- http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120626/k10013104121000.html
- http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120625-OYT1T01073.htm
- 教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策 | リセマム
えっと…
「教育問題」とりわけ小中高の教育で,何か議論になりそうなことを見つけたときに,開けて読み直す本があります.
- 作者: 志水 宏吉
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
- 発売日: 2010/11/25
- メディア: 単行本
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今日の日本では、学校の評判はすこぶる悪い。教師たちは、四面楚歌の状況に置かれているといってよい。いじめ・不登校・学級崩壊・低学力と、学校・教師が悪玉視される教育問題が目白押しである。マスメディアはバッシングの旗振り役となり、地域住民や保護者がクレーマーとして異議を申し立てる。政治家は教育問題を票集めの材料としようとし、生徒たちは学校文化よりも消費文化を自らの後ろ盾にしようとする。そして、先にもふれたように、教師たちを守るべき立場にある教育学者たちは、しり込みをして息をひそめている。かたや社会学者のなかには、教育現場の「荒廃」ぶりを他人事のように無責任に説いて聞かせる者もいる。
(p.38)
p.41では,著者の思考実験として,「学校のどこに問題があるか」の回答に,「ちゃんと子どもをしつけていない」「安心して学べる学校環境をちゃんとつくってほしい」「学校の勉強をやりがいのあるものにしてほしい」を並べています.どの声にも真摯に耳を傾けなければならない,それぞれに一理ある,としつつも著者の立場すなわち教育社会学の問題として,「学校は特定の人々のみを利する」(p.42)を挙げ,欧米へと視点を移しています.
視点の移動はその本のストーリー展開の都合であり,著者は決して,研究室で書物(論文)を読みふけりそれをもとに書物(論文)を書く人,ではありません.それどころか,「フィールドワーク」「エスノグラフィー」に積極的に関わっています.象徴的なのは,次の箇所でしょうか.
私が学生だったころ、先生方や先輩たちから、しきりに「しっかりと勉強して、自分なりの分析枠組をもちなさい」といわれたものだ。この図*1でいうと、「アイディア/社会理論→分析枠組み→社会生活の表現」という上の系列を重視する見方である。それに対して、私は現在の指導学生たちに、「とりあえず現場に行って、自分なりの経験をすることを大切にしなさい」とよくいう。これは、「証拠/データ→イメージ→社会生活の表現」という下の系列を重視する見方といえよう。本当は両方のバランスがとれているのが望ましいのだろうが、なかなかそうはいかない。「頭でっかち」になるか、「現場派」になるかのどちらかが多い。
(pp.65-66.強調は引用者)
教員養成に6年というのもまた,ずっと大学で勉強・研究するのではなく,教育実習や,研究として学校に入り込む活動が増えるのかなと思っています.NHKニュースの文中には「長期間、学校現場に出向いて子どもとのコミュニケーションの取り方を学ばせるなど実践的な力をつけさせるべきとしています」とあります.
受け入れる学校や先生の負担が大きくなりますが,制度化すれば,何とかなるのかもしれません.医学部と(付属に限らない)病院との関係のように.
そうして学生のうちに学校と関わる中で,何をすればよく何をしてはいけないかを学び,教員として採用されたときは,そういった制度・習慣がないときの新採の先生よりも,スムーズに学校現場に溶け込めるようになればいいのですが.
関連:
*1:p.65の上2/3が「図2-1 社会研究のモデル」となっている.「アイディア/社会理論」「分析枠組み」「イメージ」「証拠/データ」「社会生活の表現」の箱があり,矢印で関連づけられている.