として「スパイラル」が現在,取り入れられていますが,これについて,ご意見をお聞かせください.(当雑記はコメントを凍結していますが,ブログはアンテナに入れておりますので,何か書かれましたら1日以内にアクセスしています.)
関連:

テストの問題が,文章で「横3cm,たて5cmの長方形の面積を求めよ」と書いてあったら,どうなるのか。

マニュアル先生の「治療」法 | メタメタの日

本文全体に渡って脱力でしたが,上の文だけは理解できました.話は簡単です.そういう出題の実例を,提示してください.
補足5:99% | メタメタの日の面積出題例を興味深く拝読しました.感謝します.長方形の面積の立式において,かけられる数・かける数の区別を意識した評価や指導(「横3cm,たて5cmの長方形の面積を求めよ」に3×5と書いたらバツとする事例*2)は見つかっていない,と理解しました.
補足6:長方形と平行四辺形の面積の公式のうち,先月,文献紹介をした件についてはここで詳しく書きませんが,それと別に,「長方形の面積の公式の導出」と「平行四辺形の面積の公式の導出」との間で(小学校教育では)違いがある点についても,無視するわけにいかないと考えます.
斜めに配置した長方形の面積については,2012年1月16日(ななめ)で取り上げました.後に,この種の問題を,立ち読みした本(書名などは失念)で見かけました.
なお,問題例を提示した人が,それがどういう状況で出題しているのかをよく検討していないと読める話を,ジェットコースター問題にて指摘していますので,妥当性チェックはよろしくお願いします.
記事後半の内容は,あなたは《積指向》に賛同なのですね,でも小学校の教育は《倍指向》です,で終わりです.《倍指向》の学校教育上の課題は,2011年11月15日(「倍」と「積」から学んだこと・10. 《倍指向》と《積指向》には,起源,または数学的な裏付けがあるのでしょうか?)で整理しています.

1つ分の数(or縦)×いくつ分(or横)=5×3=3×5=いくつ分(or横)×1つ分の数(or縦)

http://ameblo.jp/metameta7/entry-11188652088.html#cbox

「1つ分の数」と「いくつ分」に,いわゆる単位(助数詞)を含めるなら,それらを含む量の間の交換法則を証明する必要があります.
単位(助数詞)は含まず,純粋な数の関係であるというのなら,「1つ分の数=5」と「いくつ分=3」の場合において,その等式は成立するのは了解です.それで,「1つ分の数」と「いくつ分」があらゆる数(小学校の範囲ということで,0以上の有理数に限定するとして)をとるものとして,「1つ分の数×いくつ分=いくつ分×1つ分の数」という関係式を(帰納的に)導き,それをどのような状況に適用したいのでしょうか.メリットばかりでしょうか*3.デメリットはないでしょうか.デメリットをどのように克服するのでしょうか.

社会生活では,かけ算は,(1つ分の数×いくつ分)の形でも,(いくつ分×1つ分の数)の形でも使う。(英語圏では後者の方がスタンダードらしい。)
(略)
 交換法則云々はさておき,社会で使われているかけ算を学校教育では採用していません!とシレっと言うのだ。おお,ガラパゴスの居直り!!
(略)
 社会で使われているかけ算を,学校教育において認めさせようとするならば,その採用が適切であることを,学校教育関係者に働きかけていく必要があるでしょう!!って?? 学校が社会の上に君臨しているのか?! 社会に出てから困らないように,社会で使われていることを教えるのが義務教育ではないのか?

では,(いくつ分×1つ分の数)をいつ教えるか。 | メタメタの日

「社会」について,2つ,関心があります.

  • 「(いくつ分×1つ分の数)」を使う実例をご提示いただけますか.私は「数量×単価」は知っていますし,それ以外でも,書式に指示があれば従うようにしていますが,ご説によると,社会で当たり前のようですので,多種多様な例をお願いします*4
  • 貴書にある「「1あたり量×いくら分」でも「いくら分×1あたり量」でもどっちでもいい」に基づくと,相手が「1あたり量×いくら分」(またはその逆)を期待しているときに自分が「いくら分×1あたり量」(同)の形で書いたときにも,誤解なくコミュニケーションができないと困るのですが,このことがうまくいっている事例を,お示しいただけませんでしょうか.

これらがない現状では,書かれている内容は「俺定義」「自分勝手」と見なさざるを得ません.
補足3:ある状況では「1つ分の数×いくつ分」で一貫しており,また別の状況では「いくつ分×1つ分の数」で一貫している,というのが,落としどころかなと思います.学校教育も,一貫して数や式を取り扱うことが期待されますので,「1つ分の数×いくつ分」を基本方針としているところに,勝手に「いくつ分×1つ分の数」を持ち込まないでほしいなという思いがあります.
補足7:99% | メタメタの日と読み比べると,論点になりそうなのは(Vergnaudが書いたものをアレンジして)「15円×4個=60円であり15円×4個=60個(4個×15円=60個)ではないのはなぜか」かなと思います.なお「というのがこの論文について触れる方々の意見になっていることも先刻ご承知でしょうが」は,どうか資料の読み方からやり直してください.
なお,

  • よく「交換法則を学習すれば(学習しなくてもそれを根拠として),かけ算の順序はどちらでもよい」という主張を目にします(引用者注:脚注を省略).これについては,「小学校算数科における演算の意味と計算手続きに関する」(p.73)として,演算の意味すなわち「立式」と計算手続きすなわち「計算」に分け,乗法の交換法則は計算手続きの中で言及しています(p.79).
2011年10月16日(日本数学教育学会による,乗法の意味づけ)

と書いたように,算数では交換法則がどのような状況で利用されているのかについても,注意したいものです.

