わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

HTHT

2冊の本を紹介します.

「板書見ながら」算数作文

まえがきではなく「発刊に寄せて」の中に,出版に当たっての問題意識が書かれていました.

子どもの学びはもっと複合的に,そして総合的に進行する。その意味で,教科を横断するような試みはもっとたくさん行われてよいと思う。新学習指導要領では探求的な活動を教科をまたいで行うことを奨励しているが,こうした改革の視点はもっと大切にされるべきだと私も考えていた。
新学習指導要領が本格実施され,言語活動の充実が叫ばれると,算数でも「話す」「書く」といった活動が大切にされるようになってきて,これはよい変容だと思っていたが,さっそく「これでは国語なのか算数なのかわからないではないか」という声も聞こえるようになってきた。ここにも縦割り行政のような日本の教科教育の固定的な感覚が見え隠れする。
(p.3)

そのあとは,これらを組み合わせていこうという話になっていきます.このページに「コラボ」という言葉が2度,出現しているのが象徴的です.
「言語活動」と「算数的活動」の関連,それと学校教育の内容は変容しながら発展していくべきだという点を,思い出しながら読んでいくことができました.
内容ですが,小学校算数のすべての対象ではなく,それどころか2〜3年で学習するかけ算の授業が多いように見えます.「21×3」に関する,児童の作文を2つ,取り出します.

今日の算数の時間に,21×3の計算の仕方を考えました。それで最初に,21×3でとける問題をつくってみました。ぼくはつくってもう1回読んだら,3×21になってしまっていたので,すぐ書き直しました。
次に,21×3の仕方を考えました。(以下略)
(p.6)

          3年 清水莉々佳
算数作文
 今日の算数は、21×3の計算のしかたを考えました。はじめは、21×3のお話のもんだいを作りました。私は、『花が3たばあります。1たばは21本です。花は何本あるでしょうか。』と言うもんだいをつくりました。では、21×3の答えはいくつ? (以下略)
(p.13)

式を与え,それに合う問題(文章題)を作らせるのは,『さんすうの授業 第1階梯 小学校1・2・3年生』にも見られます.そこでは2年生を対象とし,かけ算の意味が定着したかを確認する,総括的評価もしくは外在的評価として実施されていましたが,「21×3」の話は,3年生が行い,式から問題を作らせるのが,かけ算の意味を再確認する,診断的評価に近い点には,注意が必要でしょう(関連:評価と設計).

たすひくかけるわる

算数の探険1 たす ひく かける わる(加減乗除)

算数の探険1 たす ひく かける わる(加減乗除)

いまどきなかなかない,ハードカバーの本です.寝そべって読んでいるときに,うえの子が「なにしてるの?」と来たので「パパも,おべんきょうしてんねん.絵本みたいやけど,ちゃうねんで.お前も,そうやなあ,小学校に入ったあたりで,これ読んで一緒に勉強しよか」と答えたところ,部屋を出て行きました.
購入した本は「2011年6月25日 初版第1刷発行」となっていますが,ついでに奥付を見ると,「本シリーズ「算数の探検」は,ほるぷ出版より1973年に刊行された『算数の探検』(全10巻)を復刊したものです」とあります.
こちらは,かけ算の割合が少なめで,ページ数として概算しても,4分の1を占めていないように思います.また,いわゆるパー書きの単位表記もなく,量や倍概念を意識しない場合には,式に単位が付けられていません.
関心を持った文章題を3つ,取り出します.

問題 おいしいチョコレートが入った箱が3つある。重さをはかったら,どれも327グラム。さて3つで何グラムか?
(p.60)

問題 1周,164メートルの運動場を4回まわった。何メートル走ったことになるだろうか?
(p.61)

ピカット そのいちご売ってよ。いくらなの。
いちご売り うまくいちごの数をかけざんで,けいさんしたら,ただであげるわ。あなたたちにだけ,とくべつにね。
3人は,びっくりして顔を見合わせた。
いちご売り この2ふくろのふくろにそれぞれ,3つずつ,いちごのはこがはいっているの。いちごのはこには,8こずつのいちご,さあ,いちごは,みんなでいくつかしら?
(p.62)

式は,チョコレートの問題では「327×3」の筆算,運動場の問題では「164×4」の筆算が見られます.すなわち3位数に1位数をかけるかけ算です*1.3桁×1桁で,走る長さを求める問題は,昨年『算数授業研究 第77号』でも見かけています.
いちご売りについては,「(8×3)×2」と「8×(3×2)」の式が出てきて,後者のほうが簡単に計算できるとしています.こちらは,乗法の結合法則ですね.
チョコレートの問題と,いちご売りの問題では,出題に出現する数をその順にかけているわけではない点に,驚きを覚えました.
遠山啓が著した1973年の本も,「かけ算には順序がある」と言っているようなものです.
なお,乗法の交換法則はp.135で取り上げられています.3人ずつ手をつないで4列という人の並びが,4人ずつ手をつなぐことにして*23行になるという形で,3×4=4×3を図示しています.ページ右上にははかせのセリフとして「3×4は4×3」があります.

本日のタイトルの意味

先日,ある食事会に先だって,書店で2冊の本を同時購入しました.
その食事会で,ある方が「遠山啓(とおやま ひらく)」の名前を出されました.
イニシャルは(first name, family nameの順で),H.T.と書けます.「田中博史(たなか ひろし)」もH.T.です.
面白い共通点ですが,内容は,あまり重なっていません.まあ,「かけ算の順序」に着目してみたら,共通点を指摘できるかなと思い,本日,書いていった次第です.

*1:筆算をしたときのくりあがりの回数が違うことを重視した出題となっています.

*2:人は,位置を変えず,向きを変えます.