わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

関連研究をどこで言うか

「発表おつかれさん.新たな課題も出てきたので,またしっかり取り組むとしましょう.
それで,背景で取り上げた既存手法のところで,いろいろと質問が来たけれど,我々にしたらそれは本意ではなかったはずです.
あれは関連研究の一つなわけで,そう見ると,関連研究をどこで言うか,論文にする際にはどこで書くか,によって分かりやすさも変わってきます.分かりやすさというのは,聴き手や読者が,この人は何を課題として研究をしているのだろう,ということについての,認識のしやすさのことです.
関連研究を含めた,ストーリーの基本となるのは,こうです:大きな背景があって,それを実現するためのよく知られた手法にコレコレがあって,しかしそこにはこんな問題があるのですが,自分の提案する手法ではその問題点を解消するものでして,アイデアはこう,実装はこう,評価して結果はこう,考察を入れて,最後に結論です.
これが間違いだった,というわけではありません.ともあれ,おおよそこの流れで組み立てて,まあ評価は今後の課題だったけど,今日しゃべっていたわけです.オーソドックスな話し方だけれども,その関連研究もしくは既存手法のところで,人が立ち止まってしまうと,それ以降のあなたの本論がスムーズに入ってくれない,というリスクがあります.
そこで,こんな提示方法もあります:背景を過不足なく述べたら,次に,自分はそれを解くためにこうしましたと,具体的な方針や構成をズバッと言ってしまうのです.動作例だとか評価のことだとか,考察なんかも書いて,内容としてひと段落ついたところで,関連研究を挙げることにします.もちろん結論は最後に置きます.
関連研究を後回しにする最大のメリットは,相手を自分のペース,言い換えると問題設定に引き込めることです.とは言っても,関連研究なしでは,独りよがりに見えます.字数や引用の数はともかくとして,学術研究において必要な要素です.
問題解決の方法は幾通りもあって自分はその中から一つを選ぶんだ,そしてそれは『問題解決の提示の方法』にも当てはまるんだ,ということに注意して,実装や評価を行い,他の人の論文を読んでいきながら,自分は研究で何を解決したいのか,練り上げていってください」

なにこれ

先週の某ゼミで指導学生(M1)が発表し,ゼミ終了で退室の際に,学生に話しかけた内容をもとにしています.実際にはこれより短く,質疑でこちらが口を挟んだ件や,いつも心配してくださっている他の先生との情報交換に,長い時間をとりました.
当人の研究や,関連研究について,具体的なところは今回,差し控えていますが,いま振り返ると,関連研究を後回しにして話すのは,「食前酒を飲んだらすぐメインディッシュかよ!」という(言葉にされない)聴き手のツッコミがありそうで,そうした方が本当に良いのか,次の発表の前にきちんと検討すべきところです.

関連

要するに、先行研究の共通点、差異点をみつけて、「構造」をつくるのです。くどいようですが、先行研究は「並べる」のではありません。「意味的連関を見つけ」をして、願わくば「構造」をつくると、自然と「フォーカス」が絞れるようになります。
(略)
でも、そうした作業を通して、すこしずつすこしずつ問題領域を絞っていきます。自分がとかなくていい問題、もう既に解決されちゃってる問題をオミットしていきます。
そして、究極の「1点」に問題をしぼりこみます。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakaharajun/20131213-00030622/

