キャンディ半分
「お,あとの子よ,キャンディ,持っとんねんな」
「(上機嫌)」
「けど袋に入ってて,開けられへんのか.パパ預かっとこか(手を出す)」
「(キャンディを置く)」
「(キャンディを取る)」
「うええ〜ん! あたしの!!」
「おいおい,さきの子よ,そんなんしたら,あとの子,そらぁ泣くぞ」
「ほしいの!!」
「あたしの!!」
「こらこら,取り合いしたらあかんあかん.せやけどどないしよかな」
「はんぶんにして!」
「はんぶん!」
「なるほど,半分なあ.ていうか,半分の概念を分かってるとはすごいな」
「けどな…キャンディを半分にするンは,至難の業やで.噛んでも,包丁やハサミを入れても,うまいこと分かれる保証はないからな」
「しなんのわざってのはな,むずかしいっちゅうこと…っと,おばあちゃんが来はった」
「さきの子ちゃん,あとの子ちゃん,どおしたの?」
「かぁんでい!!」
「かぁんでい!!」
「そうね,もうすぐ晩ごはんやからね,おばあちゃんが預かっとくね.おまるでおしっこ,ちゃあんとできた子に,あげるからね」
「(キャンディを渡す)」
「へえ,そういうやり方もあるんか」
すきやきの卵
「パパ,この子らがすき焼き食べるの,見といたってや」
「へいへい.こぼしたら,拾たらええんやろ」
「せやねんけどな」
「んで? 晩ごはんは? すき焼きかいな」
「せやねん.んで,ちょっと卵をかけたいねんけど」
「…」
「あたしがわる!!」
「…」
「って,うえの子が言うてきかへんから,この子にさせるゎ」
「あいよ」
うえの子がうまく卵を割ってお椀に入れ,かき混ぜていると…
「あ」
お椀を倒してしまい,テーブルの上に,卵をこぼしてしまいました.
「あかんやないの,うえの子,もお!」
「うーん.どうしようもないなあ.とりあえず…」
「(さきの子を向いて)えー皆様,本日のすき焼きにかける卵は,『なし』となりました」
「って,ボケたのに,表情変えへんのかよ」
「こぼれた卵をすくえるよ.お椀に入れて…」
「いけるんかいな.ああ,ビニールの敷きもんのおかげやな.ほな…」
「(再びさきの子を向いて)え〜皆様,本日のすき焼きにかける卵は,『あり』となりました」
「(うなずく)」
「うわ,もらえるときだけ首を縦に振るんか!」