わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

A2

いきなりですが問題です.

円の半径を利用すると,二等辺三角形をかんたんにかくことができます.
下の円の半径を一辺とする二等辺三角形をかきましょう.

今回の元ネタは,東京都算数教育研究会の学力実態調査(〈量と測定 図形〉)です.

第3学年の大問2です.平成23年度実施について,3年生だけで61,900人*1です.
といったところで解答です.平成21年度実施には,破線で,二等辺三角形の残りの2辺をかいています.破線のところは青線にして,絵をつくると,こうです.

大人向けには,「円Oとその半径OAが与えられたとき,円周上に,Aと異なる点Bをとれば,三角形OABは,OA=OBの二等辺三角形となる」と書くこともできます.


評価基準の表を見ると,「正三角形」「半径2本を使って正三角形をかいた」があります.この問題はどうやら,半径をまっすぐ下ろして,与えられた辺とつないで三角形をつくれば,正三角形になるようです.

評価基準の表をさらに見ると,平成21年度実施では「半径1本のみ使用」,平成23年度実施では「半径1本を使って正三角形をかいた」とあります.ここもまた,推測ですが,与えられた辺の長さをコンパスでとり*2,残りの2辺が,それと同じ長さになるように,コンパスで求めたのではないでしょうか.線分が与えられたとき,それを辺とする(線分の両端が三角形の2つの頂点となる)正三角形は,次の図のようにちょうど2つ,つくることができます.

円に内接する正六角形(正三角形を6つ配置してできる)に注意すると,与えられた線分が円の半径であるとき,正三角形を構成する残りの頂点は,その円周上にあります.
ただ,問題文に戻ると,そのようにしてかいた三角形は,「円の半径を利用」したとは言えません.これについて,一部正答扱いの「B」というラベルをつけたのは,なるほどなといったところです.
誤答で最も多いのは,「おうぎ形」です.言葉にすると「三角形にし忘れた」,図にすると,こうでしょうか.


正三角形(半径2本を使って正三角形をかいた)の作図に対して,ラベルは「A2」です.準正答となるけれども,期待される正答とは異なるので区別しようという意図がうかがえます.評価基準の表の下の解説では,平成21年度実施・平成23年度実施ともに「正答率は71%」と記されています.帯グラフから,これは「A 正答」のみの割合と分かります.正三角形はその正答に含まれないというわけです.
「A2」があるのは非常に少なく,平成21年度実施ではここ以外に見当たりません.平成23年度実施ではもう1件あり,第5学年大問5,混み具合の比較に関する問題です*3
平成22年度実施(〈数と計算 数量関係〉.http://tosanken.main.jp/data/H22/jittaityousa.pdf)はというと,みかんの配り方でも見てきましたが,「子どもが 3人 います。みかんを 1人に 4こずつ ふくろに 入れて くばります。くばる みかんの 数を もとめる しきを かきましょう。」に対する「4+4+4=12」があり,その文書でもA2はそこだけです.
たし算の式は,正解・不正解で言えば正解扱いになるが,期待される正解ではない,というのと同じことが,「二等辺三角形をかく」問題で正三角形をかくことへの対応にも,現れています.単純に言うと,都算研は正三角形は二等辺三角形にあらずという立場です*4


ここまでの図の作成で,実行したワンライナーは以下のとおりです.実行には,ImageMagickのconvertコマンドが必要です.

convert -size 240x240 'xc:#eee' -draw "translate 120,120 fill none stroke-width 2 stroke black circle 0 0 80 80 line 0 0 -97 56" -quality 95 isosceles1.jpg

convert -size 240x240 'xc:#eee' -draw "translate 120,120 fill none stroke-width 2 stroke black circle 0 0 80 80 line 0 0 -97 56 stroke blue line 0 0 97 56 line -97 56 97 56" -quality 95 isosceles2.jpg

convert -size 240x240 'xc:#eee' -draw "translate 120,120 fill none stroke-width 2 stroke black circle 0 0 80 80 line 0 0 -97 56 stroke blue line 0 0 0 112 line 0 112 -97 56" -quality 95 isosceles3.jpg

convert -size 240x240 'xc:#eee' -draw "translate 120,120 fill none stroke-width 2 stroke black circle 0 0 80 80 line 0 0 -97 56 stroke-width 3 stroke red ellipse 0 0 112.5 112.5 85 95 ellipse 0 0 112.5 112.5 205 215 ellipse -97 56 112.5 112.5 -95 -85 ellipse -97 56 112.5 112.5 25 35 stroke-width 2 stroke blue line 0 0 0 112 line 0 112 -97 56 line 0 0 -97 -56 line -97 -56 -97 56" -quality 95 isosceles4.jpg

convert -size 240x240 'xc:#eee' -draw "translate 120,120 fill none stroke-width 2 stroke black circle 0 0 80 80 line 0 0 -97 56 stroke blue line 0 0 -112 0 ellipse 0 0 112.5 112.5 150 180" -quality 95 isosceles5.jpg


本日の記事を書くきっかけとなったのは,次のブログ記事です.

  • http://mackie23450.blogzine.jp/blog/2013/07/post_d9d8.html(現在はデッドリンク

前記事(http://mackie23450.blogzine.jp/blog/2013/06/post_152b.html,現在はデッドリンク)と本文は同一で,コメントが長くなったので,立て直したとのこと.t.mの名前でコメントし,平成21年度実施のほうのURLを書きました.
この内容,そしてその反応…連想するものがあります.いずれも今年,書いたのでした.

