わさっきhb

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イチゴ3個×リンゴ6個

トラバありがとうございます.んで,

3人/列×6列という計算のほうが、3人×6人よりも普遍性があって多くの事柄に適用できるのではないかというのがこのエントリーにおける主張です。

3人×6人という「積の乗法」を,別の方式に変換して計算することができる,というのは,パー書きこそ使っていませんが,中島1968bの次の考え方と似ています.

6×9を次のような配列(の点の個数)を意味するとして定義するのがアレイの考えである.

このように定義しても,こどもは,結局,9個ずつのグループが6つとして答えを求めるくふうをするから,累加になってしまう.

主観的な普遍性でいうと,自分の認識は,「3人/列×6列」も「3人×6人」も,「3人×6」も「3×6」も,大差ないかなあといったところです.
ですが倍の乗法になると話が変わってきて,「2枚×2袋」を重視します.日常使われているからです.そしてその種の表記で,総量の単位がどうなるのかは,学校教育の範囲ではなく,外にいる大人(自分を含めて)が分かっておくべきことです.
「2枚/袋×2袋」は日常,見かけません*1.そのように認識して,計算するのは,差し支えありませんが,「2枚×2」との比較はしておきたいところです.そこに関してVergnaudは…もういいですね.


んでんで,

ブックマークコメントでは
リンゴ1個がイチゴ3個と交換できるときに、リンゴ6個は何個のイチゴと交換できるでしょう。
という問題を例として考えました。
これは3人/列×6列方式ならば、
イチゴ3個/リンゴ1個×リンゴ6個
のように書くことで、イチゴ18個という答が機械的な計算により求まります。


3人×6人方式だと、
イチゴ3個×リンゴ6個
のようになり、18個という答を得たとしてそれがリンゴであるのかイチゴであるのかを式とは別に考える必要が出てきます。

この問題を見て,自分はまったく別のことをイメージしました.まず,「リンゴ1個がイチゴ3個と交換できる」は,こうです.

「リンゴ6個は何個のイチゴと交換できるでしょう」は,こうです.

左辺は,リンゴの数を単純に数えるだけです.右辺すなわちイチゴの総数を計算する際,リンゴの数は考慮しません.

「イチゴ3個/リンゴ1個×リンゴ6個」や「イチゴ3個×リンゴ6個」よりは,すっきりと表せているように思います.これは「リンゴ空間」と「イチゴ空間」を分けて考えているからです.
数が変わっても説明できるようにしておくなら,かけ算の式のうち「×6」は,「6倍」の意味になります.もし,問題文の「リンゴ6個は」の個数が,手書きできないほど多数なら,筆算の途中に「…」の縦書きを入れて省略し,リンゴの並びの左に大きな「(」,イチゴの並びの右に大きな「)」を書いて,それぞれの横にいくつ分かを添えることになります.

ところで,関係する2つの数量を意図的に同じ単位にするというのは,4マス関係表で検討済みでして,『筑波大学附属小学校田中先生の算数4マス関係表で解く文章題―小学4・5年生 (有名小学校メソッド)』にも出題例があります.

1インチが2.54センチのとき、4インチは何センチになるでしょう。
の場合だと、
2.54センチ/インチ×4インチ

2.54センチ×4インチ
にようになります。

Greerの分類のうち,「Measure conversion(単位の変換)」の話ですね.これは,「2.54センチ/インチ×4インチ」のほうを支持します.
ですが,4インチのほうを基準量(かけられる数),1インチが2.54センチのほうを作用素(かける数)とみなして,「4 in×2.54 cm/in=10.16 cm」と書くこともできるなあ,という認識も持っています.自分なりの分類です.


最後に,なぜ「3人/列×6列方式」に賛成しないかを書いておきます.以前に

を見ておりまして,この中の「1,864円×50%」,より一般には,倍概念で表される事例(乗数が割合になるもの)について,パー書きにするのが不自然だからです.
1あたりを推奨する数学教育協議会では,「倍概念は子どもたちにとって難しい」とし,低学年での指導は避けるスタンスです.それに対し,学習指導要領解説によると,倍概念は2年の乗法の意味に含まれており,時間をかけて習得することが期待されています.
補足ですが,「2枚×2袋」は倍概念ではありません.「2枚が2袋」を簡潔にした表記です.乗算記号を借用していますが,算数ではなくコミュニケーションの道具です.これを「2枚×2」とすると,「2枚が2つ分」となって,倍概念で(算数・数学的に)解釈ができます.念のため,「2枚/袋×2袋」とすると,「1袋あたり2枚で,2袋」です.
「3人×6人」のように,かけられる数とかける数の単位が同じかけ算だと,それらが実質的に区別されないので,「積の乗法」になる…という主張*2にも,反例があります.筑波の算数の授業例ですが,「4つと3つ」「4つと3つと2つ」「4つと3つが2つ」と先生が言います.前二者はそれぞれ「4+3」「4+3+2」ですが,最後のは「4+3×2」か「(4+3)×2」か曖昧です(授業は,どっちの数量の認識も出てくることを意図して行います).

このうち「3つが2つ」に着目して,「3つ×2つ」と式に表したとき,「3つ」と「2つ」の役割は異なります.さらに言うと,「2つが3つ」との描き分けもできます.

(最終更新:2013-04-22 晩.画像を入れました.当初の内容は,[http://megalodon.jp/2013-0422-2044-11/d.hatena.ne.jp/takehikom/20130417/1366128858:title=ウェブ魚拓]をご覧ください.)

*1:サブアカのブログで記事にしていませんが,「ガソリンスタンドの単価表記」と「駐車料金」で,パー書きをよく見かけています.そのくらいです.

*2:誰がしているというわけではありませんが.