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かけ算・わり算でモデル化される場面

Greer (1992)「Table 13-1. Situations Modelled by Multiplication and Division」の私訳を,表にしてみました.

xlsxファイルpdfファイルをダウンロードできるようにしました.

書誌情報および以前の記事へのリンクは次のとおりです.


Q: 以前に書いたのを表にしただけ?
A: 訳のいくつかを変更したほか,わり算の結果は小数第3位までとしました.
Q: かけ算・わり算の式も,原文に入っているの? かけ算の順序は?
A: オリジナルの表には,式は入っていません.日本だとそれぞれどんな式になるかを,書いてみました.「かけられる数×かける数」か「かける数×かけられる数」かではなく,かけ算の2つの数の役割を重視しています.表の「わり算(等分除)」「わり算(包含除)」のところは,原文では"Division (by multiplier)","Division (by multiplicand)"です.
Q: 最後の3行,わり算は1種類だけなの?
A: これは原文のとおりです.「かけ算1つにわり算2つ」という種類のかけ算・わり算の関係のほかに,「かけ算1つにわり算1つ」という種類の関係もあることを意味しています.
Q: 「ある暖房機を4.2時間使ったら13.9キロワット時の電力量を消費した.1時間につき何キロワットを消費するか?」は考えないの?
A: 考えても,いいと思います.想像ですが,著者は,質問の文と,表にある文とを作った上で,一方だけを採用したのではないでしょうか.暖房機の事例で重要なのは,量の積は2つの量を因数として(「かけられる数」「かける数」の区別をすることなく)新たな量を得るという演算だということです.
Q: 「速さ×時間=道のり」は,割合に入っているけど,量の積じゃないの?
A: その分類も,ありだとは思いますが,自分なりにアイデアがあるのなら,実例を集めて分類し,「ぼくがかんがえたさいきょうのかけざんとわりざん」を提案するのはいかがでしょうか.
Q: 「1あたり」は,ないの?
A: 表には見当たりませんが,本文で(他の文献を引きながら)「per」を含むかけ算の式を例示しています.
Q: 「ゴールの回数÷シュートの回数=シュートのうまさ」は,割合?
A: 割合のほか,部分と全体に入れてもよさそうです.「異種の2つの量の割合」は割合となるのに対し,「同種の2つの量の割合」は,割合なのか部分と全体なのか,この表からは分かりません.
Q: あまりのあるわり算は?
A: 対象外ですね.小数・分数を含めた「三者関係」を,検討の対象としています.


Q: この表,何がすごいの?
A: 「小学校の算数を通じて,児童が解けるようになってほしい,かけ算・わり算の問題は何か」について,知る限りもっとも明快な答えを記した分類表です.
Q: この分類が最新?
A: 最新かどうかは保証できません.ただ,韓国と台湾に広がるかけ算の順序指導 - あもあもダイアリー日記ブログでリンクされている,http://ir.lib.ntnu.edu.tw/ir/handle/309250000Q/65427の博士論文の「乗法課程的概念結構」(pp.9-14)では,Greer (1992, 1994)が最後の項目で取り上げられており,他文献と比べて最も分類が細かい*1ので,現在でも十分妥当であるという傍証になっていると思います.

*1:表2-1-5はGreer 1994から引いており,表2-1-6は「作者自製」とされていますが,これらの表を統合した内容のものが,Greer (1992)に入っています.