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「いじめた側にも人権」を持ち出したのは読売記者では?

大津市の市立中学2年男子生徒が自殺したことを巡って行われた全校アンケートで「(男子生徒が)自殺の練習をさせられていた」との回答を市教委が公表しなかった問題で、市教委が加害者とされる同級生らに対して直接、真偽を確認していなかったことがわかった。
(略)
その理由について、市教委は読売新聞に対し、「事実確認は可能な範囲でしたつもりだが、いじめた側にも人権があり、教育的配慮が必要と考えた。『自殺の練習』を問いただせば、当事者の生徒や保護者に『いじめを疑っているのか』と不信感を抱かれるかもしれない、との判断もあった」と説明。結局、事実がつかめなかったとして、非公表にしたという。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120705-OYT1T01621.htm

「いじめた側にも人権」を持ち出したのは,読売新聞側の記者ではないのでしょうか?
こんな感じで:

  • 電話(対面かも)で取材する.
  • やりとりの中で,市教委の回答者が「教育的配慮」を理由に挙げる.*1
  • 取材者が「いじめた側にも,人権があるということですか?」のような質問をする.
  • 市教委の回答者は,その質問の意味を十分に考える余裕がなく,YESの意味の回答をする(「はい」の明言でなくてもいい).
  • 取材終了後,記事が取りまとめられ,公開される.

このように考えるのは,2つの理由があります.まず,市教委の側から,「いじめた側にも人権がある」と(例えば記者会見の場で)表明するとは思えません.それと,Webでざっと検索をした限り,「いじめた側にも人権」が含まれているのは,読売とその配信ばかりなのです*2
とはいえ,もし上の通りだとして,市教委は,申し開きも訂正もしようがないようにも思います.どんな会話をしたか,記録していないし,もし記録していたとしても,公開するわけにいきません*3.一方,取材側(読売サイドの記者)は,高い確率で,録音を残しています.もちろん,取材源の秘匿を理由に,公表はされないものの,社内のみでの内容チェックは,当然なされているでしょう.
個人的には,いじめ問題の真相究明は当然ですが,それに加え,取材を受ける側の対策もなされていくのではと思います.今回の件に限りません.電話1本であっても,窓口を一元化し,安易な回答をしないようにして拙速を避ける,というポリシーです.「電話取材」で検索してみると,http://www.cocoknots.co.jp/PRFAQ/?p=19というのを見つけました.
その種の,取材を受ける側の対応を認めない,とにかく情報を出せ出せという世間・社会になっていく(いる)のであれば……記事の読み手が,記事作成のプロセスだとか,取材する側とされる側の持つ情報の非対称性*4について,思いをいたす人がすこしでも増えることを,望むものです.

*1:「教育的配慮」という言葉も,持ち出したのが記者側で,「(長い修飾語をつけて)配慮いたしました」「(間髪を入れず)教育的配慮ですか?」といったやりとりだったのかなと思っています.

*2:http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/bullying/で,テレビ朝日系・日本テレビ系のニュース記事にも,「人権」の文字は見当たりません.

*3:関連:上司のモヤモヤ〜未来を想起し,現在の行動を決める

*4:書面や録音などの「モノ」に限りません.例えば,取材する側には「意図」があり,される側は必ずしもそれを知り得えないという状態も,非対称と言っていいでしょう.