わさっきhb

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増税に賛成〜放送局側の論理

テレビやラジオは音声メディアである。専門家や識者の生の声を放送する。しかし、たいていの場合は放送時間の制約などから、発言内容の一部だけを使い、残りをボツにしてしまう。それが正確性の問題に繋がる大きな要因の一つになっている。
ある番組が「消費税の増税に賛成か反対か」の特集を組んだとする。そこで著名な経済評論家が事前収録のインタビューで発言した内容を次のように放送する。
日本は財政難に直面していることもあり、消費税の増税もやむ無しと思います
番組側は、その評論家を「賛成派」という位置付けで紹介したのも同然である。
ところが、当の評論家から次のような抗議を受けることがあり得る。場合によっては謝罪や訂正を求められる可能性さえある。
「私は『経済不振と不景気が続く中で、税金しかも消費税を引き上げることには基本的に反対です。今後、日本経済の景気が回復するならば、という条件付きではありますが、日本は財政難に直面していることもあり、消費税の増税もやむ無しと思います』と発言した。前段の前置きや前提条件を無視され、後段だけが放送された。あたかも私が増税に賛成しているかのような印象を視聴者に植え付けている。放送は公平・公正さを欠き、性格ではない」
この評論家の言い分は筋が通っていると思う。「時間的な制約がある」、「わかり易く簡潔に伝えたい」というのは所詮、放送局側の論理でしかない。発言内容は正確に伝えなければならない。とくに学者や評論家、作家などの肩書を持つ人は専門分野の表現活動を生業にしている。発言した内容が正確に伝えられているかどうかは死活問題である。
私は現在の放送メディアが真摯に受けとめて改善に取り組む課題の一つだと考えている。
(『報道人の作法―メディアを目指す人たちへ』pp.30-31.強調は引用者)

私は,報道人を目指しているわけでもなく,直接インタビューを受けたわけでもなく*1,それと4月から始まる消費税の増税については一市民として「いやだなあ」という認識しか持っていないのですが,上の話(架空とはいえ)には「ああ,あり得るなあ」と感じました.
報道ではないものの,去年・今年の学会活動で,問い合わせに対して返答する必要に迫られることがありました.時間的な制約のもと,問い合わせの方に納得してもらうだけでなく,以後,同様の問い合わせがあっても大丈夫なように,対応を協議しないといけません.
当面,機会はなさそうですが,自分がもし,記者からインタビューを受け,新聞記事あるいは音声として,メディアの報道の一部になるとなったら…
発言内容を可能な限り記録しておき,報道後に,実際には次のように発言した,とリンクと合わせてWebで読めるようにしたいなと思っています.

(最終更新:2014-03-28 朝)

*1:助手だったころ,研究室紹介のため学生がインタビューを受け,掲載記事を見てその学生が「言ったのとずいぶん違う」と感想を漏らしていたのを,覚えています.