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メイキング・オブ・かけ算の順序論争について

今年,ブログでもっとも手間をかけて書いたのは,かけ算の順序論争 (2013.11)日本語版English Version한국어판)です.振り返りつつ,覚えていることを小分けにしてみます.

1. 11月15日に何か書きたかった

2011年2012年と,11月15日はQ&Aをリリースしていましたが,今回は作る気が起こりませんでした.
でも,かけ算関連で何か記事にしたい,という思いはありました.

2. 正解とする理由・不正解とする理由

正解とする理由と不正解とする理由をリストにしようと思い立ったのは,2013年はトランプ配り,1988年はアレイでした.
交換法則は理由に採用しておらず,2つの書籍で異なる理由をあげて,正解になり得るとしていたのでした.
ここから,理由を妥当な個数だけ列挙し,文献や論者ごとに,どの理由に賛成でどれには反対かをチェックすればいいと,考えるようになりました.
言ってみれば,「論者」から「論点」へのシフトを試みたのでした.
かけ算の順序と囲碁将棋は,将棋と囲碁を取り入れた俺流解説です.

3. sandwich

英語版では,sandwichという単語(正確にはその過去形)を,不正解となる子どもの行動のところで使用しました.
この使用は意図的なもので,次の2点を踏まえています.
一つは,かけ算の順序論争において「サンドイッチ」の教え方が批判の対象となっていることです.
もう一つは北数教で取り上げたとおり,「順序にこだわる」のは教師ではなく子どもだという見方ができることです.

4. 死生観

3.3節の最後では遠山啓の「認識の変更が,1979年(死去の半年前)の講演録に見られる」と書きました.
「死」という言葉は,その次の節の途中でも,「棺桶の絵の右下に「×2」を添え,生き返りを待つ死亡モンスターが2体あることを表現している」として使用しています.
これらの文は,現時点の自分の死生観となっています.
といっても難しい話ではなく,自分も,知識を増やして認識を変更していき,それからこの世を去るのだと,自覚しています.その一方でビデオゲームをするときには,「あ,死んでしもた」「やっと,生き返ったぞ」と,気軽に生死を扱っているわけです.

5. 韓国語訳

英語は拙訳ですが,韓国語訳は外注しました.
発注の前に,250字以内なら無料でお試し翻訳ができるとのことで,まずはと依頼し,結果を見ると,算用数字がスペルアウトされていました.「皿が5枚あります」が「접시가 다섯장 있습니다」となっていて,ハングルを読めない者からすると「5」が見当たりません.
以前にhttp://www.todayhumor.co.kr/board/view.php?table=humordata&no=1454118*1で見てきましたが,韓国語でも,算数の問題で数はスペルアウトしないのがどうやら普通です*2
他にいくつか依頼事項を取りまとめ,正式な翻訳依頼をしました.「皿が5枚あります」は,「접시가 5장 있습니다」となりました.

6. 書きながら,解を見つける

冬休み前に学内で,外部講師のお話を聞きました.
講師の方はプログラマそしてエンジニアであり,プログラムを作りながら,何をすればいいかが見えてくるとおっしゃっていました.
これを聞いたとき,長文を取りまとめるときにも成立しそうだと感じました.
実際のところ,学習指導要領解説に出てこない「かけ算の順序」を,自分の言葉で説明しようと試みて,出来上がった文が,「問題文では5が先,3が後に出現しているが,学習した「かけ算の意味」をもとに,2つの数をひっくり返して「3×5」と書かないといけない,というのが「かけ算の順序」の基本的な考え方である.」でした.
また「かける数が先の文章題」を古いものから順に並べていって,何が言えるかを検討した結果,現在の教科書では,かけられる数が先の文章題との対比として,「かける数が先の文章題」が出題されているなど,文章題の豊かな展開へとつなぐことができました.

*1:これは韓国語版を作ろうと思った強い動機でした.昨日のアクセス(2)もどうぞ.

*2:英語でも,「文頭はスペルアウトする」「10未満の数はスペルアウトする」という文法ルールよりも,「算数では数はスペルアウトしない」のルールの方が勝っていました.