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数学図鑑

親子で学ぶ数学図鑑:基礎からわかるビジュアルガイド

親子で学ぶ数学図鑑:基礎からわかるビジュアルガイド

夏に書店で見かけました.かけ算について面白いことが書かれていたけれど,重たいので購入するわけにいかず,先月末に手に入れました.
「ビジュアルガイド」ですので,図がふんだんに使用されています.「かけ算の順序」は,次のように解説されています(p.19).

二つの考え方
かけ算を式に書くときの数の順序はあまり重要ではありません。答えは同じです。
同じかけ算の二通りの考え方を示してみましょう。

かけ算とはどんな計算なのか,というと,その左のp.18にあります.ページの大半を,「1列に13人」で「9列」並んだ人の絵が占めているのですが,文字をいくつか,取り出しておきます.

かけ算は,ある数をある個数だけ積み重ねるイメージです.かけ算の答えは積と呼ばれます.

かけ算とは?
かけられる数をかける数の個数分だけたし合わせること,と説明できます.ここに並んでいる人数の合計は,一列に並んでいる人数を列の数の分だけ足し合わせたものですが,一列の人数に列の数をかければ得られます.

13×9=13+13+13+13+13+13+13+13+13=117
(左辺に矢印で「13を9個集める計算」,右辺に矢印で「13と9の積は117」)

累加で意味づけるのではなく,それを説明の手段としていること,またp.19の記述から,《積指向》と思って読めばよさそうです.
他に,「かけ算の順序」に注意して読んで,見かけたことと言えば,筆算(p.21)でかけられる数とかける数が逆転していないこと(関連:筆算の順序),直方体の体積の式に「たて×横×高さ」(p.28)も「横×たて×高さ」(p.147)も見られること,あたりです.
「順序」から離れ,次にへえっと思ったのは,速さ・時間・距離…「はじき」の図です(p.29).

日本では,円形が最もよく使われていると思うのですが,こちらでは「トライアングル」です.なお,これの下には「密度の公式トライアングル」として,D,S,TがそれぞれM,D,Vに置き換わった,色違いの三角形が示されています.面積の公式トライアングルというのも,p.169にあります.これについては,「この計算ははじきの法則として、いかにも速度の計算だけのように広まったが、実は分数の形で与えられる全ての問題に共通して使える解法だ」(はじきの法則)が正鵠を得ているように感じます.
雑多に,読んで気になった箇所を挙げておきます.わり算は「等分」先行です.「4個÷2人=2個/人」と,パー書きの単位を使った式も見られます(p.22).2つの関係で何倍や何分の1を示すときは「×2」「÷2」と書かれていますが,「×1\frac{1}{2}」という分数表記もありました(p.50).交換法則・結合法則は,数ではなく代数のパートで言及があります.乗法の結合法則は「a×(b×c)=b×(a×c)=c×(a×b)」(p.161)で,知っている(というか代数系で学んだ)のとは異なる式です.最後に,かけ算の表は末尾のp.233にあり,かけられる数・かける数とも1から12までです.
この本に書かれていないこととして,分配法則,分解式・総合式と乗除先行*1,乗法の意味の拡張(7を2.4個集める,としていいのか?)があるようにも思います.
それはそれとして,算数の面白さを,ビジュアルに楽しめる良本だと思います.
ところでこの本は,2010に『Help Your Kids With Maths』と題して出版された本の訳書になります.奥付の著者欄によると,著者キャロル・ヴォーダマンは英国の方とのこと.「子供や親たちに,算数の教育普及活動をしている」ともあるので,学校教育に携わっている人ではなさそうです.親野智可等氏を連想しました.半年前に,親野智可等メソッドを書いたのでした.
そしてthemathsfactor.comとあったので,アクセスしてみました.有料コンテンツですが,「Times Tables School」でお試しプレイができました.9の段(The 9 Times Table)で,「なんとか×9」の答えを打ち込むのを20回.「12×9」なんてのも出てきました.
本に戻って…読み比べたり,昔はどうだあそこではこうだと引用をしたりする者としては,「日本の教育現場や習慣に合わせて若干の変更を加えた部分があります」(この本を手に取っていただいた方に)のため,これがイギリス式の算数をあらわしたものではないのが,ちょっと残念です.英語版を買うことにします.
(最終更新日時:Sun Oct 14 06:08:31 2012ごろ)

*1:p.165下部の「代入計算」に,まどろっこしい手順を踏んでいるなあと感じました.