博士のときの研究で、@taku910さんからアイデアをもらった研究があるのだが、あるとき @taku910 さんがメールをくれて10行くらい箇条書きで「イントロはこう、関連研究はこう、アルゴリズムはこんな感じで、実験はこういう実験をすれば正しさを示せるはず。これで国際会議1本くらいは行けるでしょう。どうでしょうか」という内容を示してもらい、「え、こういうふうにやるんだ?!」と本当にびっくりした。ほとんど穴埋め問題になっていて、しかも穴も調べるだけで分かるという感じ。でも、実際そうやって論文(ストーリー)を書いてから実験をすると、びっくりするくらいスムーズに行くので、たぶん研究のお作法としては、こういう手順でやるべきなんだと思った(それ以降自分もそのスタイルを真似している)。どのように穴埋め問題を作るかが出題者の力量が問われるところなのだが、穴が埋まっていない状態の問題用紙を見ただけで、出題者の意図というか、いい問題(=研究)かどうかが分かるのである。修士では問題解決能力が必要、博士では問題発見能力が必要、とよく言われるが、自分からすると、修士では穴埋め問題に答えられる能力が必要、博士では穴埋め問題を作る能力が必要、とそういうことだと思う。

博士で身につけるべき研究力とは穴埋め問題の作成能力 - 武蔵野日記

3日前に見た原稿では,関連研究の章をラス前に置いていましたが,今見ると,イントロの直後に移動していますね.
論文構成として,どっちでもいいのですが,イントロの直後に置く場合には,注意することが一つ,あります.
その中に,「本研究(本論文)で採用した手法」を書くことができないのです.
Cのソースファイルは先頭から解釈されるので,独自の型や関数プロトタイプは,その型名や関数名を使用するよりも前に書かないといけません.これと同様に,論文も,先頭から読むという建前がありますので,先取りして書くことが,原則として許されないのです.

指導したこと(2010年1月7日)

分かりにくい? 作業手順を言いますね.まず関連研究と本研究との違いを確認します.そしてそれぞれのメリットとデメリットを挙げておきます.しかし,そこまでは,研究ノートにでも書いてください.
そして論文では,今メモした「関連研究」の「デメリット」の中で,本研究を引き立てるのに使える情報を挙げるのです.もちろん論文として,滑らかになるように,表現は検討してください.

指導したこと(2010.02.08〜12)

とはいえ「SQLなら多くのデータベースシステム開発者は書ける」という,開発動機のレベルでの共通点はある.したがって,かの学生の研究からすると,強大な敵というよりは,大きな(究極的な解決はおそらく困難な)問題解決のための兄弟のようなものだ.関連研究に書くのが妥当でしょう.
(略)
こう書いてしまうと,既存の技術をばっさり切り捨ててしまうように見える.自分の研究成果をより良く,より高度に見せるためには,そういったアピールの仕方も,できないといけないのだろう.
しかしその種の切り捨て表現には,抵抗感もある.
齢を重ねるとは,こういう経験や,知識の積み重ねを含むということなのだろうか.

GQL

 次に,英語論文とフルコース料理の共通点として,言っておきたいのは,それぞれに作法があるということでしょう.流れを,含みます.そのおかげで,何が来て次はこれでというのが,理解しやすいのです.
 そうして,「全体」も「部分」も,ともに大事になってきます.論文でいう全体というのは,そこに書かれていることだけでなく,査読によって一定の内容保証がされていることが含まれます.料理でも,口の中に入るものだけでなく,お皿だとかテーブルだとか,雰囲気だとか時間のゆったりとした流れだとかを,合わせて楽しみたいものです.
 その一方で,論文では「部分」,すなわち特定の段落だとか,一つの式だとかに着目することもあります.料理だと,途中の一皿だなんかです.隠し味を発見したときの喜びは,必ずしも明示されていない,論文の意義の発見に通じるところがあります.

英語の論文はフルコースの料理

先月から,(略)提言をいろいろ見てきましたが,「提案内容を,それまでに書かれた文章とチェックする」ことをしているものは,ほとんどありませんでした.
主張やよりどころをより明確にし,さらなる議論を生み出すには,他との照合をした上で,自説を展開することが,大事になってくるように思っています.
本日の記事では,そのことを心がけました.面接に関して,Togetterのまとめを挿入したのは,これを意図してのことです.

読んで書いて,書いてから読んで

論文より

自分が筆頭筆者で書いた中から,上で説明した各種類の方法をとった論文を1つずつ挙げ,リンクしておきます.