わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

1000-(2(200-50)+2×200)

ラベルをつけて整理します.

  • Q1: 1000円で200円の惣菜4個の支払いをした.残金を求める式を書きなさい.
  • A1: 1000−4×200
  • Q2: 1000円で200円の惣菜4個の支払いをした.惣菜1個を50円まける割引券を2枚使ったとき,残金を求める式を書きなさい.
  • A2: 1000−(2(200−50)+2×200)
  • Q3: 200円のおそうざいを4つ買います。1000円をしはらったとき,おつりはいくらになりますか。答えを求める式も書きましょう。
  • A3-1: 式 1000−200×4=200 答え 200円
  • A3-2: 式 200×4=800 1000−800=200 答え 200円
  • Q4: 200円のおそうざいを4つ買います。わり引きけんがあり,1まいで,おそうざい1つが50円安くなります。わり引きけんを2まい使います。1000円をしはらったとき,おつりはいくらになりますか。答えを求める式も書きましょう。
  • A4-1: 式 1000−(200×4−50×2)=300 答え 300円
  • A4-2: 式 1000−(200×2+150×2)=300 答え 300円
  • A4-3: 式 1000−{200×2+(200−50)×2}=300 答え 300円
  • A4-4: 式 200×4=800 50×2=100 800−100=700 1000―700=300 答え 300円
  • A4-5: 式 200×2=400 200−50=150 150×2=300 1000―(400+300)=300 答え 300円

Q1とA1,Q2とA2はツイートからの抽出・整形です.Q3以降は,もし小学校だったらどんな出題をし,そんな反応があるだろうかを,自分なりに考えてみたものです.A3-1,A4-1,A4-2,A4-3が総合式,A3-2,A4-4,A4-5が分解式です.A4-5は,A4-2とA4-3の両方に対応した分解式となります.A4-2のうち,問題文に明示されていない「150」については,「200−50=150」を別途,計算しておくものとします*1
想像するに[twitter:@temmusu_n]さんの意図は2つあって,一つは,「割引額が大きくなればなるほど,それに応じて,残金も増える」という数量の関係は,小学生でも(算数の範囲内で)理解できる,ということなのでしょう.
この方針は興味深かったのですが,問題文と式のツイートは,算数に“落とし込む”に至っていないように感じました.そこで構文面の難点と,意図がより明瞭になる代案を,負数の演算(小学校の算数) - Togetterでコメントしました.書き直すと:

  1. 式の中に「2(…)」や2重のカッコ*2が入っているので,構文的に,小学生向けではありません.
  2. 「割引額が大きくなればなるほど,それに応じて,残金も増える」については「450円のスケッチブックが40円引きで売っていました。500円はらって買うとおつりはいくらでしょうか。」という既出事例をもとに,a−(b−c)=a−b+c*3のタイプを使用するのが良さそうです.

補足1

Q3・Q4について,漢字は4年までで学習するものに限定しました.自作のKanjiSorterを使用した動作確認は次のとおり:

$ ruby kanji-sorter.rb '1000円で200円の惣菜4個の支払いをした.残金を求める式を書きなさい.'
1年(2種3字): 円円金
2年(1種1字): 書
3年(1種1字): 式
4年(3種3字): 求菜残
5年(2種2字): 個支
6年(0種0字):
配当外(2種2字): 惣払

$ ruby kanji-sorter.rb '200円のおそうざいを4つ買います。わり引きけんがあり,1まいで,おそうざい1つが50円安くなります。わり引きけんを2まい使います。1000円をしはらったとき,おつりはいくらになりますか。'
1年(1種3字): 円円円
2年(2種3字): 引引買
3年(2種2字): 安使
4年(0種0字):
5年(0種0字):
6年(0種0字):
配当外(0種0字):

Rubyコマンドラインを使わない人は,常用漢字チェッカー | 常用漢字情報サイトをご利用ください.

補足2

「意図は2つ」と書いていて,上ではその一つしか挙げていませんでした.もう一つの意図は,「個数×単価」はもう当たり前のことだよね,という点です.
個人的認識は,小学校の算数と中学校の数学では,「単価×個数」で一貫しているんだよなあ,です(当ブログで「(単価)×(個数)」を探す).
付記すると,数式で「2(200−50)」と書くけれども「(200-50)2」と書くのは不自然なのは,2xと書くけれどもx2と書かないのと同じで,文字式における乗法の記号の省略のところで,結局のところ中学校に入ってから,学習すべきだと思っています*4

補足3

負数の演算(小学校の算数) - Togetterのツイートとコメントの両方に「1000-(2(200-50)+2×200)」が出現します.
これで連想したのは,「どのお皿にもミカンが3個のっています。お皿は全部で4皿あります。ミカンを集めて大きな袋に入れると、全部でいくつになるか?」です.『数とは何か?―1、2、3から無限まで、数を考える13章 (BERET SCIENCE)』のpp.42-43とp.46にあります.
このミカンの文章題,語句を細かくチェックすると,アラが見えてきます.まず,文末は「います。」「あります。」のあと「なるか?」で,唐突な感があります.それから,「全部で」が2回,出現しています*5.そしてより大きな話として,いわゆるかけ算の順序論争では「基準量が後に示された問題」が取り上げられてきたのですが,上の文章題では,そのことが伝わりません.
ここここによると,著者は数学教育協議会の委員長なのですが,『数とは何か?』は,小学校で算数を専門とする先生のレビューがなく,出版されたのだろうなとも感じています.

補足4

演算子」という言葉にも,抵抗を覚えます.理由は2点あって,まず,小学校算数・中学校数学の学習指導要領解説にも,『算数教育指導用語辞典』や啓林館の算数用語集の索引にも,この言葉が出現しない点です.
もう一つは,『認知心理学からみた数の理解』です.「キーレン(Kieren, 1988, 1993)によれは,有理数はa)測度,b)商,c)割合,d)演算子という4つの下位要素(subconstructs)から構成される。」(p.122)とあります.Kieren, 1988はisbn:0873532651に収録されており,タイプライタ体で「MEASURE」「QUOTIENT」「RATIO NUMBER」「MULTIPLICATIVE OPERATOR」からなる図(Figure 3. Subconstructs of rational number. p.166)が見られます.
演算子」と「演算」の混同については,wikipedia:演算子の最初の段落にも記されています.ともあれ個人的には,(おそらく大学からの)数学や,プログラミングにおいては「演算子」で通じるだろうけれど,算数の話で断りなく使用するのは避けたいところです.「演算の記号」のほうが無難かと思います.「演算記号」は,中学校学習指導要領解説数学編で使用されていました.

*1:百分率の問題で「5%」とあったとき,立式時に「0.05」と書くようなものです.

*2:自分の授業の中では,「カッコのネスト(入れ子)」と呼んでいるやつです.

*3:この等式の中に,分配法則が入っています.「−(b−c)=−b+c」の部分です.とはいえそれを分配法則として認識するのは,算数の範囲を超えていると言わざるを得ません.

*4:「2円の商品をx個」も「x円の商品を2個」も,金額は2x(円)と表せますが,どちらの場面であれ,2xという式のもとでは,xの係数は2---xを基準としたときの乗数---となります.

*5:「4皿」の直前のほうは不要ですが,「お皿は4皿あります。」と,2種類の「皿」が近づくのを嫌ったのでしょうか.