「今日な,うえの子とすえの子をな,予防注射に連れてったんよ」
「ほお.んで,泣かんかったか? って,うえの子は問題ないよなあ」
「それがね,泣いたんよ」
「うえの子が?」
「せやねん」
「痛ぁて泣くような子ではないと思うんやが」
「せやねん」
「何やそれ」
「それがね.うえの子はもう,だっことかせんでも,一人でお医者さんの前で座れるやんか」
「まあせやな」
「それで,これから打ちますよ〜ってときに,あの子,あたしのほうを見たんな」
「見たんか」
「そのときあたし,すえの子をだっこしてたんよ」
「まあそうなるな」
「それで泣き出すんよ」
「どんな理屈やそれ」
「ママから離れる〜か何か,あったんやろね」
「ほお.んで,どないなったんや」
「泣かせるだけ泣かしたら,あの子もすっきりしたみたい.注射のほうは,ぜんぜん泣かんかったよ」
「へえ.そいで次は,すえの子の番か」
「せやねん.あの子も,注射してるときは,泣けへんね」
「針が指されたときに泣くとか」
「それもない」
「ほな,理由はともあれ,うえの子は泣いて,すえの子は泣かんかったんか?」
「ちゃうねん.すえの子も,泣いてん」
「何したんや?」
「待合室でな,知らん人が多かったんで,わんわんしたんよ」