わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

乗数が内包量

かける数が1あたりでは,いわゆる1あたり量(内包量)が乗数に来るような乗法について,1980年代に書かれたVergnaudの解説*1を根拠としていました.
1970年代の,遠山・銀林の著書にないかな…と大学図書館に立ち寄って,探してみると,あっさり見つかりました.

こうすれば算数数学がわかる―人間行動からみた数学教育

こうすれば算数数学がわかる―人間行動からみた数学教育

この中の「第9講 式にも単位がある」(pp.128-144)です.話としては中学の数学で,ある文章題から連立方程式を立てています.式の一つ,35x+50y=4450の両辺に14をかけて490x+700y=62300を得るとき,この「14をかける」というのが実は「14g/円をかけている」ことなのだと指摘しています.そしてp.142には,「乗数14g/円の意味」と題する節も設けられています.
その章(講)の最後のところに,《参考》として,『量の世界―構造主義的分析 (1975年) (教育文庫〈8〉)』の145ページを挙げています.そこはかつて読んだはず…と見直して,違いに気づきました.
銀林の『量の世界』も,Vergnaudも,「量の次元を変える関数」(『こうすれば算数数学がわかる』p.142)を指摘しているという点では同じです.
何が違うのかというと,結局のところ,表記です.『量の世界』p.146に見られるのは,次のとおりで:


Vergnaudのほうは,こう書かれています(p.130):

「密度ρ」「発熱量m」「速度v」の左に「×」がついているか,Vergnaudの書いた関係の中で「×a」が「a×」になっているかしていたら,自分の「かける数が1あたり」に対する認識も,また異なっていたわけなのですが.

*1:Vergnaud, G.: Multiplicative Structures, Acquisition of mathematics concepts and processes, Academic Press, pp.127-174 (1983). 英語文献の取得や読解に不安のある方は,『算数・数学科重要用語300の基礎知識』のp.187をご覧ください.