どうやら,“ブログ受け”や“Twitter/Togetter受け”をする書き方というのがあるようです.流れは,こんな感じ:

  • 何らかの時事ネタで,
  • 複数の選択肢が考えられるときに,
  • そのうちの1点を支持し,
  • それ以外の選択肢を,事実・論理をフル活用して駆逐する!

「かけ算の順序」という問題設定も,これに乗せて主張することができます.

書いて書いて書かれて書いて

(略)内容の是非よりも,ここで書いておきたいのは,着想や思いつきを,叩いて終わらせることのできる,知識の豊富な人々が,「かけ算の順序」の界隈には何人かいるという点です.

Re: 擁護する主張に追加予定

それから,「事実・論理をフル活用して駆逐する!」については,主旨は反対で,メディア力の高い人による

も見ておきたいものです.今読み直してみると,追記の多さが目立ちます.当初の「事実・論理」では足りなかったといったところでしょうか.
話を,ざわめくブログ人さんの記事に戻しますと,当初,この方は学校の先生かどうか疑問でした*5.というのも,本文の終わりのほう,わり切れないわり算の扱いが「大人モード」に見えたからです.
しかし,前記事のコメントに,「高学年になる子どもの授業参観などで、今後も注意して観察してきたいと思います」とあるのでした.これは,学校の先生と判断せざるを得ません.
そうすると新たに,思い浮かぶものがあります.

「4×8と8×4は違うからその辺にも注意してな」
(略)
こっちは「4×8と8×4,答えは同じだけど意味が違う」というのがどのくらいの範囲で認められているかを調査していて,今月やっと,それが裏付けられる英語文献を見つけたところです.小学校の先生の側は,教え方の要所の一つとして,頭の中に入れていて,子どもたちへの指導でも意識し,そしてこのように,同業者でない者へも,さらっと言ってくれたわけです.

元先生の話を聞く

学校の先生は,教科(小学校の場合,算数以外も)の知識や,教材開発や研究授業,また生徒指導の実績やノウハウなどを,持ち合わせているわけです.
そのことに敬意を示しつつ,「何か」できないか,一歩踏み込んで言うと,書いてくれたあなたと読ませていただいた私とで「何か」をシェアできないか,と思い巡らせながら,見てきたり,取りまとめたりしてきた情報とリンクすること---「情報へリンクすること」ではなく---が,自分にとってできることなのかなと思っています.
新たなリンクを試みるとします.本文に

出てくる順番に書いても、結果は同じなのですが、「お皿が5枚あり、10個のおはぎを各皿同じ数になるように載せるとき、1つのお皿には何個のおはぎが載るか」といった、割り算の文章題のときに、とても困ります。計算はできても、具体的な場面に算数を適用して考える力がついていないのです。

とあり,ここに根拠を示せという意見*6がついていますが,わられる数・わる数が何になるかを問う出題としては

8mの重さが4kgの棒があります。この棒の1mの重さは何kgですか。求める式と答えを書きましょう。

が良さそうです.これは平成22年度実施の全国学力テスト,算数A大問2(1)です.
数量の関係に注意すると,式は4÷8です.しかし8÷4と書きたくなります.このことについては,

のpp.113-114で,より詳しい誤答の分析を見ることができます.配属学級(配属校)で誤答率が低いのは,指導の現れなのでしょう.

*1:人数の変化については,平成25年度の会報の最初のページに「実態調査では1学年およそ6万人の子どものデータが集まっています。10年前の実態調査では1学年多くても3万人でした。児童数が増加したわけでもないのに、2倍になったということは、それだけ先生方の関心が高まったからだと言えるでしょう。」と書かれています.

*2:コンパス使用について,参照した文書には記載がありませんが,平成21年度実施の第3学年大問3の評価基準に「2.2cmなど実寸をかいた」とあるので,定規とコンパスの使用が認められていたと思われます.

*3:「単位量以外で正答」として,「Aのにわとり小屋が,その混み具合のまま面積が60㎡になったら,にわとりの数は8×6=48で48わ.Bのにわとり小屋が,その混み具合のまま面積が60㎡になったら,にわとりの数は10×5=50で50わ.なのでBの小屋が混んでいる」という答案が思いつきます.

*4:「正三角形は二等辺三角形に含まれる」に配慮した上で,出題するには,カッコ書きでそのことを記すか,または「2つの辺の長さが等しい」といった言葉に置き換えるのがよさそうです.実際,平成21年度実施,平成23年度実施とも,第3学年大問1は,6つの三角形を提示し,「2つの辺の長さが等しい三角形をぜんぶえらんで,記号で書きましょう」と問うています(正三角形となる図形は,見当たりませんが).第4学年では,6つの四角形に対し「向かい合っている2組の辺が平行になっている四角形」と「平行になっている辺の組が1組しかない四角形」を選ばせており,平行四辺形・長方形などを後者で挙げると誤答になるようにしています.

*5:ある:ない=3:7 くらい.

*6:「ざわめくブログ人さんの主張はよく分からないです。」「ブログには色々書かれていますが、ソースのないものばかりで、到底説得力はありません。」が,これからもブログ記事を書いていこう,コメントに誠実に対応しようという気分を阻害するメッセージとなっていることに,気づいてくれればいいのですが.