お盆休みに,本を整理していまして,出てきたのが:
- 作者: 小松達也
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/01/21
- メディア: 新書
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まだアメリカ国務省の通訳者としてワシントンに駐在していた頃のことですが,日本から企業経営者のグループが訪米して,カリフォルニアなどアメリカ西海岸のビジネスマンの代表とサンフランシスコで会議をした時のことです.先輩の村松増美さんと私が同時通訳したのですが,その時アメリカ側のスピーカーの1人が「太平洋には“hake”がたくさんある」という話をしました.
私は“hake”という語は聞き取れたのですが,それが何を意味するかは知りませんでした.そこでhakeではなくhateに違いないと誤って判断して「戦後かなり時が経ったけれども,日米間にはまだ深い憎しみ(hate)が残っている.両国は協力してそれを取り除かなければならない」と通訳しました.論理は通っていたので,通訳を聞いていた人たちも疑問を持つことなく受け入れてくれました.ところがスピーチが終わって慌てて辞書を引いてみると,hakeはタラの1種の魚の名前だったのです.スピーカーが言わんとしたのは「hakeは太平洋の深いところにいる魚だから捕まえるのは難しいけれど,日米の技術協力で食糧として活用すれば途上国への食糧援助として役立つ」という主旨だったのです.幸か不幸かこの誤訳は気づかれることなく終わったのですが,大変な誤訳であったことに変わりありません.会議の後のレセプションには恥ずかしくて顔を出せませんでした.
自分も,英辞郎でhakeを引いてみると,「【名】《魚》メルルーサ」と出ました.wikipedia:メルルーサを参照すれば,より詳しい情報が載っています.「加工食品に用いられる白身魚」を見て,身近な魚に思えてきました.
そういえば以前,どこの国だったか,虫刺されの薬がほしいけれど,ホテルマンが絆創膏を出してきたとき,"She was hit by mosquitoes."と言ったところ理解してもらえたことがありました.
蚊に“刺される”の英語は,hitではなくbiteを使って"She got a mosquito bite."とすれば良かったのを,帰国してからふと思い出し,辞書を引いて学んだのでした.