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初めてのWikipedia編集―かけ算の順序問題

wikipedia:かけ算の順序問題を編集しました.「1.1 学習指導要領・学習指導要領解説の記述」と「7 参考文献」のところです.詳細は,差分をどうぞ.
編集しようと思った強い動機があったわけではありません.ともあれ,まずはアカウントを作成しました.利用者名ですが,掲示板でよく使っている「t.m」は,先頭が英小文字なのでダメとのこと.大文字にしてから,某所の930番地をつけ,「T.m.930」としました.
wikipedia:ノート:かけ算の順序問題に意見を書いていき,反応も見ながら,自分なりに何をしたいかを探りました.そこで,学習指導要領解説の取り上げ方が,第2学年のみになっているのを,改善できないかと,考えるようになりました.
ガッと下書きし,「学習指導要領・学習指導要領解説の記述」の改訂案というセクションを新たに作って載せました.

流れとしては,「学習指導要領解説に見られる,特定の順序の例」「逆順も認めている例」「学習指導要領・同解説を取り巻く状況」の3つです.ノートでは,最後を2つに分けて(a)(b)(c)(d)で方針を挙げました.
長い文案を作れば,修正意見も出るもので*1,一つ一つ誠実に対応しました.第3学年以上の特定の順序の例は字数を減らし,おはじきの配置を復活させ,取り巻く状況については修正文案を取り入れました.出典のリクエストがあり,1冊つけて理由を説明しました.
ほかに考慮した小さな点を挙げておきます.Wikipediaに限らず,メールなど,文字媒体を使った情報の取りまとめにも,役立つと思います*2

  • 複数の方の意見に対し,まとめて返信する際は,意見した全員の名前を挙げます.名前は列挙ではなく,個々の意見*3の近くに書くようにしました.
  • 改稿にあたっては,それまでの記述を,増やすか/維持するか/減らすか/なくすか の選択に時間をかけました.
  • うち/そと を意識しました.ノートによる議論や情報提供は,誰でも読めるとはいえ,「うち」です.「そと」すなわち本文(ページ)で何を書くか,それがどう読まれるかを,忘れないようにします.
  • Wikipediaにおいて出典は必要不可欠です.挙げるべきか挙げないほうがいいかで悩んだら,挙げるという自分用ルールを設けました.なぜその出典を持ち出したのかについても,簡潔に書き添えました.

他の方どうしのやりとりを読んで,「順序」の曖昧さが気になりました.具体的に言うと,「学習指導要領・同解説では(かけ算の)順序は規定されていない」という言説からは、次の2つの解釈ができます。

  • 学習指導要領・同解説では,かけ算の式に表す際に,6×4としなければならないか,4×6としなければならないか,6×4と4×6のどちらでもいいかは,規定されていない.
  • 学習指導要領・同解説では,「(かけ算の)順序」という概念や用語について規定されていない.

例えば『かけ算には順序があるのか (岩波科学ライブラリー)』は前者です*4.後者の立場をとっている人は,ノートで名前を挙げましたが,当ブログも基本的にその方針です(関連:「順序」探しかけ算の順序,計算の順序).
とはいえその曖昧さは基本的に自分の問題意識,そして内面の話です.「己」を排除して客観的な記述を心がけ,また前後関係や編集履歴も考慮し,曖昧さについては,あえてその明確化を(したがって解消も)避けることにしました.
改訂案2への修正意見,そして「保護依頼」のついたページへの対応方法にも,目途がついたところで,本文への編集に取りかかりました.しかし,ページとノートの編集フォームの切り貼りでおしまい,とはいきませんでした.
一つ,苦労したのは,『小学校学習指導要領解説 算数編』と『中学校学習指導要領解説 数学編』の引用でした.ノートに書いたものだと,ともに「文部科学省 2008」と引用することになってしまいます.書き分けるための表記法が,必要となりました.
本文を読み直すと,出典の中に「田中博史 2012a」というのがありました.参考文献の編集フォームで検索し,その書き方*5を学び,以下のとおり記載しました.

*{{Cite book|和書|author=文部科学省|year=2008a|title=小学校学習指導要領解説 算数編|publisher=東洋館出版社|date=2008-08|isbn=978-4491023731|ref=harv}} PDF文書が以下より入手可能。{{Cite Web|title=小学校学習指導要領解説:文部科学省|url=http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syokaisetsu/|accessdate=2013-10-14|ref=harv}}
*{{Cite book|和書|author=文部科学省|year=2008b|title=中学校学習指導要領解説 数学編|publisher=教育出版|date=2008-09|isbn=978-4316300139|ref=harv}} PDF文書が以下より入手可能。{{Cite Web|title=中学校学習指導要領解説:文部科学省|url=http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/chukaisetsu/|accessdate=2013-10-14|ref=harv}}

リリースして,振り返ってみると,ノートで意見を募りながら,本文を書き換えるのは,論文を一つ仕上げるのと似た感覚がありました.ノートで意見をされた方々は,査読者ではなく,共著者です*6
研究分野(Wikipediaではページ)をすべて,書き直そうと思ってはいけないのでした.対象を絞ったとしても,それを総取っ替えしようというのは,まずいアプローチです.むしろ,すでにあるものを利用し,その一部を変更するほうが,「差分」が明確になり,読者のためになる記述とすることができます.
研究と言えば,今年5月に,Wikipediaの実習を発表されていたなあ.探すと…ありました:ウィキペディア教育の経験
ともあれアカウントを作り,ノートにも本文にも,自分の手が入りました.今後は,外野からあれこれ言うわけにいきません.ロジックがおかしいだとか,ここの「要出典」は解消できるんじゃないのだとか思ったら,本文を編集するか,ノートに書くようにしていきます.


おまけ:Wikipediaといえば編集合戦

昨日発売のグランドジャンプ王様の仕立て屋の中に,主人公・オリベと,ロンドンから来たパウエル親方が,裁断前の線引きで「俺が」「俺が」をしているシーンがありました(p.47).
仕立て屋(親方)どうしの編集合戦です.
話としてはセルジュが割って入り,ここはオリベのサルトだからと,パウエル親方に退いてもらっていました.

(最終更新:2013-10-18 未明)

*1:誰からも「そもそも反対」がなかったのが,励みになりました.

*2:話は逆で,普段から心がけている,メールでの情報の取りまとめ方法を,Wikipediaのノートで適用したら,だいたいうまくいったのでした.

*3:相手を立てるとともに,意見を自分なりに(自分の解決可能な形に)変換することもしやすくなります.

*4:You must / You canも緩やかに関連します.見直してみると,改訂の文案に書いて最終的に別の表現に置き換えられた,「形成」の語も入っていました.

*5:簡単に言うと,「yearはラベル.dateに発行年(-月-日)を書く」.

*6:今週,学生に見せた研究室説明のスライドには,研究を進めるに当たって「指導教員は門番ではなく仲間」と書きました.