「かけ算の意味」を論じる際によく叩かれる「累加*1」について,それを擁護する立場に立ってみて,意義を洗い出してみました.
- 累加による式と比べることで,かけ算の式の良さを理解できる.
- 大きな数になっても,利用できる.
- かけられる数が小数や分数でも,利用できる.*2
- 累加の限界*3,そして「乗法の意味の拡張」の必要性を知ることができる.
- 先人の本や論文などから,その理路を学ぶことができる.
これまで書いたこと:ルールを決めればこっちのもの(乗法の導入の解説)/1968年の「被乗数×乗数」/- 資料が主,判断が従(1. 乗数効果)/乗法の意味の拡張/0にかける,0をかける/(a+1)×b=a×b+b/計算手段から切り離して,かけ算を意味づける
「累加」を理解する入口として挙げたいのは,『新式算術講義 (ちくま学芸文庫)』と「乗法の意味についての論争と問題点についての考察」の2つで,さらにいくつかとなると,『算数教育指導用語辞典』『量と数の理論 (1978年)』「乗法の意味の指導について」もおすすめです.最新のものでは,『算数授業研究 VOL.84』の「田中博史の提案」(pp.8-11)の中に3度,「塁加」という表記が見られます.
(リリース:Sat Nov 3 05:22:03 2012ごろ)
*1:「同数累加」とも書かれますが,小学校学習指導要領解説 算数編では「累加」となっていますし,「累乗」に対して「同数累乗」とする人は見かけませんので,「累加」と書くようにしています.
*2:算数から離れますが,「名称×数」(海外では「数×名称」)という表記からも,何がいくつなのかを容易に知ることが可能ですし,たし算で表すとどうなるかがイメージできます.
*3:「限界」「欠点」という言葉をどのように使うかが,批判者と学習者との分かれ目になっているように思います.すなわち,Xの限界・欠点を示してXを採用すべきでないと主張するのが批判者,Xの限界・欠点を確認した上でXの適用範囲を明らかにしようとするのが学習者です.