採択数第1位の東京書籍版では,4の段の時に,分離量(おはじきなど)を矩形に並べたら,どちらを(1つ分の数),(いくつ分)と見てもよいことを教わる。

では,(いくつ分×1つ分の数)をいつ教えるか。 | メタメタの日

その図は,「矩形に並べた状況では,どちらを(1つ分の数),(いくつ分)と見てもよい」です.
そうでない状況では,「(1つ分の数)」と「(いくつ分)」のペア(順序対)が一意に定まることがある,というのは維持されます.

だから,途中で,1つ分の数が「かけられる数」,いくつ分が「かける数」と教え,まとめで,「かけられる数とかける数を入れかえても答えは同じになります」ということを教えるのだから,このまとめのときに,きちんと,「1つ分の数といくつ分を入れかえても答えは同じになります。(1つ分の数×いくつ分=いくつ分×1つ分の数)ですから,かけ算の式を,(いくつ分×1つ分の数)と書いてもよいのです」と教えれば良いのではないか。

では,(いくつ分×1つ分の数)をいつ教えるか。 | メタメタの日

現在の学校教育では,「1つ分の数×いくつ分=いくつ分×1つ分の数」という言葉の式を見かけないような.それを加えろというわけですから,まあ教育者・学習者が納得できるモノ---学習指導案なり問題集なり---がないと,論評のしようがないですね.賛同者を見つけて,モノづくり頑張ってください.
ちなみに,乗法において2つの数を区別せず扱うことの課題は,中国の教科書そして授業を見た人が(今年になって貴ブログでも引用されていましたが)「量の扱いではやはり不具合があって」と書いていますので,この点への対策も不可欠です.

また,比例式を4マスにするということなら,日本ではすでに江戸末期の文政13年(1830年)に刊行されたベストセラー『算法新書』(千葉胤秀編・長谷川寛閲)の「比例式之図」にあります。
http://dbr.library.tohoku.ac.jp/infolib/user_contents/wasan/l/n002/01/n002010039l.png
そして,比例式の4数のうち,既知の3数から未知の1数を求める演算なら,中世ヨーロッパの商業算術の3数法や,近世中国や日本の「異乗同除法」にあり,『算法新書』の「比例式之図」は,この「異乗同除法」を解説するものでした。
また,既知の3数のうち1数を「1」とすれば,かけ算やわり算の計算になることは,Sparrowhawk氏や積分定数さんも指摘済みです。
このような周辺事情(私の知らない事情も含めて)を,田中博史さんは多分御存じなかったでしょうし,その必要もないのですが,「4マス関係表」を小数のかけ算・わり算の立式に応用したわけです。
(強調は引用者.以下同じ)

数教協「かけわり図」vs筑波大附属小「4マス関係表」(その2) | メタメタの日

に対して,田中博史氏は

この4マス関係表は2007年の本誌連載や,同年の明治図書の『基幹学力の授業 国語&算数』の連載等を通して,提案してきたものである。発想の源が,中世ヨーロッパの「三数法」であることは,2008年4月号の『基幹学力の授業』誌でも紹介してある
(『算数授業研究 VOL.80』p.66)

と記しているのですが,この点へのご見解も期待しております.
(最終更新日時:Sat Mar 17 10:35:27 2012ごろ.補足5〜7を追加しました)

*1:確固たるものではなく,学習指導要領・教科書の改訂や,新たな手法などを受け入れる(ときには批判も)こともできる世界となっています.

*2:1クラス,1学年(学校)の範囲では,あるのだろうなとも思いますが,関心があるのは,1学校の範囲を超えた,学力テストでのこの種の出題と解答類型です.2年で学習する乗法の意味(『小学校算数 これでバッチリ!計算指導 (指導のこつシリーズ)』ほかで言及)に相当するものです.上の学年に目を向けるなら,2011年11月19日に取り上げたうち中学のほうが,関係しそうです.今,解説資料を読み直してみると,「12×3」が◎の正答,「3×12」「12+12+12」が○の正答のところ,「9×4」も解答類型に見られ,それは誤答となっています.

*3:もし,低学年のうちに不条理なバツをつけられるのを阻止できるというのであれば,その方針で教育を進めていて,子どもの学年が上がり,学校のテストや日常生活において,これにはこの演算と判断したり,式や考えを言葉で説明したりする能力に,はたして寄与するのでしょうか.1円で61万株を売る誤発注は,起こらなくなるのでしょうか.

*4:ここ数日,例えば研究室旅行の行き帰りやホテル内でも,一つ分の大きさが「×」の右に来るかけ算を見つけたら写真に残そうと,行動していたのですが,左に位置するものは数例あったものの,右は見当たらなかったのでした.