- 作者: 芳沢光雄
- 出版社/メーカー: 丸善出版
- 発売日: 2012/04/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ある会社のワンマン社長が、次のような採用計画を人事担当者に命じた。「女子は男子の2倍より20人少なく採用し、男女合計で200名採用せよ。」
すると、社長の命令には未だかつて一度も異議を唱えたことのなかった担当者が、困った顔をして「社長、お言葉ですが、それはできません」と答えた。そして、担当者は次のように説明したのである。
「男子の人数を△とすると、女子の採用人数は2×△−20なので、2×△−20+△=200、すなわち3×△=220という式が導かれます。すると、△は220を3で割った商となり、△は整数にならないので、矛盾となります。それゆえ、採用計画は見直さなければならないと考えました。」
(pp.33-34)
何かというと,「3 背理法(帰謬法)を用いる」という章の中の,小話の一つです.前のページには,こんなふうにも書いてあります.
実際問題として、背理法は日常生活のさまざまな場面で使われていているのであり、それを理解できるいくつかの小話を3つ述べ、その後で小話ではない形の例を2つ挙げよう。それらはいずれも、ものの個数や人数は整数となる「整数条件」と呼ばれる性質を用いている。
(p.32)
そして,採用計画の件は小話の2番目です.*1
ネタにマジレスの感もありますが,整数にならないので計画を見直せというのは,何だかなあの気分です.
とりあえず方程式を解きます.男子の人数は△=220/3=73.333…,女子の人数は2×△−20=380/3=126.666…となります.
その上で現実的には,あるいは工学的には,微調整をして解の候補を作り,理想解からどれだけ離れているか,すなわち誤差を算出したいところです.
解の候補は,何通りか考えられます.
- 男子の人数を切り捨てて73人とします.女子の人数は2×73−20=146人,合計は73+146=199人で,200人には1人足りません.
- 男子の人数を切り捨てて73人とします.女子の人数は200−73=127人とすれば,合計は帳尻があります.しかしながら女子は,
- 男子の2.014倍*2より20人少ない人数となります.
- 男子の2倍よりも19人少ない人数となります.
- 男子の人数を切り上げて74人とします.女子の人数は2×74−20=148人,合計は74+148=202人で,200人を2人超過します.
- 男子の人数を切り上げて74人とします.女子の人数は200−74=126人とすれば,合計は帳尻があります.しかしながら女子は,
- 男子の1.973倍*3より20人少ない人数となります.
- 男子の2倍よりも18人少ない人数となります.
切り上げ・切り捨てだけでなく,プラスマイナス何人まで許すだとか,きっかり2倍ではなくてどんな範囲までならOKにする,なんてことを,社長さんと人事担当者さんとの間で取り決れば,採用計画に柔軟性を持たせる*4ことができそうなのですが.
あっそうそう,これから200名の採用をする会社で,「人事部長」ではなく「人事担当者」がワンマン社長に直談判できるというのも,なかなかすごいシチュエーションに思えました.